消費者ネットおかやま 広告差し止め求め提訴 (2020.2.27)
適格消費者団体の消費者ネットおかやま(河田英正理事長)が健康食品通販のインシップ(千葉県浦安市)を相手取り広告表示差し止めを求める訴状を岡山地方裁判所に提出したことが2月20日までに分かった。同社が日刊紙に掲載したノコギリヤシエキス配合健康食品の広告表示は景品表示法違反に当たるなどと主張している。ネットおかやまは昨年から同社に対して表示改善を求める申し入れなどを行っていた。
改善申入書、受領拒否の経緯
ネットおかやまによれば同社は2度にわたり申し入れ書の受け取りを拒絶。そのため昨年11月、差止請求訴訟を提起する最後通告に当たる消費者契約法に基づく事前請求書を同社に提出したが、これも受け取りを拒絶されたという。都合3度にわたり受領を拒否されたことになり、「残念ながら全く事前に交渉の余地がなかったことから提訴に至った」(訴状)としている。
ネットおかやまは、同社が2018年11月に日刊紙に掲載した「ノコギリヤシエキス」に関する全面広告を証拠物として提出する方針。訴状によれば、この広告を見た消費者は同製品が頻尿の改善に効果があると認識すると主張している。
広告には、「夜中に何度も…」「最近時間が…」「外出が不安」「中高年男性のスッキリしない悩みに!」などといった文字の直下に、電車に乗った中高年男性が下半身を震わせながら何らか我慢している表情のイラストが「早く降りたくて…ソワソワ…」の文字とセットで表示されるなどしている。
栄研DB根拠に「効果ない」
ネットおかやまはまた、「ノコギリヤシエキスが頻尿を改善する効果は有しないことは客観的調査により確認されている」(訴状)などと主張。「効果を発揮しない実際のものよりも著しく優良であると示し」(同)ているため景表法違反表示行為を行っているなどとしている。
ノコギリヤシエキスの効果を否定する主張の根拠は、国立・健康栄養研究所が運営する「『健康食品』の素材情報データベース」で2月23日現在掲載されているノコギリヤシの前立腺肥大症に対する有効性に関する記載。栄研では「現時点では、効果がないことが示唆されている」などと記述している。
訴状によれば、ネットおかやまは効果がないとする主張の根拠を栄研発の情報だけに依拠。しかし栄研とは異なる評価もあり、米ナチュラル・メディシン・データベースの日本対応版で現在最新の第6版によると、ノコギリヤシの前立腺肥大に対する有効性レベルは③(=効くと断言できませんが、効能の可能性が科学的に示唆されています)としている。
また、ノコギリヤシエキスは以前から欧州で、前立腺肥大に伴う症状に対する医薬品として認められていることが知られる。
他にも同様の広告 今後注視
ネットおかやまのインシップに対する申入れ活動は昨年12月までに明らかになっていた。今回、ネットおかやまが問題視したような広告表示は、他のノコギリヤシエキス配合健康食品でも見られることもあり、業界関係者は緊張感をもって行方を見守っていた。
訴訟の成り行きが注目される。