タキシフォリン 東和薬品、サプリ化検討 (2020.4.23)
ジェネリック医薬品製造販売大手の東和薬品(大阪府門真市)が、植物由来成分を使った独自のサプリメントや健康食品の開発を目指す考えを4月7日、明らかにした。同社が注目した植物由来成分はタキシフォリン。国立循環器病研究センターと連携し、同成分の認知症予防効果に関する共同研究を進め、研究成果をサプリメントなど製品開発につなげたい考えだ。同社は2020年度を最終年度とする中期経営計画で「新たな健康関連事業」の創出に取り組んでいる。
タキシフォリンは、シベリアカラマツなど針葉樹に含まれているとされるフラボノイドの一種。ジヒドロケルセチンとも呼ばれており、配合製品を販売する国内事業者も存在する。
東和薬品では今後、タキシフォリンについて、ヒトの認知症予防効果に関する調査研究を行う予定だ。
臨床試験を実施する方向だが、「具体的な時期は何も決まっていない」(同社広報部)。機能性表示食品など保健機能食品としての製品開発については「今後、検討していく」(同)と答えるにとどめている。
共同研究先の国立循環器病研究センターは、以前からタキシフォリンの認知症予防効果研究を行っていた。2017年4月、同成分が脳内アミロイドβの蓄積を抑制したり、認知機能の障害を回復させたりすることを動物試験で明らかにしたと発表している。
当時、同センターはタキシフォリンで新規治療薬を開発したい考えも示し、「17年度中の治験開始と25年度中の臨床応用を目指す」としていた。また、17年には薬剤としてのタキシフォリンに関する特許を、神戸医療産業都市推進機構と共に出願してもいる。
東和薬品は昨年4月以来、同センターとの間で「健康寿命の延伸を目的とした薬物治療、疾患予防、健康維持・増進などのエビデンス構築」をテーマにした共同研究に取り組んでおり、研究開発目標の一つに「認知症及び軽度認知障害(MCI)の予防」を掲げている。
その中で、同センターが知見を持つタキシフォリンの実用化に向けた共同研究を進めることになったようだ。「コストや実用化までの期間を考え、サプリメントなどとして開発することにした」(同社広報部)という。今後、MCIに対するタキシフォリンの機能性研究を進めることが予測される。
タキシフォリンとの関連は不明だが、東和薬品は4月16日、アルツハイマー型認知症のバイオマーカーに関する共同研究契約を、大阪府立病院機構・大阪精神医療センターとの間で締結したと発表している。アルツハイマー型認知症のバイオマーカーとしては、アミロイドβなどの異常タンパク質が知られるが、同社は「MCIや初期アルツハイマー型認知症患者において、これらバイオマーカーの蓄積が軽微で、健常状態との差を捉えることが困難」と指摘。そのため、共同研究では、MCIの新たなバイオマーカーの臨床応用を目指すという。
ハスカップにも関心? 北海道厚真町と協定締結
東和薬品は、ビタミンCやアントシアニンが多く含まれることで知られる植物、ハスカップにも関心を抱いているもようだ。タキシフォリンの認知症予防効果を巡る同研究について発表する前の3月31日に同社は、北海道厚真町との協定締結を発表。その中で、厚真町特産のハスカップを使った健康食品やサプリメントなどを開発していく考えを明らかにした。
東和薬品の発表によると、北海道厚真町との協定は、新規産業の創出と厚真町民の健康づくりの推進に関するもの。新規産業の創出について具体的には、ハスカップをはじめとする厚真町の特産品を用いた健康食品やサプリメントの開発に取り組む。
「両者の思いが一致した」ことで協定締結に至ったという。東和薬品では、同社の製剤技術を活かした独自サプリメントの開発の他、「それらを活用した地域社会の健康づくりに一緒に取り組めるパートナーを探しておりました」。一方、厚真町では、町の特産品を活用した新規産業創出を模索する中で、特にハスカップは「健康に寄与する可能性が高い」こともあり、ヘルスケア領域(健康産業領域)での活用を模索していたという。
ハスカップは、スイカズラ科スイカズラ属の果樹で、果実は食用とされる。日本では北海道で広く栽培されており、そのうち最大産地は厚真町と言われる。含有成分としてはビタミンCやアントシアニンが多く含まれているとされる。また、含有する苦味成分について、血圧降下の薬理作用があるとする推定もある。