ケトジェンヌ販社に措置命令 実質3度目の行政処分(2020.3.26)


 消費者庁は3月19日、サプリメント『ケトジェンヌ』を販売するTOLUTO(東京都渋谷区、旧社名=e・Cycle)に対し、同品の広告表示に景品表示法違反(優良誤認)があったとして措置命令を行い、発表した。

 同庁は同社に対して昨年12月、同社がネット通販で販売する化粧品の売買契約に特定商取引法違反行為があったとして3カ月の一部業務停止命令を執行。さらに同年9月には、ケトジェンヌを摂取した消費者から健康被害情報が増えているなどとして、消費者安全法に基づき社名などを公表する措置を取っていた。

 消費者安全法に基づく社名や商品名の公表は、あくまでも消費者への注意喚起を目的としたもので、行政処分とは異なる。ただ、健康被害が急増しているなどとして商品名などを明かされる影響は企業にとって甚大で、同社は今回の措置命令で実質的に3度にわたる処分を受けたことになる。今後、課徴金の支払いも命じられる見通しだ。

健康被害原因 未だ分からず
 一方で、一連の処分の契機となった、ケトジェンヌを摂取した消費者から下痢など消化器障害に関する報告が短期間のうちに急増したとされる健康被害問題は、原因が未だに分かっていない。同庁によるとケトジェンヌは現在、新規客の申込みは停止されているものの、定期客に対しては販売が継続されているという。

 昨年9月に同庁が行った注意喚起によると、同庁が運用する事故情報データバンクに、ケトジェンヌを摂取した消費者からの身体被害にかかわる事故情報の登録が同年7月以降急増した。4月は1件だったものが7月は33件、8月は45件にまで増加。その多くが下痢やお腹の調子が悪くなったなど消化器障害に関するもので、中には水のような便の出る下痢を起こしたり、同品の摂取を止めたところ症状が回復したりした人もいたという。

 ただ、実際にケトジェンヌが健康被害の原因であったかは疑問も残る。同品の配合素材について、短期間のうちに下痢などを引き起こす可能性が考えられるようなものは見当たらず、厚生労働省による製品分析調査でも原因成分が特定できていないためだ。

厚労省も原因究明 待たれる最終判断
 厚労省は健康被害の原因究明のために昨年11月、国立医薬品食品衛生研究所に同品の分析調査を依頼した。だが、今年1月下旬までの段階では、同研究所でも「原因成分は不明」との中間報告しか出せず、厚労省としても、薬機法違反や食品衛生法に基づく流通禁止措置などに該当する事実は明らかではないと判断するしかなかった。

 厚労省は、同研究所から提出される報告書を踏まえ、最終的な判断を行う方針を示している。結論は中間報告と変わらないことも考えられ、そうなった場合、消費者庁は注意喚起のために商品名などを公表した是非を改めて問われかねない。原因が分からない中で行政処分を連発した是非も問われそうだ。

 一方、TOLUTOを巡っては、特商法違反で処分された事実が示す通り、売買契約を巡る消費者からの苦情・相談が多い。ケトジェンヌを巡っては、定期購入契約を解約できない不満や悩みと体調不良がセットで訴えられてケースが多かったと見られている。

 「実際には体調不良を起こしていない人も一定数いるのではないか」──業界では以前からこんな見立てが囁かれている。

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