指定成分制度 重篤度問わず報告義務 厚労省案を部会が了承 (2019.7.11)
プエラリア・ミリフィカ▽ブラックコホシュ▽コレウス・フォルスコリー▽ドオウレン──食薬区分の専ら非医薬品リスト収載の4つの植物が第1弾候補に選定された、改正食品衛生法に基づく健康食品の新たな安全性規制「指定成分制度」。今月1日、所管する厚生労働省の調査部会で2回目の会合があり、指定成分含有食品の製造・品質管理にGMPを法規定、関連が疑われる健康被害について症状の重篤度に問わず届出を義務づけ──といった方向性が示された。制度骨格は固まりつつある。施行は来年6月の見通し。
厚労省の薬事・食品衛生審議会新開発食品調査部会(食品衛生分科会)。4つの指定成分候補の妥当性を了承した前回5月20日の会合に続き今回は、「指定成分等含有の食品の製造・品質管理」、「関連が疑われる健康被害の報告制度」の2議題を議論。同部会委員は厚労省(食品基準審査課)が示した案をおおよそ了承した。
指定成分制度では、指定成分を含む食品を取り扱う事業者に対し、省令で定める方法で、健康被害情報の自治体や保健所への届出を義務付けることになる。また、同食品を摂取し健康被害を訴えた消費者を診断するなどした医師など医療従事者に対し、関係資料の提出など必要な協力を行う努力義務を求める。
今月1日の会合、厚労省が「報告制度」について示した案は、まず、指定成分含有食品を製造・販売する事業者に対する「表示責任者」の設置規定。消費者や医療従事者等からの健康被害情報を集約できる情報収集体制を取らせる。また表示責任者には、一定の条件を満たす「安全管理責任者」の設置を求める。これは健康被害情報に対する責任者の役割を果たす立場の者で、販売部門からの独立を求めるとした。
また、大きな焦点となっていた、届け出る健康被害の範囲(対象)についても案を示した。示したのは「症状の重篤度にかかわらず、健康被害と疑われるもの」「健康被害を生じさせる恐れがある旨の情報」──の2つ。「健康被害と疑われるもの」とは、「体調変化の申し出」も含むとしている。
一方、届出対象からの除外規定も示し、①喫食前から見られた症状(喫食後に症状増悪が見られた症状は除く)②医師または歯科医師により因果関係を否定する診断がなされた症例──の2つを挙げた。健康被害情報として届け出るべきかどうか悩ましいのは、商品と健康被害情報の「因果関係」それについて厚労省では次の見解を示している。
「因果関係が必ずしも明確でなく、また重篤な症状を呈するに至らなかった場合であっても、幅広く事例を収集し続けることにより、成分や症状の関連性について一定の知見が得られ、新たな健康被害発生の未然防止等に繋がることが期待される」。除外規定を除き、指定成分含有食品を巡るあらゆる健康被害情報の届出を対象事業者に求める考えだとみられる。
また、国に寄せられた健康被害情報の取り扱いについては、その健康被害が指定根拠となった従来知見(=プエラリアであれば月経不順等)の範囲内であれば、必要に応じて行政指導。公衆衛生の確保の観点から必要な場合は、個別製品名を公表する。新たな健康被害が確認された場合も、専門家が緊急対応の必要性を判断すれば、「注意喚起や公表等の措置を先行して執ることもある」としている。
通常の食品 対応困難か
一方、製造・品質管理については、指定成分含有食品は「GMPによる原料の管理および製造工程の管理を行う必要」があるとし、以前から明らかにしていた通り、GMP(適正製造規範)をベースにした製造・品質管理基準を法律(告示)で義務づける考えを示した。
前提には「適切な規格の設定」がある。これにより原材料から最終製品まで全製造工程を通じた一定の品質確保を実現させ、健康被害を未然に防ぐ狙いだ。
指定成分制度創設の直接のきっかけとなったのは、17年に発生したプエラリア・ミリフィカを巡る問題。この問題について厚労省は、「含有する女性ホルモン様作用が非常に強い成分の製造工程における管理が行われていなかった実態」があると指摘。その前段として、いわゆる平成17年通知を通じてGMPの自主的な取組みを推奨してきた経緯もあり、GMPの義務付けは自然な流れだったといえる。
そのなかで厚労省が指定成分含有食品の製造・品質管理を検討するに当たって重視したのは、指定成分(植物等)に含まれる生理活性の強い成分の「含有量のばらつきによる健康への影響」だったとみられる。消費者が1日あたり摂取目安量を遵守したとしても「生理活性の強い成分を過剰に摂取し、健康被害が生じる恐れがある」(厚労省)ためだ。
それを未然防止するためには、そうした成分が原材料から最終製品まで「局在することなく製造されることが特に重要」だと指摘。そのために指定成分を含む原材料の製造・輸入事業者に対し、「粉砕・混合・抽出・均一化」といった品質保証を行わせる考えを示した。
また、その受け入れ側(最終製造製造所)に対しても、自社で同一性の確認を受入れること、適切な頻度を決めて「管理成分」(=コレウス・フォルスコリーであれば含有する生理活性成分のフォルスコリンが相当)の測定を行わせるとした。
一方で、GMPを製造・品質管理基準とされると、窮地に追い込まれるのは一般食品に近い形態を持つ指定成分含有食品だ。指定成分制度は通常の食品形態も対象とされる。打錠、カプセルなどのサプリメント形状食品であれば対応可能と考えられるが、厚労省が気にする「強い生理活性成分の局在」を解消できない可能性が高い。
「最終製品で規格に適合しないものができる可能性がある場合には、結果として製造基準を遵守できない」と厚労省は指摘。製造基準を遵守できなければ、製造や販売が法に基づき事実上禁じられることになる。