食衛法改正懇談会 まるで“健食規制”懇談会(2017.10.12)


 厚生労働省が来年の通常国会への法案提出を目指す、改正食品衛生法の方向性などを議論する有識者懇談会の第3回会合が4日開催され、先月14日の初会合に引き続き、健康食品に関する発言が目立った。

食中毒対策より活発
 安全性確保を目的にしたGMPの義務化、健康被害に関して明確な因果関係が認められない場合でも流通禁止措置を講じられる同法7条の適用要件緩和、欧州のノーベルフード(新規食品)制度のような販売前安全性評価の仕組み導入──など、規制強化の必要性を強く唱える有識者がおり、それに同調した発言をする識者もいて、さながら「健康食品規制懇談会」の様相を呈した。

 健康食品の安全性をめぐる直近の問題としては、プエラリア・ミリフィカを原材料として含む健康食品での健康被害相談の急増があり、厳しく規制する必要を唱えるための状況証拠は十分。規制強化は市場や産業の健全化につながる側面もあるものの、プエラリア問題は極めてタイミングが悪かった。

 この懇談会は、食品安全をめぐる環境変化などを踏まえた食衛法の改正の方向性等を検討するもの。そのため検討項目は食中毒対策から食品リコールまで多岐にわたるが、行政関係者からは、「ほかのテーマが霞んでしまっている」とぼやく声も。実際、この日の会合では、最近も3歳の女の子が死亡するなど相次ぐ食中毒の対策をめぐる意見よりも、健康食品のほうが多かった。傍聴した業界関係者からは、「日本製の健康食品で死亡事例は出ていないだろう」と呆れる声も聞かれる。

 会合は全5回の予定。懇談会事務局の厚労省は、年内に報告書を取りまとめたい考え。第4回会合は今月13日に開催される予定で、報告書の取りまとめに向けて会合は急ピッチで進む。

 厚労省はこの日、健康食品の規制強化を厳しく求める識者の発言に対し、コメントをほとんど返さなかった。「知恵が必要だ」と指摘した懇談会座長の発言を踏まえても、GMPの義務化など、法改正が必要な規制強化には、今のところ消極的だとみられる。

 しかし、食衛法改正は03年以来15年ぶりとなる。そのため業界関係者からも、「この機会を逃せば次はいつになるか分からない」とし、厚労省は今回の法改正で、特に製造管理に関し、従来の通知に基づく自主規制から、何らかの法的拘束力を持つ規制に切り替える可能性があるとする見方も出ている。

 厚労省は、食衛法(食品安全)の観点から見た健康食品を取り巻く課題として、「事業者の把握、監視指導」(適正な製造管理の強化に向けた実効性ある仕組み構築)、「危害事例の情報収集・処理体制の充実強化」、「消費者に対する知識の普及啓発」の3つを挙げており、少なくともこの3つは報告書に盛り込まれそうだ。また、懇談会の検討事項に設定されている、「営業届出の創設及び許可制度の見直し」も、健康食品の製造販売事業者に影響を及ぼす可能性が高い。

事業者の把握求める
 営業届出の創設は、全ての食品等事業者を対象とするHACCP制度化との関連で焦点化したものだが、この日の会合では識者から、「届出は健康食品についても非常に重要なポイントだ」とする発言が出た。「(適正な製造管理等を求めるためには)各保健所が所轄の事業者をしっかり把握することが求められる」としており、営業届出の対象に健康食品の製造販売事業者も組み込まれる可能性が極めて高い。

 ただ、「健康食品」とは具体的にどのような形状や性質を備える食品を指すのか。懇談会ではその規制強化を求める声が強いものの、「特定の成分を濃色した抽出物を配合したドリンクもある。カプセル・錠剤状の食品だけを健康食品と呼び、それだけを規制しようというのであれば、それも筋が違う」と業界関係者は指摘する。

 「健康食品」の定義について、懇談会に参画する有識者や厚労省は、会合の場で表立った言及をしていない。規制強化が必要だというのであれば、その前段として、健康食品の定義を明確にすることが求められる。これまで議論が避けられてきた、健康食品の〝法的定義〟に踏み込まずして、規制強化、あるいは市場健全化の議論が成り立つのかどうか疑問を呼びそうだ。

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