食薬区分 非医、大幅見直しへ 16品目、専ら医へ移行濃厚(2019.12.12)


 食薬区分の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質」(非医)リストが大幅に見直される。厚生労働省の監視指導・麻薬対策課は、識者の意見を踏まえ、非医リストに現在収載されている16に上る植物由来物を、「専ら医薬品として使用される成分本質」(専ら医)に区分変更する考え。現在流通中のものも複数含まれており、業界に影響に与えそうだ。

パブコメ開始の3日後事務連絡
 厚労省は先月18日、食薬区分の一部改正に関する意見募集(パブコメ)を開始した。改正内容には、カイコウズの全草など非医リストに現在掲載されている11の植物由来物を専ら医に移行する考えが示されていた(第1005号既報)。

 これに続いて監麻課は先月21日付で、「46通知」に関連する日本健康・栄養食品協会や日本薬剤師会など3団体に事務連絡を発出。これも非医リストの見直しに関連したもので、ビンカマイナーの原料となるヒメツルニチニチソウの全草など5つの植物由来物について、「新たな安全性等に関する知見が得られた」ことを理由に、専ら医への移行を検討していることを伝えるとともに、反対意見などがあれば毒性や安全性に関する科学的根拠資料を添えて年明け1月10日までに監麻課へ提出するよう周知を求めた。

 この事務連絡で専ら医に区分変更する考えが示されたのは、イボツヅラフジの全草▽シンキンソウ(ヒカゲノカズラ)の全草▽センソウトウ(トウゲシバ)の全草▽ノゲイトウ(セイショウ)の種子▽ヒメツルニチニチソウの全草の計5植物由来物。このうちトウゲシバは、認知機能対応素材として業界の注目度を高めていた素材で、少なくとも20アイテムほどの最終製品が市場に流通しているとみられる。機能性表示食品としての活用を視野に入れた臨床試験が最近実施されてもいた。
 今月17日が締切日となるパブコメが現在行われている11の植物由来物については、今年9月と11月に開催された「医薬品の成分本質に関するワーキンググループ」(WG)で専ら医への移行が妥当と判断された。移行理由の概要は厚労省がホームページで公開しているWG議事概要で確認できる。

 一方、事務連絡を通じて区分変更を検討する旨が伝えられた5植物由来物は、事業者等からの反対意見などを取りまとめた後WGで審議され、その後、パブコメを行う流れとなる。「供給量は限られる。特別な対応を行う考えはない」(ヒメツルニチニチソウを取り扱う原材料事業者)と語る先もあるが、反対意見のある事業者は、安全性に関する科学的根拠資料を可能な限り多く収集し、監麻課に提出した方がよさそうだ。

必要に応じ変更「46通知」に規定
 非医から専ら医への区分変更は、過去にもアシュワガンダの根などで事例がある。非医リストに収載された後も、「新たな安全性に関する知見等により、必要に応じて変更することがある」とする記載が「46通知」にはあり、専ら医リストも同様だが、食薬区分は区分変更の可能性と常時向かい合っている。

 一方、今回のように一斉的な区分変更は異例とみられる。その背景には、改正食品衛生法で導入された「指定成分制度」があり、指定成分の第1弾候補を選定するに当たって招集された識者は非医リストの見直しを行い、食品ではなく医薬品としての規制が妥当と判断されるものも併せて選定していた。

 今回、厚労省が区分変更の考えを示した計16の植物由来物はいずれもそれに該当するとみられる。ただ、これで終わりではない可能性が高い。識者らはその際、およそ20の非医をピックアップしていた模様で、まだ名前を挙げられていない植物由来物がいくつかある。

 今回の食薬区分変更を巡る動きを受けて、業界関係者は、「専ら医薬にすると突然言われても困ってしまう。リスクが大きすぎて仕事にならない」(受託企業営業担当)と嘆く。また、「もし非医にとどまることができたとしても、(区分変更候補にされるのは)安全性に疑問符がつけられたようなもの。イメージが悪くなった」(原材料事業者)と指摘する声もある。

 厚労省は今年5月、非医リスト収載の計16の植物由来物について、専ら医への移行を検討する考えを内々に業界団体に伝え、流通実態などの情報提供を要請していた。



Clip to Evernote

ページトップ