食薬区分 運用改善へ 「専ら医」成分 食品産業にも(2019.3.21)
昨年6月閣議決定の規制改革実施計画に盛り込まれた食薬区分(昭和46年通知)の運用改善に対応するため厚生労働省は15日、医薬品の範囲に関する基準について新たな課長通知を発出した。食薬区分の「専ら医薬品リスト」に収載されている成分(専ら医薬成分)を元から含む生鮮食料品、その加工食品の医薬品該当性に関する考え方を示したもので、専ら医薬成分を含むことのみを理由に医薬品に該当するとは判断しないとしている。
これに合わせ、消費者庁も15日、機能性表示食品に関する質疑応答集(Q&A)の一部改正を行い、即日運用を開始した。厚労省の通知を踏まえ、医薬品に該当しないと判断される場合に限り、専ら医薬成分を機能性関与成分とする届出を「妨げない」考えを明記した。機能性関与成分の対象が広がることになる。今回のQ&A改正点は事実上、専ら医成分に関する考え方を示した「問13」の新規追加のみ。
厚労省の課長通知は、食薬区分を所管する監視指導・麻薬対策課がQ&A(一問のみ)形式で発出。専ら医薬成分を元から含む生鮮食料品、それを活用した加工食品の医薬品該当性は、食経験や製品の表示・広告、販売の際の演術などを踏まえて「総合的に判断する」とした。この考え方を健康食品全般に適用する。
加工食品には、通知に記載はないが、タブレットなどサプリメント形状も含まれる。「伝統的発酵」で専ら医薬成分が含有されるようになる食品も含むと明記した。伝統的とあるが、昔ながらのかめを使ったような発酵に限定しているわけではなく、発酵食品で一般的に使われるタンク発酵も該当すると考えられる。
加工食品には条件を設けた。製造過程で専ら医薬成分を抽出、濃縮、純化を目的とした加工をしていないこと、かつ、食品由来でない専ら医薬成分を添加していないことの2つ。ただ、監麻課は取材に、抽出や濃縮などの加工を「否定しているわけではない」(専門官)と答えており、最終的な医薬品該当性の判断は、事業者から提出される資料に基づき、ケース・バイ・ケースで、製品個別に総合的な判断が講じられていくことになる。
専ら医薬成分を元から含む生鮮食料品を使った加工食品の医薬該当性の判断の要点は、その成分を主に摂取させる目的で抽出、濃縮、純化などの加工を製造工程で行っていないかどうか。そうした加工を施していれば、食品ではなく医薬品成分を摂取させる目的のものと見なされ、医薬品に該当すると判断される可能性が高い。
機能性表示食品については今後、専ら医薬成分を機能性関与成分にした届出は、医薬品該当性が明確でない場合、届出書類確認時に消費者庁が厚労省に照会、確認する手続きが取られる。
薬事行政を担当しない同庁で医薬品該当性を判断するのは難しいといえ、当面は関連届出の大半が厚労省に照会されそうだ。同省で医薬品に該当しないと判断されれば、同庁で他の届出と同様に確認を開始する流れとなる。
厚労省では、消費者庁に届け出られた書類に基づき、届け出られた機能性関与成分や食品の医薬品該当性を確認していく。ただ、「確認のため追加資料の提出を求める可能性が高い」(監麻課専門官)。「判断に必要な資料が十分揃っていれば、(確認の)時間はさほどかからないと思っている」(同)とも話す。届出手続きをスムーズに進めるためにも、根拠資料を十分整えた上で、届出に望むことが求められそうだ。
食薬区分運用改善 「機能性」対象拡大へ 候補にγ‐オリザノールなど
厚生労働省は15日、監視指導・麻薬対策課長通知「『医薬品の範囲に関する基準』に関するQ&A」を発出、食薬区分の運用改善を図った。これによって、専ら医薬品リストに収載されている成分の一部を、機能性関与成分として活用できる道が拓けた。
今回の運用改善は昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画に対応したもの。「食薬区分に係る考え方の明確化」として、今年度中の実施が厚省と消費者庁に求められていた。これに両省庁が連携して取り組んだ格好だ。
もともとは、専ら医薬品リスト収載成分を含む生鮮食料品や、サプリメントなどの加工食品を機能性表示食品として届け出られるようにするため、業界団体の健康食品産業協議会と、医薬品や化学品、食品などを手掛ける企業が参画するバイオインダストリー協会(JBC)らが、政府の規制改革推進会議に要望していたもの。2017年秋から規制改革推進会議の医療・介護ワーキンググループで議論されていた。
JBCでは規制改革への要望にあたり、機能性表示食品の機能性関与成分として活用したい専ら医薬品リスト収載成分名を具体的に示していた。主に、γ‐オリザノール(玄米)、S‐アデノシルメチオニン(=SAMe、酒粕)、デオキシノリジマイシン(桑葉)の3成分。まずはこれら3成分から、機能性表示食品の届出が進んでいきそうだ。