キューサイ 企業イメージを改革 「青汁だけの会社」成長阻む(2019.10.24)
【写真=左上:「青汁だけの会社」ではない。それを伝えるために企業ロゴを刷新。下:さらに商品名から「青汁」を消す決断も。「ザ・ケール」に改める】
【写真=右:神戸 聡社長】
創業55年目を今年10月に迎えた通販会社のキューサイが企業イメージの抜本改革を図る。企業成長の原動力であった青汁のイメージがあまりに強すぎ、ヘルスケアとスキンケアを主体とする現在の事業実態との乖離が無視できなくなった。このため、ロゴなどのコーポレートアイデンティティ(CI)をグループ会社も含めて刷新するほか、商品名称から「青汁」を取り払う思い切った手立てを講じる。さらに、医薬品通販に新規参入するなどして事業領域も広げ、青汁色を大きく薄める。
「現在の売上高構成比をみると、青汁を含むヘルスケア事業が51%、スキンケア事業が46%、その他(関係会社売上げ)が3%。青汁の売上げは、全体の10%にも満たない」
2017年にキューサイの代表取締役社長に就任した神戸聡氏は、10月16日に都内で開いた「新たな取り組み発表会」でこう述べ、「イメージと、キューサイのビジネスの実態にはこのように大きな乖離がある」と強調。それを背景に「ここ数年の売上げは少し踊り場になっている」とも述べ、イメージと実態のギャップが現在抱えている最大の事業課題だと指摘した上で、課題解決のために「青汁だけの会社というイメージからの脱却を図る」と宣言した。
キューサイの売上高は連結で275億4000万円(18年12月期)。同社は1965年に創業した後、69年にニチレイの協力工場として冷凍食品の製造販売を開始。その後82年に冷凍青汁の製造販売をスタートさせ、90年に「まず~い、もう一杯!」のテレビCMで青汁を全国区の商材に成長させた。発売開始以来の販売数は、のべ1000万袋以上(15年1月末時点)に達しているという。
同社が健康食品市場全体の中でも大きな市場規模を持つ青汁の普及に果たした役割は大きい。ただ、それは「青汁の会社」という消費者イメージを抱えることにも繋がった。同社の調べによると、実に7割超の生活者が、キューサイの商品として「青汁」を思い浮かべる。
そこからの脱却を図るために、主力商品シリーズ『ケール青汁』の名称から、キューサイのアイデンティティとも言える〝青汁〟を削除することを決断。名称を『ザ・ケール(The KALE)』に改め、来年1月から順次切り替えを進めることにした。
「青汁事業からケール事業へ大きく舵を切る」──この日の発表会で神戸社長はこうも宣言した。
「名前をケールに変えただけのようにも思える」と業界関係者からは鼻白む声も聞かれ、単なる青汁事業のテコ入れ策と思われなくもない。ただ、神戸社長はこの日の発表会で「青汁を飲むだけでなくケールを摂るという価値観を提案したい。より幅広い事業への展開を狙う」と事業転換の意図を説明。
また、「素材としてのケールはスーパーフード。美容・健康効果への注目が高まりつつあり、スムージーなど〝グリーンチャージ〟市場は年々拡大している。生鮮ケールについても販売店舗数が増えている」と強調して、今後は青汁ではなくケールの市場普及を通じて企業成長を図る方針を示した。
医薬品通販参入へ
キューサイでは今後、「青汁だけの会社」というイメージと、売上げの踊り場から脱却するために、既存事業の進化▽新事業の創造▽顧客接点の拡大──の3つを推進していく方針だ。
既存事業の進化は、『ザ・ケール』への主力商品名の刷新など、青汁事業からケール事業の転換が一つ。その一環として同社は10月16日、ケール由来成分を配合したスキンケアブランド『スキンケールド(Skinkalede)』を新たに投入した。売上高の4割強を占めるスキンケア事業の主力製品『コラリッチ』に続く第2弾ブランドとなる。
また、ヘルスケア事業で主力の機能性表示食品『ひざサポートコラーゲン』のパッケージを来春にも刷新し、消費者にヘルスクレームを分かりやすく伝える。加えて、同品の機能性関与成分でもあるコラーゲンペプチドを中心にしたサプリメントの新展開も計画。「膝以外へも着目した新たな製品を展開していきたい」(神戸社長)。
一方、新事業の創造については、医療分野に事業領域を広げる。通信販売事業のノウハウを生かし、医薬品通販に乗り出す。そのために「キューサイ医薬堂」を新たに立ち上げる。
また、グループ会社で残留農薬分析などを手掛けるキューサイ分析研究所を通じ、食品遺伝子検査事業に参入する。23年に予定されている改正遺伝子組換え表示制度の検査に対応するのが狙い。来年1月を目途に事業をスタートさせる予定だ。
顧客接点の拡大については、ドラッグストアなどリアル店舗への販路拡大を図る。スキンケア製品については2年前から、ヘルスケア製品は昨年から店舗展開が始まっていて、取扱い店舗数が拡大しつつある。これを21年までに、スキンケアについて280店舗(19年10月時点92店舗)、ヘルスケアについては5000店舗(同114店舗)にまで拡大させる。
こうした新たな取り組みを推進していくことで、現在の主要顧客である60歳以上のシニア・シルバー世代以外の層にも顧客を広げていきたい考えだ。