DSMやキリン HMOに大手熱視線 (2020.4.23)
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)のパイオニアと言わる企業の買収手続きを進めていたDSMが4月13日までに買収を完了、発表した。HMOは、人の母乳、特に初乳に特有に含まれるとされるオリゴ糖の一種。日本のキリングループもヘルスサイエンス領域事業の成長戦略の一つに掲げている成分で、同グループによると、これまでに免疫賦活、腸管保護、プレバイオティクス、脳機能発達──などの機能性を持つ可能性が論文報告されている。
DSMが買収したのは、デンマークのエスビャウにHMOの大規模生産プラントを構えるGlycom社。HMOの生産の他、臨床試験など機能性研究も一気通貫に手掛けている。DSMによれば、同社はHMOの世界的サプライヤーで、7億6500万ユーロに上る企業価値がある。同社を買収することは今年2月に発表していた。
DSMはGlycom社の買収を通じ、乳幼児向け栄養食品(アーリー・ライフ・ニュートリション)市場や、栄養補助食品市場における事業成長を加速させたい考え。また、Glycom社は年内にも4種類のHMO製品を新発売する予定を掲げているといい、DSMは「現在成長を続けているHMO市場がさらに活気づく」と期待を寄せている。
一方、「発酵技術で競合に対し低コストで大量に生産できる技術を確立することで、健康増進への貢献、市場相乗により、高い利益率を獲得する」としてHMOの事業化を進めているのはキリングループだ。
キリンホールディングスが今年2月に公表した2019年2月期決算資料によると、同グループは今後、グループ企業の協和発酵バイオで発酵生産したHMOを粉ミルクに配合したり、「母乳の価値を生涯にわたり提供」できる健康食品として応用開発したりといった取り組みを通じ、グローバル市場に展開していくことを検討している模様だ。
キリングループは、HMOの市場規模について、2030年に1800億円に達すると見積もる。一方、DSMはHMOの用途について、栄養補助食品の他に、飲食料品やペットフードとしての「潜在的用途」があるとする。さらに、「過敏性腸症候群などの医療・栄養ニーズを満たし得る」とも指摘しており、健康食品にとどまらない活用が進んでいくことに期待を寄せているようだ。