健食の安全性対策 過剰規制に警戒感 (2017.12.7)


 保健機能食品を含めた健康食品の規制強化に警戒感が強まっている。発端は厚生労働省が先月15日に公表した「食品衛生法改正懇談会取りまとめ」(報告書)。安全性が課題視されたプエラリア・ミリフィカ問題を端緒に厳しい提言が盛り込まれた。安全性対策の強化は健康食品業界や市場の一層の健全化につながる側面がある一方で、過剰規制に発展するおそれがあることから反発する声も上がる。

懸念されるリスト化の恐れ
 「健康被害を未然に防止するために、法的措置による規制の強化を含めた実行性のある対策の検討を行うべき」──報告書には健康食品についてこんな提言が盛り込まれた。ここでいう健康食品には、機能性表示食品等の保健機能食品も含まれる。関係者からは、「法的措置」の文言が含まれることに強く注目する見方も出ている。

 おさらいすると、報告書は15年ぶりとなる食衛法改正の方向性などを取りまとめたもの。厚労省はHACCPの制度化などを含む改正法案を来年の通常国会に提出する方針で、年内にも改正法案を取りまとめるとの見方もある。一方、報告書には、そうした目の前の課題にとどまらず、食品衛生規制全般の在り方を巡る見直しの方向性が盛り込まれている。

 ただ、報告書の取りまとめまでに行われた懇談会の会合は今年9月14日を皮切りにわずか5回。そのような短期間で健康食品の安全性規制を巡る方向性が決められたことに反発の声が上がる。加えて、懇談会の構成員を務めた識者の中に、健康食品業界関係者が存在しなかったことも疑問視されている。

 一方、関係者がとりわけ強い警戒感を露わにしているのは報告書に盛り込まれた「リスクの高い成分」の文言だ。「カプセル・錠剤等の形状で抽出・濃縮等された特定の成分を多量に摂取する可能性がある食品」とともに、「対策」の対象とする方向性が報告書では提言されている。

 「リスクの高い成分」とは具体的に何か。ここにきて厚労省は、そのような成分を含む食品を「要管理成分含有食品」などと呼称する案を示すとともに、要管理成分の「例」として、ホルモン、アルカロイド、神経作用物質のほか毒性物質等を挙げている。

 現時点ではあくまでも「案」の段階であり、業界団体等の意見も聞きながら最終的に取りまとめたい考えのようだが、要管理成分含有食品については、GMPに基づく製造工程管理による安全性確保を事実上義務付ける方向性も示しているとされる。

 「過度な規制にさせない必要がある。リアリティのない心配に伴う規制も行われてきたのがこれまでの健康食品。そのため適正に取り組んでいる企業が苦しむことになる。今回もそうした懸念が無くはない」と関係者は話す。そうした懸念の一つとして、「その可能性は低い」との見方もあるが、一部関係者は厚労省がリスクの高い成分を「リスト化」しようとする動きに強い警戒感を示す。

 報告書も同様だが、厚労省が現在までに示している案は具体性に欠ける。その中で規制強化の「可能性」を懸念することに意味はないという見方もある。ただ、リスクの高い成分の一つにホルモンが挙げられている。女性ホルモン用物質を含む素材としてはプエラリア・ミリフィカもあれば大豆イソフラボンもあり、安全性に関する科学的根拠にも質、量ともに幅がある。仮に、それらが十把一絡げに「ホルモン」として規制されれば、追加的規制は本来必要とされない素材にまで影響が生じることが懸念される。

 報告書では健康食品に関する記述に文量が割かれた。もともと健康食品は議論対象のひとつに過ぎなかったが、懇談会の立ち上げと時を同じくして発生したプエラリア健康食品の安全性問題を火種として懇談会が「炎上」し、議論が健康食品全体にまで広がったためだ。ある業界関係者は「リスクが高いというならその成分は食薬区分などで使用を禁じるべき。規制される必要のないものまで影響を受けるような規制はおかしい」と話す。


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