国セン品質調査 成分含量、表示の2倍 (2019.8.22)
国民生活センターが今月1日に結果公表した「錠剤・カプセル状の健康食品の品質等に関する実態調査」。崩壊試験の結果を強く問題視する向きがある一方で、むしろ、成分含量の調査結果をより重大視する見方が出ている。安全性に関するリスクに直結する可能性があるためだ。調査の結果、表示値の倍量を超える機能性成分を含む製品があった。成分含量を巡っては昨今、下限値担保の徹底が強く意識されている。しかし、上限値への気配りはどうか。
多く摂取、リスクないか
国センが今回実施した商品テストは大規模なものだった。錠剤・カプセル状の健康食品を100製品も市場から買い上げ、崩壊性や機能性成分含量など品質に関わる調査を実施。100製品の内訳は、いわゆる健康食品68製品、栄養機能食品21製品、機能性表示食品11製品で、そのうち50製品が機能性成分含量調査の対象にされた。
調査結果について国センは、50製品中2製品について「含有量と表示量が大きくかい離している」とし、「消費者に誤解を与える可能性がある」と問題視。一つは、HMBを配合したいわゆる健康食品で、実際の含量は表示量の約7割にとどまった。もう一つは、GABAを機能性関与成分にした機能性表示食品。表示量に対して2倍以上多く含まれていたという。
また、表示量の約270%の機能性成分が含まれる製品もあったという。ルテインを配合したいわゆる健康食品だ。
ただ、国センはこの製品を特に問題にしていない。「パッケージにフリー体ルテインの含量が記載されていて、その量と比較しているが、この製品にはエステル体ルテインも含まれていた可能性がある」(国セン商品テスト部)といい、試験にはエステル体も合わせて分析される方法を採用していたとする。つまり、今回の分析結果だけをもって表示量と実際の含量が大きくかい離しているとは必ずしも言えないということだ。
国センは、成分含量調査の結果について、、少なくとも調査報告書の上では、「表示」の観点から問題視。表示量を大きく下回る場合について「消費者に誤認を与えるおそれがある」と指摘する。他方で、業界の一部から懸念の声が上がるのは、表示量よりも実際の含量が大幅に多い製品があったことの方だ。「もしも生理活性が極めて強い成分が表示の2倍以上も多く含まれていたらどうなるか」(健康食品の品質管理に詳しい業界関係者)などとして、安全性の観点から無視できないと指摘する意見が聞かれる。
「GABAやルテインならまだいいが、表示量よりもかなり多い量を長期間摂取した時、あるいは医薬品と一緒に摂取した時に大丈夫なのかという不安は残る。安全性を考えるならば、ちゃんとクリアしておくべき課題だ」と話すのは薬剤師資格を持つ業界関係者。成分含量について、安全性を担保できる上限値を検討するべきだと指摘する。
増し仕込み、許容範囲は
成分含量の上限値は、栄養機能食品では下限値と合わせて定められている。n‐3系脂肪酸であれば下限値0.6㌘、上限値2㌘。また、栄養機能食品のうち一部のビタミンについては表示量に対する許容誤差も規定されている。プラス80%、マイナス20%が許容誤差だ。
一方、機能性表示食品の機能性関与成分の含量上限値は、安全性担保のために必要な場合は設ける必要があるものの、強く求められているのは下限値の設定と担保。実際の含量が上限値を超えても表示違反にはならないが、下限値を僅かでも下回れば違反となる恐れがある。他方、いわゆる健康食品についてはそもそもそうした規定がなく、景品表示法などとの兼ね合いから、勢い、意識は下限値担保に向かうことになる。
そのなかで、成分含量の下限値を担保するために多く行われているのが機能性成分を含む原材料の「増し仕込み」だ。表示量よりも多めに配合することで、機能性成分の安定性を高めたり、経時変化などで成分含量が自然に目減りしてしまう場合に備えたりする。
ただ、どれだけ多めに配合するかは、同じ成分でも製品個別で異なることが多く、製品形態や組み合わせ素材などによっては、表示量よりも数倍多く配合する場合もあるといわれる。
機能性表示食品は消費者庁が買上調査を毎年度実施しており、機能性関与成分含量が届出に記載の通りかが厳しくチェックされている。これまでのところ表示違反となる事例は確認されておらず、下限値担保の遵守が徹底されているといえる状況だ。実際、今回の国セン調査でも、複数回にわたる分析試験結果を検証した結果として、機能性表示食品に関しては表示量を下回る製品はなかったという。
しかし、買上調査では、表示量に対してどれだけ多く含有されているかはノーマーク。今回の国セン調査は錠剤・カプセル状の食品が対象とされたが、「一般加工食品の方がより多く増し仕込みしている場合もあるのではないか」と見る向きもある。
錠剤・カプセル状の健康食品の品質等に関する実態調査=国民生活センターが2018年7月~19年6月に掛けて実施した商品テスト。錠剤・カプセル状の健康食品の利用実態等に関する消費者アンケート調査も行った。テスト対象となったのは、消費者アンケの結果から多くの人に摂取されていると考えられた機能性成分10カテゴリー(マルチビタミン、GABA、黒酢・香酢、コエンザイムQ10、酵素HMB、ルテイン、乳酸菌類、グルコサミン、DHA・EPA)の各10製品、計100製品。崩壊試験では、100製品のうち約4割が医薬品(日本薬局方)に定められた規定時間内に崩壊しなかったという。これを受けて日本健康・栄養食品協会は、協会が認定した健康食品GMP工場に対し、崩壊試験の義務化を通知した。