指定成分含有食品の義務表示案 まさかの14P以上縛り(2020.2.6)
一体化縛りの可能性も
厚生労働省が6月1日に施行する指定成分等含有食品制度を巡り、消費者庁が先ごろ公開した義務表示規定案が業界に波紋を呼んでいる。14ポイント以上という大きな文字での表示を義務付ける他、経過措置期間を設けず、制度施行と同時に表示義務を発動する方針を示したためだ。「パッケージデザインを大幅に変えざるを得ない」「今あるパッケージはどうする。廃棄しろというのか」──などと関係者に困惑が広がっている。
指定成分等含有食品制度は、厚労省所管の改正食品衛生法で創設された、健康食品など食品による健康被害情報等の届出義務制度。製造・品質管理を巡ってはGMP義務化も導入される。対象となるのは指定成分等を含む食品で、現在、プエラリア・ミリフィカなど4植物素材が指定成分候補となっている。
食品表示制度を所管する消費者庁は、指定成分等含有食品にも表示規定を設ける必要があると判断し、食品表示基準の一部改正を決定。先月中旬までに義務表示規定案を取りまとめて公表し、今月15日までの日程で意見募集を行っている。
パケ、大幅見直し必至
消費者庁が提示した義務表示規定は関係者を驚かせた。義務表示のうち「指定成分等含有食品(指定成分名称)」及び「指定成分等とは、食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物です」の2項目について、JIS基準14ポイント以上の大きな文字での表示を義務付けたためだ。商品パッケージ全体の中でも特に目立つ表示の一つになる。
14ポイントはおよそ5ミリに相当。例えば栄養成分表示の文字は原則8ポイント以上と規定されているが、そのおよそ2倍にあたる。「そんな大きな文字で表示できる余裕のある健康食品のパッケージはほとんどない」。健康食品の製造現場からは実行可能性に疑問の声が上がる他、関係者は「パッケージデザインの大幅変更は避けられない」と指摘する。
パッケージデザインに大きな制約が生じることも避けられない。「14ポイント以上縛り」が掛かる2つの義務表示は、それぞれ近接させた表示が義務付けられる見通しとなっているためだ。
経過措置期間なしに悲鳴
1月23日開催の消費者委員会・食品表示部会。「指定成分等含有食品と表示されていると、消費者は『効果のある良いもの』といったイメージを持つのではないか。その意味をすぐそばに表示するルールが必要だ」──今回の食品表示基準改正に関する審議が行われた中で一部委員がこう指摘。14ポイント以上義務表示の「一体化」など具体的な表示ルールの必要性が提案され、説明に当たった同庁食品表示企画課は「その方向で検討する」と引き取った。
一方、通常ならば設けられるはずの経過措置期間がないことも関係者には想定外。「準備期間が少なすぎる」と悲鳴の声が上がる。
同庁は今回の食品表示基準の一部改正を3月末までに公布する考え。「今はまだ検討途上ということ。普通、決定されなければ動けない」とある関係者は指摘。「施行は6月1日。それまでにパッケージ変更を行うのは困難だ」と話す。
「経過措置期間がないのがそもそもおかしい」とも指摘する。「施行前に売り切ってしまおうと、乱暴なことをする企業を生む原因になりかねない」とし、拙速な措置が消費者利益を損なう可能性を懸念する。
表示部会委員も「対応困難では」
今回、消費者庁が経過措置期間を設けない異例の対応を取る理由はこうだ。
「安全性を確保するための重要な表示。適切に注意喚起し、消費者の健康被害を防止するには、改正食衛法の施行と同時に施行しないと(指定成分含有食品制度は)ワークしない。そのため、経過措置期間も設けない」(食品表示部会で食品表示企画課)。
ただ、疑問の声は食品表示部会委員からもあがった。「1月の段階でこうした議論をしている。(この日の議論の結果も含めて)具体的になるのはもう少し後だ。実際問題として、事業者は(6月1日施行に)対応できるのか」
一方、業界関係者からは代案があがる。「せめて製造期限に猶予を設けて欲しい。例えば4月末までに製造されたものは6月1日以降も義務表示がなくても販売を認める。そうでなければ資材の多くが廃棄されることになる」
「我々としても(事業者への)影響は理解している」──同部会で食品表示企画課長はこう述べ、「事前に関係団体や事業者にお話しをさせていただいた。施行まで4カ月程度だが、基準案をベースに準備を願いたい」とする。とはいえ、その基準案が正式に公表されたのは先月17日。業界の一部に内々に伝えただけでは情報の浸透は難しい。6月1日施行の主旨は理解できるにしても、関係事業者の対応準備期間を考慮に入れた再検討が求められそうだ。
同制度は施行に向けた作業が全体的に遅れ気味だ。厚労省が昨年末の公布を予定していた省令や告示は2月中に延期。さらに多少延びる可能性も示唆されている。製品ラインナップに指定成分候補を抱える原材料事業者は「業界内でも制度の理解はまだまだこれから」だとした上で、「細かな部分の確定情報が早く欲しい。お客様からの問い合わせも増えてきているのに正確なことを伝えられない。対応に困っている」