帝人 サプリ事業に参入 新会社でNMNを市場展開(2019.5.23)

02帝人サプリ①

【写真=NMNを1カプセル中に125mg配合したサプリメント「NADaltus(ナダルタス)」】
 
 帝人がサプリメント事業に本格参入する。ヘルスケア事業における医薬品研究・開発で培った技術力を活かし、ここ数年で老化に対して機能する成分として注目を集めているニコチン酸の一種、ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)を配合したサプリを開発、販売のために新たに設立した100%出資の子会社を通じて事業展開に乗り出す。スーパー大麦「バーリーマックス」、イヌリンに次ぐ機能性食品素材の取扱いを開始し、ヘルスケア事業を拡充する。

ヘルスケア事業領域の拡充へ
 帝人は2019年を最終年度とする中期経営計画のなかで、繊維関連のマテリアル事業と、医薬品などを含むヘルスケア事業の2本を柱に事業領域の拡大を進めてきた。ヘルスケア事業では、医薬品や医療機器などを主要商材に在宅医療分野などを含めた2018年度の事業売上高は1575億円にのぼる。

 そのヘルスケア事業領域の新規事業として、3年前から本格提案を始めたレジスタントスターチなどが豊富なスーパー大麦「バーリーマックス」と、昨年からラインナップに加えたイヌリンの機能性食品素材の市場投入が始まっている。ただ、帝人の事業戦略の方向性として、一般の食品として摂取してもらい健康面を訴求する方向性から、協業品や供給先の商品の形態は食品の範囲に限り、錠剤やカプセルなどのサプリ形状はこれまで踏み込んでこなかった経緯がある。

 昨年12月に帝人は、創立100周年記念と、今後の事業プロジェクトに関して外部にプレゼンテーションする展示・発表会を開催し、その席で同社鈴木純社長が、科学的根拠のある健康増進に役立つ機能性食品成分を意味するニュートラシューティカルの事業分野への参入を明かしていた。

 同発表会では、NMN研究で知られる今井眞一郎・米ワシントン大学教授を招き、これまでの研究成果を紹介した。帝人は現段階で自社の研究成果は持っていないが、協力関係にある今井教授を介して、エビデンスの構築を進める可能性は高いだろう。

 新たに立ち上げたサプリの販売会社「NOMON(ノモン)」は、ニュートラシューティカル製品の販売と、それらに関する事業全般を展開することを目的に今年2月に設立。帝人の医薬品研究・開発などを担うヘルスケア事業統括補佐の山名慶部長が新会社の社長を兼務する。

 取扱うのは、1日摂取目安量1粒中にNMNを125㍉㌘配合したサプリメント「NADaltus(ナダルタス)」。NMNの原材料はISO9001認証を取得した国内工場で製造し、製剤化についても国内のcGMP認証取得工場で行うなど、トレーサビリティを担保したとしている。1日摂取目安量は1~2粒。30粒入で税込15万円。販売は自社通販のみ。

ブランディングにも注力
 サプリの販売自体を帝人が行うことは初めての試みで、そのプロモーションが気になるところ。スーパー大麦の事業展開では、マーケティング・コンサルティング会社の協力を得て食品市場への参入を果たしてきた。

 今回のNMNの最終商品の販売では、国内外でブランディング事業を手掛けるキッチンアンドカンパニーに協力要請し、「これまでの医療や食品事業とは全く異なるブランド事業展開を行う」としている。

 帝人として新規事業となるニュートラシューティカル分野への参入。まずはNMN配合サプリのネット販売を進めながら、今後、高い機能性を持つサプリ向けの原材料の開発も視野に、事業を拡充していく考え。それら素材の研究・開発面は従来通り帝人のヘルスケア事業統括で進めていく。スーパー大麦やイヌリンなどの一般食品向け機能性食品素材については、ヘルスケア新事業部門がこれまで通り担当する。

NMN=ニコチンアミドモノヌクレオチド。ニコチン酸の一種で、生体内で生成されるが、加齢とともに減少するといわれる。近年、老化現象の抑制に関わるとされるサーチュイン遺伝子を活性化する物質として注目が集まっている。米国ワシントン大学医学部の今井眞一郎教授が、マウスの長期投与実験で、抗老化作用を実証している。NMNは、母乳やブロッコリー、アボガド、枝豆などの野菜に微量に含まれているという。世界でも製造するメーカーは限られているとされ、また原材料はかなりの高額ともいわれ、最終商品の価格は数十万円するものが流通している。実業家の堀江隆文さんがNMNをリーズナブルに提供するプロジェクトに取り組んでいるともいわれる。


Clip to Evernote

ページトップ