食薬区分一部改正 非医→専ら医 判断変わる 16植物が区分変更(2020.4.9)
厚生労働省は食薬区分の一部改正を3月31日付で都道府県に通知し、これまで医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(非医)として扱ってきた計11の植物由来物について、専ら医薬品として使用される成分本質(専ら医)に区分変更した。昨年11月公表の改正案通りに改正する形となった。専ら医に区分変更された植物由来物は流通実態があるのかはっきりしないものが大半だが、今後、健康食品など食品に使用できなくなる。
まだ続く可能性高く
非医リストから専ら医リストに区分変更されたものは以下の通り。
エンベリア(果実)▽カイコウズ(全草)▽カンレンボク(キジュ、全草)▽クジチョウ(全草)▽ケイコツソウ(全草)▽コオウレン(茎・根茎)▽ダイフクヒ(ビンロウ/ビンロウジ、果皮・種子)▽ハナビシソウ(全草)▽ヒヨドリジョウゴ(ハクエイ/ハクモウトウ、全草)▽ヒルガオ(根)▽ルリヒエンソウ(ラークスパー、全草)──の11植物由来物。ダイフクヒ(ビンロウジ)については種子が非医から専ら医に変更された。ヒルガオの地上部は非医のままとなる。
今回の区分変更を巡っては、食薬区分を所管する厚労省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課が昨年7月と9月に開催した「医薬品の成分本質に関するワーキンググループ」で議論していた。議事録によると、「そのものの毒性や含有成分、含有成分の類似物の毒性を検討」した結果、「非医成分から専ら医成分へ移行することが妥当」と判断されたという。
非医から専ら医への区分変更は、例えばアシュワガンダなどこれまでも稀に行われていたが、今回のような一斉の変更は異例だ。
背景には、改正食品衛生法に基づく指定成分含有食品制度の対象となる指定成分の候補を選定するのに合わせ、非医リストの見直しが行われたことがある。安全性に関する新たな知見が得られるなど、非医リスト収載当時から状況が変わったものもあり、現時点では医薬品としての規制が妥当と考えられる植物由来物がピックアップされることになった。
この動きに関連し、非医リストから専ら医リストへの区分変更は、今後ほかの植物由来物でも行われる可能性が高い。厚労省監麻課は、今回の食薬区分一部改正の対象になっていないヒメツルニチニチソウなど5つの植物由来物についても非医から専ら医に区分変更する考えを表明。昨年11月から今年1月まで、反対意見や反対意見の根拠となる科学的根拠資料を提出するよう業界に求めていた。
監麻課が区分変更の考えを示しているのは、ヒメツルニチニチソウ(全草)の他にイボツヅラフジ(全草)▽シンキンソウ(ヒカゲノカズラ、全草)▽センソウトウ(トウゲシバ、全草)▽ノゲイトウ(セイショウ、種子)──の5植物由来物。このうちヒメツルニチニチソウやセンソウトウ、シンキンソウは流通実態のあることが明らかで、特にセンソウトウは新たな認知機能対応素材として関心を集め、配合商品の市場投入が活発化されつつあった。専ら医に区分変更されると市場への打撃は避けられない。
とはいえ、今は非医リストに収載されたままであり、関係事業者は今後の行方を注視する。「宙ぶらりんだ。結論を早く示して欲しい」(製造関係)と対応に苦しむ事業者も出ている。
監麻課は当時、1月10日を期日とする業界からの反対意見等を取りまとめてワーキンググループで議論、その上で改正案をまとめ、意見募集を行う予定を示していた。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、厚労省によれば、ワーキンググループは未だに開催されていない。結論が示されるのはしばらく先となる見通しだ。
NMN、非医に収載
今回の食薬区分一部改正では、非医リストの化学物質等にNMN(β‐ニコチンアミドモノヌクレオチド)、ニコチンアミドリボシドクロライドが新たに収載された他、植物由来物等には穀物のテフ(果実)が追加された。
NMNは現時点で配合サプリメントを複数社が展開しており、そうした事業者の一部が食薬区分を照会。今回の非医リスト入りを受け、今後、販売に一層力を入れることになりそうだ。原材料事業者の関心も高く、前の食薬区分一部改正で非医リストに新規収載されたβ‐アラニンのように、新たに輸入販売に乗り出す事業者が増えていく可能性も高い。
ニコチンアミドリボシドクライドは、欧州食品安全機関が新食品(ノーベルフード)としての安全性を評価した経緯がある。1日あたり300㍉㌘を摂取する範囲では安全だと結論付けている。