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　日本健康・栄養食品協会の下田智久理事長は10月24日、機能性表示食品の公正競争規約を、日健栄協で「独自に」策定したい考えを会員企業に伝えた。

　機能性表示食品の公正競争規約をめぐっては、健康食品産業協議会と日本通信販売協会が、他団体とも連携しながら作成していくことを、10月10日までに発表していた。

　日健栄協が機能性表示食品の規約作成にいつ着手する予定なのかは不明。だが、対象表示を同一とする公正競争規約を同じ業界内で別個に作成しようとするのは前代未聞といえ、規約を認定する消費者庁や公正取引委員会は、一つにまとめるよう指導すると考えられる。下田理事長が今回示した方針に対し、関係者からは「規約の作成を邪魔するのが目的だとしか考えられない」と怒りの声が上がっている。

　協議会と通販協が業界横断的に連携した機能性表示食品の公正競争規約の作成検討は、日本抗加齢協会や日本チェーンドラッグストア協会も加わることになっていて、ようやく業界が一枚岩にまとまる流れが出来たと好意的な受け止めが広がりつつある。そうした流れを断ち切ろうとするかにも見える下田理事長に反発し、日健栄協からの脱会を検討する動きまで立ち上がっている。

　日健栄協は、健康食品産業協議会を構成する正会員団体の一つ。さらに日健栄協ナンバー2の事務局長は、協議会の幹部（副会長）も務めている。本来であれば、協議会の一員として規約の取りまとめに向けて連携するのが筋だといえる。

　日健栄協は10月24日に会員企業へ「健康食品産業協議会における機能性表示食品の公正競争規約分科会メンバー募集に関する当協会のコメント」と題したメールを下田理事長の署名付きで配信。協議会が10月21日から会員団体や会員企業を対象に、規約の検討メンバー募集を始めたことを受けたものだ。この中で下田理事長は次のようにコメントしている。

　「当協会と致しましては、現在取り組み中である特定保健用食品の公正競争規約の策定及び公正取引協議会の運営のノウハウを生かし、機能性表示食品の公正競争規約策定へ向けて独自に取り組んでまいりたいと考えています」

　一方、この前段では機能性表示食品の公正競争規約について「現段階では時期尚早と考えております」とコメント。時期尚早だと言いながら、策定へ向けて取り組みたいとする下田理事長の言動を、最終製品販売大手の関係者は疑問視。「意味がよく分からない。機能性表示食品の広告についても措置命令がとっくに行われている。時期尚早であるはずがない」と指摘する。

　「時期尚早」と考える理由について下田理事長はコメントで、「機能性表示食品に関する活用実績を踏まえた運用基準の策定などの必要」があること、さらに「エビデンスから機能性表示への担保についても検討が必須」であることの2点を挙げている。現段階では規約を作成するための検討材料が足りないということのようだ。

　日健栄協は今年7月、特定保健用食品（トクホ）の公正競争規約の策定に向けた取り組みを開始すると発表。来年度早々からの運用開始を目指して準備を進めている。今回のコメントを踏まえると下田理事長はもともと、トクホの公正競争規約を協会独自に取りまとめた後、機能性表示食品の規約についても協会独自に取り組む青写真を描いていた様子だ。

　日健栄協は取材に「確実にできるところ（トクホの公正競争規約）から膨らませていく。その方が業界全体を見たときに、安定な成長が望める」（青山事務局長）とコメント。今すぐに協議会らと連携するよりも、まずはトクホの規約の運用を開始し、それを発展的に機能性表示食品の規約につなげていく方が、業界全体にとっても有益だとの考えだ。

　ただ、今回の「独自路線」の表明は、協議会や通販協の連携に対する対抗措置との受け止め方もされている。「業界のことではなく協会のことしか考えていない」（日健栄協会員）との批判は避けられそうもない。

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　公正競争規約は、不当表示を未然に防止し、消費者利益を保護するために景品表示法に設けられている制度。事業者にとっては、規約に準拠している限り、景表法など関連法規上問題とならないメリットがあり、安心して販売活動を行うことができる。

　協議会と通販協は、機能性表示食品の公正競争規約を取りまとめた後、表示問題がより多く発生するサプリメント（いわゆる健康食品）の規約策定も検討している。

　公正競争規約は消費者と健康食品業界を守ることになる。規約づくりを円滑に進め、規約の遵守を業界に幅広く求めていくには、業界団体が一枚岩になる必要がある。だが、このまま団体同士の対立に陥れば、全てが水泡に帰す懸念がある。下田理事長をはじめ業界団体には、消費者と健康食品業界の利益を前提にした適切な落としどころを探ってもらいたい。