コンドロイチン「正しく知って、考えて」 都医学研が都民講座(2014.2.6)


 東京都医学総合研究所主催の「コンドロイチン硫酸」をテーマにした無料都民講座が1月30日、都内で催され、高齢者層を中心とする約350人が聴講に訪れた。主催者によれば、参加者の大半は一般消費者だという一方で、質疑応答では、コンドロイチン硫酸の吸収と体内動態について説明を求めるなどする専門的な質問も飛び出し、学会や研究会さながらの様相も呈していた。

 講座のテーマは「コンドロイチン硫酸の謎~膝痛と神経再生~」。ひざ関節痛を緩和するには「減量や運動療法の方が効果的」だと指摘する一方で、その効果に関して「効果『あり』と『なし』で論争が続いているが、メタ分析の結果は『効果あり』を支持している」と伝えるなど、中立的な内容だった。サプリメントについては「重症の場合を除き、数週間服用してみて効果があるようなら続けてみてはどうか」と述べた。

 講演では、前述のコメントもした同研究所神経回路形成プロジェクトリーダーの前田信明氏が、「コンドロイチン硫酸について正しい知識を持っている人は少ない」として、化学構造式を多用しながら、コンドロイチン硫酸の構造や生体に与える役割などの基礎を解説。コンドロイチン硫酸を含む軟骨プロテオグリカンについても触れた。

 また前田氏は、「軟骨コンドロイチン硫酸の構造は動物により異なる」として、C単位やE単位などのタイプがあると紹介。その上で、由来および構造が異なるコンドロイチン硫酸とタンパク質の相互作用の違いを示し、「構造の差によって、機能も異なることが示唆される」と話した。

 ほかに、コンドロイチン硫酸で近年注目されているのは「脳神経系における機能」だとし、神経細胞や神経回路の形成のほか神経可逆性の制御に役立っていると説明。この点を詳しく解説したのは次に登壇した武内恒成・愛知医科大学医学部生物学教授で、コンドロイチン硫酸を通常のおよそ半分程度しか合成できないようにしたノックアウトマウスを使って同成分が脳など生体に果たす役割を検証した研究成果を披露した。
 この動物試験の結果分かったのは、コンドロイチン硫酸が減ると①脳に対しては大脳の層形成が遅くなり、大脳形成が遅れるほか、脳のネットワーク形成も遅れる②骨に対しては軟骨形成層が薄くなり骨の形成が遅れる③腸に対しては炎症性腸疾患の発症に関わる──ことなどだったと説明した。

 武内教授は「このノックアウトマウスにコンドロイチン硫酸を摂取させるとどうなるか、という研究も今後できるかも知れない」とコメント。また、「コンドロイチン硫酸は、体内の様々な組織と領域に機能している」とした上で、「多く摂取すれば良いというものではなく、正しく知り、正しく理解し、考えることが重要」だと聴講者に呼び掛けた。

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