東大院と社福協が共同研究 健食の輸出産業化を提案(2013.8.8)


 東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学(津谷喜一郎特任教授)と医療経済研究・社会保険福祉協会が共同研究した「健康食品の制度化への障壁に関する研究」の最終報告書がこのほど発表された。健康食品の有効性や安全性確保のための制度化の必要性を指摘しつつも、実際に制度化するには産官学の様々な障壁が存在するため、まずは輸出産業化という視点を持ち込み、世界レベルの競争の中で健康食品の安全性、有効性の向上を図ることを提案した。

 同研究は2011年4月に開始、2年間の研究を経て今年3月に報告書としてまとめたもの。国内の健康食品は、特定保健用食品などが制度化されているが、いわゆる健康食品については通常の食品として扱われるなど、包括的な制度が欠如している点を挙げた。

 また、これによる弊害も取り上げ、有効性の面では、効き目がないものを法外な値で売り付ける商法がはびこりやすいこと、宣伝力の強い健康食品が良く売れるという状況にあり、本当に必要なものが製品化され、利用され、価格が下がるという理想的なサイクルが形成されているとは言い難いと指摘している。安全性の面でも健康被害情報の報告ルートが不統一であることや安全性の検証が十分でないとし、これらの解決には健康食品に定義を与えて管理することが望ましいとした。

 一方で、制度化の障壁に関する有識者ヒアリングでは、障壁を作ってきた主体について産官学など幅広い言及がなされたものの、特定の事柄が集中して挙げられることはなかったとしている。

 今後の方向性としては、制度の根本的な改正か新設が自然だが、制度化に着手すると時間を含め多大なコストがかかる恐れがあるとも指摘。そのため別のアプローチとして、従来の慣例にとらわれない考えの輸出産業化を提案。メーカーが外圧を自発的に想定し、世界レベルの競争に勝てる有効性、安全性を備えた製品づくりへと意識を変えることを勧めた。

 折しも、政府は成長戦略のなかで、健康・医療分野の成長産業化、国際化を推進する方針を示した。機能性表示制度に関心が集まるが、TPP交渉への参加もあり、健康食品業界も国際競争を意識する必要に迫られつつあるのかもしれない。

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