表示範囲拡大 要望強く 免疫等「機能性」巡り事業者(2020.4.23)
機能性表示食品制度が抱える課題や問題を把握し、継続的な制度成長に向けた取り組みや見直しを強化する目的で、事業者を対象にしたアンケート調査を健康食品産業協議会が実施し、4月15日に結果速報を公表した。健康維持・増進の範囲におけるヘルスクレームの領域拡大について尋ねる設問では、「体力増強・減退対策、筋肉強化」「美肌・肌ケア」「抗酸化・老化予防」「風邪の予防・免疫の正常化」関連に100件前後の回答(複数回答)が集中した。
調査は昨年12月~今年2月にかけてインターネットを使い実施。健康食品産業協議会を構成する各業界団体はじめ日本通信販売協会、日本抗加齢協会の会員など176社から回答が寄せられた。
今回のアンケート結果から示唆されるヘルスクレームの領域拡大に対する事業者の強い要望について、調査を行った健康食品産業協議会のガイドライン分科会(以下、分科会)は、「抗酸化、免疫に関して、消費者庁ではメカニズムとしての認識が高いなど課題もある」と指摘しつつ、実現に向けて「健康食品産業協議会として検討していく」としている。
一方、いわゆる健康食品を機能性表示食品として今後「届出したいか」を尋ねる設問では、「とてもそう思う」(12%)、「ややそう思う」(36%)を合わせても48%にとどまり、「どちらともいえない」が36%、「あまりそう思わない」が12%、「全くそう思わない」が4%と届出に消極的な企業が一定数存在することが示唆された。
いわゆる健康食品の機能性表示食品化を検討したくない理由としては、特に、「届出・受理にかかる期間が読みづらく、発売スケジュールが立てにくい」「広告表現・表示の自由度が低くなる」に多くの回答が集まった。この結果を受けて分科会では、「事後チェック指針の運用により、消費者に誤認を与えない、適切な広告表現を理解する活動を継続していく」としている。
また、現行の機能性表示食品制度の満足度や問題点を尋ねる設問では、「とても満足」「やや満足」を合わせても10%を割り込む項目が4つあった。消費者庁確認作業の透明性▽差し戻し理由・コメント内容の分かりやすさ(=意図の理解しやすさ)▽差し戻し指摘事項の整合性(=同庁担当ごとの相違)▽検証事業における変更届出期限の長さ──の4つで、こうした不満や問題が「いわゆる」の機能性表示食品化を消極的にさせている可能性も示唆される。
ただ、「(同庁)食品表示企画窓口の電話のつながりやすさ」は、「とても満足」が8.5%、「やや満足」が21.0%と、全項目の中で満足度が最も高かった。
また、「機能性表示食品関連の売上伸長」に関する満足度について、「やや満足」が18.8%、「どらともいえない」が55.1%、「やや不満」が15.3%、「とても不満」が4.0%などとなり、機能性表示食品が業績に貢献しているかどうかは、現状では判断し難いと考えている様子がうかがわれた。
崩壊性試験の実施 「分からない」5%
アンケートではサプリメント形状の機能性表示食品を販売している95社に崩壊性試験の実施状況も尋ねた。その結果、「実施している」は94%に上った。
その一方で、「実施していない」が1%、「委託製造会社に任せているため分からない」は5%に上り、品質管理に懸念がもたれる結果となった。
他方、崩壊性試験を実施し、その試験内容を把握している90社に崩壊性試験に関する考えを尋ねたところ、「医薬品と同じルールでの運用は難しい」に多くの回答が集まった。「とてもそう思う」は40.0%、「ややそう思う」は35.6%に上り、サプリメントに適した崩壊性試験ルールの必要性が浮き彫りとなった。
また、届出後の機能性関与成分等に関する分析実施状況を尋ねる設問では、実施状況の公表を「行っている」と回答したのは大企業で14、中小企業で11、小規模企業で1だった一方、「行っていない」は大企業32、中小企業40、小規模企業10に上り、公表している事業者はかなり限定的だった。
ただ、分析実施状況を公表することに疑問を感じている事業者も少なくないとみられる。「消費者から分析頻度、結果の問い合わせがない」に「とてもそう思う」と回答した企業は81%に達したほか、「販売中のトクホでも公表していないため機能性(表示食品)のみ公表することに懸念あり」に対して「とてもそう思う」と答えた企業は46%に上った。分科会は「消費者からの問い合わせはほとんどない一方で、『結果』の公開が望ましいとの回答が多かったため、日健栄協の公表サイト等の利用を案内していく」としている。