厚労省検討会 3月にまとめ 新食事摂取基準の数値公表(2019.1.10)
厚生労働省の「『日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」(座長・伊藤貞嘉・東北大学大学院教授)は昨年12月21日に会合を開き、摂取基準の数値を盛り込んだ報告書案を提示した。3月に取りまとめの予定で、厚労省では今年中に告示を定める方針。
今回の基準策定作業の基本方針は、生活習慣病の予防、同重症化の予防、高齢者の低栄養・フレイル予防のほか、幼児や妊婦・授乳婦の健康増進などを重視するというもの。急激に進行する少子高齢化とそれに伴う人口減少対策、医療・介護費の抑制を背景としたものだが、実際の数値策定では、研究情報や科学的知見が十分でないと判断されたものもあり、基準設定を断念したものも多かった。報告書案によると、栄養素別の見直し内容は次のようなものになった。
タンパク質については、高齢者のフレイル予防の観点から、65歳以上の摂取目標量を男女とも15~20%エネルギーに引き上げたほか、妊婦(後期)と授乳婦の同目標量も15~20%エネルギーに引き上げた。耐容上限量については、知見が十分でないとされて設定は見送られた。
脂質は、肥満リスクの低減の観点から、飽和脂肪酸の過剰摂取を予防するため小児も成人と同様の算定方法で目標量を設定。男女とも3~14歳で目標量10%エネルギー以下、15~17歳で8%エネルギー以下とした。また、コレステロールの目標量設定は見送りとなったが、「200mg/日未満が望ましい」と記載された。同じ肥満対策では、糖類の基準設定が見送られた。
食物繊維は3~5歳の目標量が追加され、男女とも8㌘/日以上とした。ビタミンでは、ビタミンDに関して、1歳以上の男女と妊婦、授乳婦の目安量を設定したが、目標量は科学的根拠が乏しいとされて設定は見送られた。
ミネラル類では、フレイル予防を目的としたカルシウムの量の設定は見送り、ナトリウムは腎臓病と高血圧症の重症化予防の量を新たに設定。カリウムは3~5歳の目標量を新たに設定した。鉄分は妊娠中・後期の耐容上限量と推奨量を引き下げたほか、ヨウ素は小児の耐容上限量を引き上げる一方で、授乳婦の同値を引き下げた。クロムは18歳以上の耐容上限量を新たに設定し、モリブデンは1歳から17歳までの推定平均必要量と推奨量を新たに設定した。
報告書案によると、これら各栄養素の基準値のうち、「耐容上限量」については、通常の食事だけでなく、健康食品やサプリメントによる摂取も含めた値としている。