機能性表示食品制度 事後規制指針 年明けに全貌 (2019.12.26)
事業者の予見可能性の低さが問題視されてきた機能性表示食品の届出後規制(事後規制)が来年度、大きく改善に向かいそうだ。景品表示法や健康増進法の執行を担当する消費者庁表示対策課は今年8月以降、業界団体とも意見交換しながら、事後規制指針(事後チェック指針=仮称)の策定作業を進めてきた。年明け早々にも指針案に関するパブリックコメントを行う計画だ。来年3月31日までに策定・公表する。
表示対策課の田中誠・機能性表示食品特命室長が12月13日、日本通信販売協会、健康食品産業協議会、日本抗加齢協会及び日本チェーンドラッグストア協会の業界4団体共催セミナー「健康食品の広告を徹底的に考える」に登壇し、明らかにした。セミナーには200名を超える業界関係者が集まった。
講演した田中室長によると、この指針は、①機能性表示食品の科学的評価に関する事項(エビデンスの事後チェック指針)②広告その他表示上の考え方(広告・表示の事後チェック指針)──の大きく2つをまとめたもの。機能性表示食品を届け出る上で必要な科学的根拠の妥当性や、広告その他の表示の適正を示すという。
言い換えれば、同庁がエビデンスや広告・表示のどこをどうチェックして規制該当性を判断しているのかを明確化するもので、これにより、機能性表示食品に対する食品表示法、景品表示法、健康増進法にかかわる届出後規制の透明性の向上や、事業者の予見可能性を高める目的がある。
指針案は、12月13日時点でおおよそ完成状態にあり、年末までに最終的な原案が関係各所に提示される見通し。田中室長や業界団体関係者によれば、機能性表示食品の届出ガイドラインのような分厚い指針にはならないという。
田中室長はこの日、指針の概要を解説した。エビデンスの事後チェック指針については、「(届出後の不備指摘に関する)過去の例から照らして、明らかにエビデンス上不十分だとチェックを受けた実例に沿って、その内容を例示している」と説明。届け出されたエビデンスを巡る「明らかなNG事例」を具体的に提示するとみられる。
一方、広告・表示の事後チェック指針については、エビデンスと広告・表示のマッチングに関する「考え方」を示すものになるとした。実際の機能性表示食品の広告に対する景表法違反(優良誤認)認定事例(16社一斉処分事例)を土台に、事業者が機能性表示食品の広告について留意すべき事項を示すもので、「(景表法の)不実証広告規制に関する考え方を整理し、まとめている」という。
田中室長はまた、「ある程度(事業者の)予見可能性を高めることができると思う」と述べ、指針の中身への自信を覗かせた。一方、複数の業界団体関係者も、「届出がしやすくなると思う」と口を揃えており、少なくとも広告・表示に関する事後チェック指針は、消費者庁が考える不適切表示例を列挙した〝言葉狩り〟的な内容にはなっていないとする。
「機能性表示食品の信頼性(向上)のみならず、事業者も安心して届出ができる体制を整えていきたい」
事後チェック指針について田中室長は講演でこう述べるとともに、「(指針をベースに)事業者団体で自主的にチェックできるような体制、中小企業も含めて支援していただける体制を整えて欲しい。そのための支援は我々としても最大限行う」とも述べ、指針を「活用」するのは行政ではなく業界だと強調した。
エビデンス・広告表示 第三者機関を活用
消費者庁が機能性表示食品の事後チェック指針を策定する背景には、6月に閣議決定された規制改革実施計画がある。政府は、法執行方針の明確化や、事後チェックの透明性向上にかかわるガイドラインの策定、公表などを同庁に求めた。
この規制改革を要望したのは、健康食品産業協議会と日本通信販売協会の業界2団体。景表法に基づく16社一斉措置命令や、多くの届出が撤回に追い込まれた「歩行能力の改善」問題などを受け、届出後の表示規制に対する事業者の予見可能性が低いなどとして改善を求めた。景表法から薬機法まで重畳的に規制される現状も問題視した。
消費者庁は、事後チェック指針を公表することで、届出者の自主点検や、業界団体などによる自主的規制の取り組みが深まることを期待している。また、規制改革実施計画に定められた通り、「第三者的な役割を持つ機関あるいは組織の活用等により、透明性のある法執行の仕組みを構築する」方針だ。
広告・表示の事後チェック指針は、共催セミナーをこの日初めて開催した業界4団体が作成作業を現在進めている機能性表示食品の公正競争規約にも活用されていくことが予想され、その運用は、業界内に今後組織される機能性表示食品の公正取引協議会が担うことになる。公正競争規約は、景表法に基づく業界自主ルールで、同庁や公正取引委員会からの認定を受けることで初めて成立する。
また、エビデンスの事後チェック指針についても、第三者機関に活用されていくことになりそうだ。田中室長は講演で、「なにがどこまでエビデンスとして許されるのか、ここの部分については立証が不確かではないのかというところが、事業者側と我々で折り合わない場合がある」とエビデンスに関する届出後規制の現状を明かし、規制改革実施計画に基づき、エビデンスに関して「客観的な評価を行う第三者機関」を設置する必要性に言及した。
機能性表示食品の広告・表示は、届け出たエビデンスに基づく。その意味で、広告・表示を適正に行うためには、まずはエビデンスに不備のないことが求められる。実際に届出後のエビデンス評価を行う第三者機関が稼働すれば、エビデンス上の疑義のある機能性表示食品が市場に出ていく懸念は解消されそうだ。
ただ、そうした第三者評価を誰が担うのか。食品のエビデンス評価基準は定まっていないのが現状で、一方に偏れば適正な評価はなされない。田中室長は講演で「エビデンスのチェックを含めて第三者機関の立ち上げをどうするか、広告のチェックの仕方をどうしていくかを、年度内に整理していきたい」と述べており、事後チェック指針の中身とともに第三者機関の行方が大きく注目される。