課徴金取消し 景表法の運用に影響か (2019.1.10)
消費者庁が昨年末公表した、景品表示法に基づく課徴金納付命令の取り消し。健康食品表示規制の〝総本山〟とも呼べる景表法を巡る同庁初の判断に、業界関係者からも驚く声が上がる。今後の景表法の運用に影響が出るとの見方もあり、行方が注目されている。
同庁は昨年12月26日、日産自動車に対して17年6月に行っていた課徴金納付命令を取り消したと発表。三菱自動車による燃費不正表示問題に絡み、同社からOEM供給を受けていた日産にも、景表法違反(優良誤認)で措置命令を下すとともに、317万円の課徴金納付を命じていた。
同庁が処分取り消し判断を行った背景には、行政不服審査会による答申がある。日産は、課徴金納付命令に反発して17年9月、行政不服審査法に基づき審査請求していた。その後、同庁は行政不服審査会に諮問し、審査会は昨年10月、「命令は取り消されるべき」との答申を出した。
行政不服審査会は、行政不服審査法に基づき総務省に設置された第三者機関。審査請求の裁決の客観性や公平性を高めるため、審査庁の判断の妥当性などをチェックする役割があり、委員は法曹関係者で構成されている。
審査会で争点になったのは、日産が「相当の注意」(調査確認義務)を尽くさずに優良誤認表示を行っていたと認められるかどうか。景表法の課徴金制度では、相当の注意を尽くしたと認められる場合、納付命令できない規定があるが、同庁は相当の注意を怠ったと認定し、処分していた。
だが、審査会は、日産、消費者庁双方の主張を調査審議した上で真逆の判断を行い、命令の取り消しを答申。OEM供給を受けていた日産に対し、種々の事実関係を踏まえれば、調査確認義務まで課すのは困難と判断したもので、同庁も「相応の来年度HACCP関連で6億円研究関連費は減額査定厚労省来年度予算案農水省来年度予算案合理性がある」と認め、課徴金納付命令を取り消した。
一方、この処分取り消しに負けず劣らず注目されているのが、答申は優良誤認表示性まで否定している点だ。そこは日産も特別争っていなかったところだが、審査会は、同庁が優良誤認と認定した表示について、「不当に顧客を誘引したものと認めることは困難」だと判断。答申では次のように指摘している。
「実際上、法令に義務付けられたとおりの内容を表示した場合であっても、客観的には実際の商品等よりも著しく優良であると示した結果は起こり得ることであり、その場合、法を遵守した者の行為を不当と評価することは相当でなく、特に現在の景品表示法においては(中略)課徴金の納付が課される責任が発生するとされていることからしても、妥当なものとは解されない」
同庁は、優良誤認表示性を否定した答申の判断について、「景品表示法の解釈適用も誤るのである」などとし、「採用できない」としている。