専ら非医 一部見直しか 20植物の区分変更 (2019.7.11)


 専ら非医薬品リスト(食薬区分)の一部見直しが行われる可能性が立ち上がっている。2018年度厚生労働科学研究で見直し研究が行われ、延べ20の植物を、専ら非医薬から専ら医薬に区分更することが提案された。所管する厚生労働省監視指導・麻薬対策課も、リストの一部見直しを内々で検討していることを隠していない。ただし、「具体的なところは何も決まっていない」という。

 厚労科学研究の報告書は先月27日までに「厚生労働科学研究成果データベース」などで公開された。研究の題目は「食薬区分リストの整備に関する研究(非医リストの見直しに関する研究)」。国立医薬食品衛生研究所の袴塚高志生薬部長が研究代表者を務めたもので、「『専ら医薬品』たる成分本質の判断のための調査・分析及びその判断基準・範囲の整備に関する研究」の枠組みで報告されている。

 この研究は、改正食品衛生法に基づく指定成分制度の構築検討と密接に関係している。指定成分候補の選定作業は専ら非医薬リストも対象とされた。その際、医薬品医療機器等法(薬機法)による規制が妥当と判断される成分の選別も行われた。同報告書で「専ら医薬品リストへの移行が望ましいと思われる品目」と指定された20植物は、それに該当すると考えられる。

 専ら非医薬リストの一部見直しが必要なのはなぜか。最大の理由として、リストの検証が長年たな晒しにされてきたことがあるようだ。同報告書では、専ら医薬リストと比べて見直しが不十分だと指摘。そのため「品目の重複や基原植物の混乱などが指摘されている」としており、厚労省監麻課としてもリストをアップデートする必要性を強く認識している様子だ。

 だが、専ら医薬リスト移行候補とされた20植物の中には、健康食品などの原料として使われているものも複数見受けられる。実際に移行されれば市場の混乱は必至。食衛法に基づく指定成分とは異なり、食品としての販売が事実上禁じられることになる。

 同報告書では、専ら医薬リスト移行を提案する理由も提示しており、含有するアルカロイド類に言及されているものが目立つ。一部については「専ら医リストへの速やかな移行が望ましい」とまで提案。厚労省は毒性の強いアルカロイドなどを含むものは専ら医薬とする考え方を示しており、実際に移行されてもおかしくはない。

 ただ、どれも一度は専ら非医薬と判定された。にもかかわらず区分変更する必要性について厚労省は、「新たな安全性等の知見により将来変更となる可能性がある」とする。専ら医薬リストも含めて食薬区分は変更の可能性に絶えず晒されているということだ。

 実際、専ら非医薬から専ら医薬に区分変更された植物が過去にある。アーユルヴェーダハーブとして知られるアシュワガンダだ。もともと「根」は専ら非医薬とされ、健康食品向けの機能性素材としても利用されていたが、毒性の強い成分が含まれているとされ、根も含めた全草が専ら医薬とされることになった。

 食薬区分の判定は、監麻課長が必要に応じて召集する専門家会合に委ねられる。近く、会合が開催され、区分変更を巡る議論が行われる見通しだ。仮に、変更が必要と判断されれば、厚労省はパブリックコメントを通じてその是非を尋ねることになる。

食薬区分WG「開催増やす」
 一方、食薬区分の運用改善を図る動きも出ている。食薬区分を判定するワーキンググループ(WG、専門家会合)の開催回数を増やす方向だ。都内で今月3日開催された社福協(医療経済研究・社会保険福祉協会)主催「健康食品フォーラム」に登壇した同課専門官が明かした。「(照会から判断までの)スピードアップを図りたい」としている。

 WGの開催回数は年間1回、多くても2回。直近3年は1回しか開かれておらず、「判断が出るまでに年単位の時間が掛かってしまっているのは事実」「案件が溜まってしまっている部分もあった」と同専門官。開催回数を増やすことでそこを解消したい考えだ。

 今年度は1度も開催していないが、今後少なくとも2回開催する予定。「それ以上の回数を行うつもりで対応している」とも言い、専ら非医薬リストの一部見直し検討の他にも議論すべき案件が控えている様子だ。

 一方で同専門官は、食薬区分の照会から判断までに時間が掛かる背景には、事業者側の対応にも課題があると指摘した。追加資料を求めた際に「(提出までに)年単位の時間がかかることも結構ある」と言い、運用改善のためには監麻課と事業者の双方でスピードアップを図る必要があると訴えた。


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