指定成分、パブコメ始まる 来年6月制度施行へ (2019.12.12)


 健康食品による健康被害の未然防止を目的にした新たな食品安全規制、指定成分制度を巡るパブリックコメント(意見募集)が始まった。6月に公布された改正食品衛生法の規定に基づくもので、所管は厚生労働省。同省は意見募集を年明け早々に締め切り、早ければ来年2月に告示や省令を公布する予定。そして6月1日に制度を施行する。

 指定成分制度の法的根拠は改正食衛法の主に第8条。厚生労働大臣が指定する成分(=指定成分=食品衛生上の危害を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物)を含有する健康食品など食品を取り扱う営業者に対して、その食品で健康被害が生じたり、被害を生じさせる恐れがあったりする情報を得た場合、その情報を都道府県知事などに届け出る義務を課す。医療機関にもそうした情報の提供を努力義務として求める。

 指定成分や指定成分含有食品の販売制限を目的にした法律ではない。ただ、健康被害情報の届出義務の他にも、製造・品質管理を徹底させるため、国が定める製造・加工基準を規定して順守徹底が求められる。製造・品質管理レベルの向上が期待できる面もあるが、指定成分とされた健康食品原材料は、切り替えや採用見合わせなどの影響を受ける可能性もあり、業界に大きな影響を及ぼす制度となることが見込まれている。

プエラリア等、4植物指定へ
 指定成分制度を巡り厚労省は12月3日、そして同5日に、第1弾指定成分▽健康被害情報の届出項目に関する規定▽指定成分含有食品の製造・加工基準に関する規定──のそれぞれ「案」について意見募集を開始した。意見提出の締切日は3日分が年明け1月2日、5日分が同5日とされており、反対意見のある事業者は年内の営業最終日までに意見提出する必要がある。

 厚労省は意見募集の開始に伴い、第一弾指定成分候補として、これまでにも示してきた通り、プエラリア・ミリフィカ▽ブラックコホシュ▽ドオウレン▽コレウス・フォルスコリ―──の4植物を提示した。厚労省の食品基準審査課が組織した有識者検討会による選定作業や、審議会(新開発食品調査部会)による審議などを経て選ばれたもので、生理活性の強い成分を含有していたり、海外で健康被害事例が報告されていたりすることなどを理由に選定された。

 プエラリアは、強力なエストロゲン作用を持つミロエストロール類を含有する。因果関係は不明な場合が多いものの、月経不順などの健康被害情報が比較的若い女性を中心に多数寄せられ、指定成分制度が創設されるきっかけとされた。厚労省によれば、指定成分の位置付けは、「食衛法に基づく販売禁止措置などを発動できるほどの(安全性リスクに関する)根拠データがないもの」(食品基準審査課)だという。

製造品質管理GMP義務化
 指定成分制度は施行から当面、同4素材を対象に運用が進む見通し。ただ、必要に応じて追加検討する考えを厚労省は以前から示しており、将来的に数が増える可能性がある。指定するには識者による公の審議が必要となるが、業界関係者からは、「手軽に指定できる仕組みとされれば、指定成分は際限なく広がる」として、今後の動きを警戒する声が上がる。

 一方、指定成分含有食品の製造・加工基準に関する規定では、新開発食品調査部会の審議を踏まえ、事実上GMPに基づく製造・品質管理を義務付ける考えを示した。
 指定成分には生理活性の強い成分が含まれる。原材料も含めて製造・品質管理が適切でなければ、その含有量が同一製造ロット内で大きくばらつき、想定より多く含有する製品が流通することも考えられる。GMPを製造・品質管理基準として規定することで、それを防ぐ狙いだ。

 また、GMPに基づく適切な製造・品質管理が行われているにもかかわらず、健康被害情報が相次ぐことになれば、指定成分そのものにリスクのあることが確定的になり、更なる規制に踏み切る根拠にもなる。

 厚労省は意見募集に当たり、製造・加工基準の骨子案も示した。それによると、同基準では、指定成分含有食品の製造施設ごとに、統括責任者はじめ製造管理責任者や品質管理責任者を設置させる。また、製品標準書や製造管理基準書、手順書などの作成及び備えつけも実施させる。さらに原材料の製造・品質管理も求め、製品標準書の企画に合致したものの使用やロットごとの適正な保管、出納などを義務付ける。

 製造・加工基準に関する規定の制定は、既存の告示「食品、添加物等の規格基準」の一部改正及び告示の新設を通じて行う。この告示も早ければ来年2月に公布される予定だ。

「表示責任者」設置が必要に
 届出に必要な事項を示した省令案(食品衛生法施行規則の一部改正省令案)では、届出事項として、健康被害を受けた消費者などが情報提供を拒まない限り、医療機関を受診している場合についてその名称や所在地、診断結果の他、健康被害を受けた際に医薬品を使用していた場合はその名称──などの届出を義務付ける考えを示した。

 また、こうした情報の届出には当たっては、健康被害情報の行政や消費者との窓口役を担う「表示責任者」を設置させる。指定成分含有食品を扱う事業者は、表示責任者への情報集約体制の構築が求められることになる。

 届出事項に関しては省令の他に通知でも規定が定められる見通しだ。届け出する健康被害情報の対象範囲も通知で規定される模様。新開発食品調査部会による審議の際には、健康被害と疑われるものは、医師らが因果関係を否定した場合などを除き、「症状の重篤度にかかわらず」届け出ることが提案されていた。

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