届出撤回 どこまで増える 今年度はや20件 7月以降14件(2018.8.23)


 今年4月1日以降に自主撤回された機能性表示食品の届出が20日現在で少なくとも20件に達した。8月は7日までに7件が撤回。7月も7件が撤回されている。昨年度(2017年4月~18年3月)は計57件の撤回届が消費者庁に提出されたが、届出の事後監視に伴うグルコサミンを巡る撤回など、事実上の同一事案が30件余りを占める。今年度の届出撤回を巡る企業の動きは、過去に例を見ないものといえそうだ。

 撤回理由は様ざま。8月中に撤回された届出については、「終売」「販売の目途が立たない」「商品化取りやめ」「販売者変更」「未発売のため」──などとされている。

 ただ、中には、撤回理由が不可解なもののもある。
 ある届出者では、「商品の発売の予定がなくなった」ことを理由に撤回した一方で、表示見本に届出番号を追記するなど、販売開始のためと考えられる変更届を6月下旬に行っていた。

 また、先月7月には、届け出ていた3件全てを一度に撤回した企業も出ている。いずれも理由は「商品化の取り止め」。届け出ていた機能性関与成分も重複する。

 関連は不明だが、8月に撤回された7件、先月撤回された7件のうち同月24日以降撤回の4件は、消費者庁が17年度に実施した事後監視事業「機能性関与成分に関する検証事業」で検証対象となった届出と重なる。同庁食品表示企画課によると、同年度の検証対象は、16年10月1日から17年9月30日までを届出日とする634件。同検証事業は制度施行以来、毎年度実施されているが、過去最大の件数となっている。

 17年度同事業を巡り消費者庁は先月中旬ごろ、機能性関与成分の分析方法資料の内容が不十分であることを理由に、追加資料を提出するよう届出者に依頼していた。回答期限は今月8日。単なる憶測だが、届出書類記載の撤回理由の背景には、この検証事業があった可能性も考えられる。

事前監視も厳しさ増す 前はOK 今はダメ
 届出の事後監視は、事前届出制と並ぶ機能性表示食品制度の根幹を成す仕組み。一方で、この制度には本来不要なはずの事前監視の厳しさが増している。いわゆる「一発受理」が行われていたものでも差し戻されるようになった。背景には、公にされない機能性表示食品の範囲を巡る考え方の変更などがある。

 例えば、少なくとも6月以降、「睡眠」を巡るヘルスクレームが受理されづらくなっている。複数の関係者の話を総合すると、届出書類の事前確認時、「睡眠改善薬と同等の効果を与えると消費者に誤認される可能性がある」などとする不備指摘が相次いでいることが理由だ。

 「睡眠」の文言そのものに対し、そのような指摘が行われているわけではない模様だ。ただ、例えば「寝つき」、あるいは「深い眠り」といった文言をヘルスクレームに含む場合、睡眠改善薬と誤認される可能性を理由に、受理しない方針に舵が切られたとみられる。

 睡眠改善薬の代表的製品「ドリエル」(第2類医薬品)の効能効果は「寝つきが悪い・眠りが浅いなどの一時的な不眠症状の緩和」。文言だけを切り取れば、「寝つき」の改善や「深い眠り」に役立つなどとする機能性は、ドリエルのそれと似ていると言えなくはない。

 しかし、業界関係者は同庁の対応を疑問視。「表現が似ているだけで医薬品と誤認されると言われてしまっては、機能性表示食品制度は成り立たない。医薬品が存在する領域は全部ダメということになってしまわないか」と語る。

 加えて問題なのは、これまで受理してきたものを、突然受理しなくなったことだ。
 そうした事例があることは、睡眠絡み以外でも複数伝えられており、ここにきて、「もはや(企業責任に基づく)届出制と言っていることに自体に相当な無理がある」との声まで聞こえ始めた。

 少なくとも消費者庁は、従来通りに受理することが難しい状況が新たに生じたのであれば、業界団体を含めて対応策を協議したうえで、考え方を変更する旨を事前に周知徹底する必要がある。

Clip to Evernote

ページトップ