規制改革推進会議WG議事録 食薬区分 規制緩和へ前進 (2017.12.21)


 岩盤規制と見られていた食薬区分(46通知)に風穴が開きそうだ。このほど公開された規制改革推進会議ワーキンググループ(医療・介護)の会合議事録。食薬区分を所管する厚生労働省監視指導・麻薬対策課(監麻課)課長は食薬区分の運用見直しに向けて前向きな発言を繰り出す。それに驚く声が業界関係者から上がる。と同時に、それが逆に不安も呼ぶ。「広げた風呂敷をどんどんたたまれ、対象が狭められる可能性がある」と関係者。落としどころはまだ見えておらず、結論は年明け以降。規制改革実施計画の中身を確認するまで安心できない。

 「一定の条件を付せば対応可能」。議事録によると、先月20日に開催された同ワーキングの会合で監麻課長はこう答えた。

 食薬区分の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」(専ら医)リストに含まれる成分について、機能性表示食品など保健機能食品の関与成分として扱える「例外規定」を設けて欲しい──こうした業界団体の訴えに応えたものだ。「実際にどのような成分を考えているのかを聞きたい」とも述べている。

 「専ら医」に該当する成分本質は、「生鮮食料品等に含まれているものでも一律に機能性表示食品制度の対象外とされ、機能性を謳うことが認められていない」。そんな問題意識を背景に同ワーキングは今年9月、今期の主要審議事項の一つに食薬区分の運用見直しを選定。「合理的、かつ実効性のある見直しを検討する」としていた。

 先月20日の会合は初の議論の場。ただ、事前に意見交換等が行われていたとみられる。着地点こそはっきりしないが、議事録からは、科学的根拠に基づき機能性を表示できる保健機能食品に限定した食薬区分の運用の見直しは既定路線になっていることが窺われる。

 そこで次に注目されるのは、前述の監麻課長の発言にあった「一定の条件」の中身である。それについて監麻課長はこの日の会合で、具体性には欠けるが次のように述べている。

 「例えば食品由来の成分であったとしても、(中略)高度に精製、抽出してピュアなものにして結構大量に添加」するようなものは、「元は食品成分なのだからといってもそこまでいくと食品の域ではないだろう」
 「通常の食品なりの形態で、それそのものを添加して通常食品に含まれているような量が大体維持」され、かつ「医薬品的な効能・効果を標ぼうしたような場合ですとか、アンプルのように誰が見ても医薬品だろうと思うような形状のもの」を除けば、「ある程度対応可能」
 無論、食薬区分規制の緩和を要望した業界団体側にしても、全ての「専ら医」に対して例外規定を適用せよと求めているわけではない。

 この日の会合に出席した健康食品産業協議会では、「専ら医」のうち「食品の中から見出された成分」は「一定の範囲で用いる限り安全性や医薬品との誤認などの問題が生じることはない」と主張、その上で3つの例外規定要件を提示している。①食品としての安全性を説明できる②食品の中に広くその存在が認められている(喫食経験が十分に積まれている)③当該成分を含有する原材料は、合法的かつ安全性に使用可能な食品、または食品添加物──の3つだ。

 同協議会では、例外規定適用を求める成分名は明らかにしていない。今後業界の意見を聞きながら、選定していくとみられる。
 他方で、同じくこの日の会合に出席した、バイオテクノロジー関連企業や公的研究機関などが会員として参画するバイオインダストリー協会では、具体的な成分名を挙げながら規制緩和を要望。挙げた成分名は、ガンマオリザノール、S‐アデノシルメチオニン(SAMe)、デオキシノリジマイシンの主に3つ。

 一方、とりわけ機能性表示食品に関して食薬区分の規制緩和を強く求めている点で両団体が目指すところは同じだが、その対象範囲を巡る考え方には温度差がある。
 というのも、バイオインダストリー協会が念頭に置いているのは、主に生鮮食品やその加工食品に加えて「伝統的発酵食品」。例えばガンマオリザノールを玄米や米油、あるいはSAMeを比較的高含有する酒粕などだ。

 これに対して健康食品産業協議会では、「もう少し幅広い範囲」と説明。直接言及しているわけではないが、当然ながらサプリメントも対象にしたい考えだ。

 「発酵産物を精製したようなもの、精製して関与成分が100%に近いものに精製されたようなものも、その成分本質の安全性と不純物に関して安全性が説明できる限りにおいては、一定の範囲の中で使用を認めていただくことはあり得るのではないか」と述べており、前述3成分のほかグルタチオンやタウリンなどを機能性関与成分にしたサプリメントを、機能性表示食品にできる道を切り拓きたい考えとみられる。

岩盤に風穴 例外規定を新設か
 この日の会合には機能性表示食品制度を所管する消費者庁の食品表示企画課長も出席し、やはり前向きな回答を返している。「厚労省や事業者等々、関係の方々と相談をして、一定の整理がなされた枠組みに当てはめて問題ないと判断されるものは機能性表示食品として届出を受理する」と述べ、「専ら医」を巡る制度運用の方向性について見通しを示した。

 ただ、健康業界にとって食薬区分はまさに岩盤規制。「専ら非医」化が長年求められたままになっている成分も幾つかある。安全性の確保を論拠にした製薬業界などからの抵抗も大いに予想され、そう簡単に風穴を開けられるかどうか疑問は残る。

 同ワーキングは「合理的かつ実効性のある見直し」を目指す。それに最適な仕組みの一つとして、規制改革推進会議委員の森下竜一氏はこの日、監麻課長にこう問うている。「ネガティブリストのようなものをはっきりさせたほうがいいのではないか」。これに対して監麻課長は、「マンパワーが圧倒的に不足」であることを理由に強い難色を示した。

 同課は現在、「未承認医薬品関係だけに割ける人員が2人」のみだといい、その中で成分個別にデータを収集し調べることは、人的に困難であるためだ。むしろ、「事業者の方がこういうものをやりたいのだということをある程度念頭に置きながらやったほうが現実的」としている。企業や業界の要望を個別に聞きながら、機動的に例外規定を適用させる仕組みを構築できるかどうかが焦点となる。


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