日健栄協 HACCP手引書を説明 (2019.2.21)
日本健康・栄養食品協会(日健栄協)は7日、都内で「HACCP導入手引書説明会」を開催し、満員の200名を超える関係者が出席した。講演者は厚生労働省の道野英司・食品監視安全課長、日健栄協の永留佳明・健康食品部長、同倉住敏明・GMP担当ら。
最初に講演した永留氏は、HACCP導入手引書の作成経緯、健康食品におけるHACCPでの衛生管理のポイント、手引書の構成、昨年に開催された厚労省の「食品衛生管理に関する技術検討会」で指摘された事項への対応などを説明した。日健栄協によると、同技術検討会で提示した手引書案と厚労省が1月24日に公表した、いわゆる“完成版”とは大きな違いはないという。
続いて講演した道野食品監視安全課長は、改正食品衛生法の全体の概要ほか、HACCPの導入に関する説明を行い、現在、厚労省のホームページで公開している業界別のHACCP手引書が16業種、検討中のものが18業種あることを明らかにした。また、「指定成分」を含む食品による健康被害情報の収集に関して、道野課長は従来の見解を説明した。
最後に講演した倉住氏は、錠剤を例にしたHACCPの具体的な取り組み方法、例えば、HACCPの文書作成や一般衛生管理に必要な書類、記載すべき必要な事項など、実務上の取り組み方を説明した。
日健栄協では18日に大阪で同様の説明会を開催したほか、3月7日には東京で再度、説明会を開催する予定だ。また、4月以降に手引書の配布(ポームページからのダウンロード含む)も行う方針。
原材料企業、対応早く GMP認証 浸透まだ
日健栄協が作成した「健康食品製造におけるHACCP導入手引書」は、健康食品の原材料製造事業者も対象とする。原材料GMP認証を取得している企業は比較的対応しやすいだろうが、健康食品GMPに比べ、原材料GMPは事業者にまだ浸透していない。食品関連事業者全般を対象にしたHACCPの制度化は2020年6月までに施行される。21年まで現行基準が適用される見通しだが、GMP認証を取得していない原材料事業者は対応を急ぐ必要があるだろう。
この手引書は、健康食品製造および健康食品原材料製造事業者全般向けと、それぞれのGMP認証企業向けの大きく2つで構成。GMP認証を取得していない企業は、一気にGMP認証取得に向けて動くことも不可能ではなかろうが、まずは「全般」に取り組むことになる。
一方でこの手引書、いずれにせよ考え方のベースにあるのはGMPであるとの見方が専らだ。そのため、手引書に「十分対応できる原材料事業者と、できない事業者に分かれてしまうのでないか」(最終製品製造に詳しい業界関係者)と懸念する声も上がる。
原材料GMP認証を取得していなくても、実質的にGMP運用を行っている先もあると考えられる。大手企業であればそうだろう。一方で、そうではない先は、HACCPと同時にGMPに対応する必要が、「2~3人でやっているような小規模企業も含めて生じる可能性がある」(同)と指摘する。
今回の手引書は、以前は「基準A」と呼ばれた「HACCPに基づく衛生管理」に基づくもの。ただ、「小規模原材料事業者向けに基準B(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)の手引書を作成してもよかった」、「段階的に対応し、最終的に原材料GMP認証取得を目指す、という枠組みを日健栄協は検討してもよかったのではないか」といった意見も上がっている。
「我々としてはHACCPに対応している事業者から原材料を調達するしかない」。ある受託製造企業関係者はこう話し、取引先の原材料事業者の全てが早い段階でHACCPに対応してくれることに期待を寄せている。