2月売上増加の裏側は DgS大手各社 特需が減少隠す(2020.3.26)
ドラッグストア大手各社が2月の業績を伸ばした。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、マスクや除菌剤、紙製品などの需要が大きく伸びたことが要因と見られる。しかし喜んではいられない。トイレ紙などの品不足を巡る来店客からの不満、クレームに店員らは疲弊。それに加えてインバウンド需要は大幅な減少が見込まれる。現場からは「高価格帯化粧品や医薬品が全く動いていない」との声も漏れる。
DgS各社が発表した2月の月次報告をみると、業界売上高首位のツルハHDは既存店の売上高で対前年7.1%増と伸長した。1月の売上高は同0.3%減だったが、一転して復調したかたちだ。客数も同8.3%増と伸ばしている。
首位のツルハHDを上回る数字を示したのは、2位のウエルシアHD。既存店の売上高は同20.6%増と大きく数字を伸ばした。2ケタの伸びは、消費増税の駆け込み需要とされる同19.4%増を示した昨年9月ぶり。客数も同22.8%増と2ケタ増となった。
次いで売上伸び率の高かったのが、東海地方を中心に関西・関東への出店を加速させているスギHD。既存店売上高は同20.9%増を示した。客数は同25.0%増。
その一方で、訪日客向けの免税店舗や中国のクレジットカード、ギンレンカードの取り扱いなど、インバウンド需要の取り込みを早くから実行し、注力してきたマツモトキヨシHDの売上伸び率は鈍く、同8%にとどまった。
また、売上を伸ばした大手各社にしても客単価は振るわない。月次報告で客単価を発表している各社の数字をみるとほぼマイナスで、唯一、北陸地盤のクスリのアオキHDが0.8%プラスを示したのみにとどまる。2月は中国人をはじめとする訪日客が激減。客単価も高いインバウンド需要の減少を、いわゆる「新型コロナ」特需がどうにか支えている格好と見られる。
新型コロナは終息の時期が見えないとはいえ、対策商材の需要はじきに収まる。また、新型コロナ感染症の終息後、訪日客が以前のように戻ってくる保証は今のところなく、DgS大手各社の今後の業績は見通せない。実際、調剤薬局を中心に美容強化のDgSも展開するアインHDでは、新型コロナで先の見通せない現状から業績を下方修正している。
健康食品業界にしてもここ数年、インバウンド需要を背景に業績を拡大させてきた面は少なくない。新型コロナは想定外のこととはいえ、不測の事態に備える仕組みの必要性を突き付けられたかっこうだ。インバウンドに偏らない事業戦略が求められる。