「あっぱれ」と「大丈夫?」 驚きの声 (2019.4.11)
【写真=パッケージ表示見本(消費者庁届出DBより)】
「脳の記憶や感情を司る部位の一部(視床下部)への、老化に伴うアミロイドベータやタウタンパク質の蓄積を抑え、加齢により低下する認知機能の一部である記憶力(言葉や図形を覚え思い出す能力)の維持に役立ちます」
このようなヘルスクレームを行う機能性表示食品の届出が先ごろ受理され、業界関係者が驚きの声を上げた。驚かされたのは「アミロイドベータやタウタンパク質の蓄積を抑え」の作用機序とも読める部分。アミロイドベータやタウタンパク質は、アルツハイマー病の発症にも関わると考えられている異常タンパク質。「あっぱれ」と「大丈夫か」の相反する見方が一緒くたになって上がる。
アミロイドベータやタウタンパク質は、加齢などに伴い脳に蓄積されることで神経細胞を壊すことがあり、それが進行するとアルツハイマー病の発症原因の一つになるとされる。認知症患者の増加が社会問題にもなる中、とくにアミロイドベータに関する認知は、一般生活者にも浸透しつつあると考えられる。
これまでに届出事例のない初のヘルスクレーム。認知機能への働きを訴求する届出は多数あるものの、今回の届出表示は全体を踏まえるとそれらとは明らかに異質な内容で、これが通ったことに「あっぱれ」の声。と同時に、消費者が認知症予防との関連を想起することなどを懸念した「大丈夫か」の声も上がる。
一方、アミロイドベータやタウタンパク質の蓄積抑制を効能効果とする薬は今のところ存在しない。そのため、医療用医薬品の効能効果との部分一致が薬機法上問題になったヘルスクレーム「歩行能力の改善」問題と同じ轍は踏まないと想像される。
しかし、「そうだとしても事後に問題にされる可能性もあるのではないか」(薬剤師資格を持つ業界関係者)と販売開始後を懸念する見方も。この関係者は、アミロイドベータをターゲットにしたアルツハイマー病治療薬の開発が世界的に上手くいっていないと指摘する。
今回の届出の主要ヘルスクレーム(アウトカム)は「記憶力の維持に役立ちます」の部分。商品パッケージでもそこが強調される。一方、パッケージに比べてデザイン自由度の高い広告では、届出表示である以上、「アミロイドベータやタウタンパク質の蓄積を抑え」の部分も同時に強調できる。実際にそれを行った時にどう受け止められるのかが注目されそうだ。
この届出を行ったのは、高吸収性を訴求するクルクミン含有ウコン素材「セラクルミン」の販売などを手掛けるセラバリューズ。クルクミンを機能性関与成分とするサプリメント『記憶の維持にセラクルミン』の届出を行い、先月27日に届出資料が公開された。
同社は2日、同品の販売を今夏にも始める予定だと発表。自社通販サイトなど通販で展開するという。商品価格については明らかにしていない。