栄研サイト 積み上がる効果否定情報 (2020.5.14)


 「現時点で、新型コロナウイルスに対する効果を示した食品・素材の情報は見当たりません」。栄養素や機能性成分・素材についてこう注意喚起する情報が、医薬基盤・健康・栄養研究所(栄研)が運用するウェブサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報」に積み上がり続けている。新型コロナ感染症予防効果を謳う健康食品の情報がネットを中心に流通されていることに伴う対応といえ、栄研では、宣伝されている情報の拡大解釈に注意喚起しつつ、情報提供も求めている。

 5月8日現在、同サイトには、特定成分・素材の新型コロナへの効果を否定する情報が20件近くも積み上げられている。栄研は、2月26日以降連日のように情報を追加。新型コロナに対する効果を謳う宣伝を見つけるそばから調査し、情報の迅速な追加に務めているとみられる。今後も増えていきそうだ。

 同サイトによると、ここに上げられた情報は「新型コロナウイルスと同じウイルス感染症であるインフルエンザなどに対する研究結果」を調べた結果。多くが「現時点においてインフルエンザに対する予防効果を検討した報告は見当たらない」などとされている。

 8日までに情報を上げられた成分・素材は、ビタミンD▽納豆▽オリーブ葉エキス▽マヌカハニー▽水素水▽プロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌など)▽ニンニク▽ビタミンC▽タンポポ茶▽プレバイオティクス(βグルカン、オリゴ糖など)▽ケイ素(シリカ)▽ビタミンA▽鉄▽亜鉛▽セレン▽エキナセア▽ラクトフェリン▽エルダーベリー──と手当り次第の様相を呈している。

 その中でビタミンDなど一部については、「効果があるとする結果と、効果がないとする結果の両方が存在する」と両論を紹介。ただ、「普段の食事で十分に摂取できている人がさらに摂取しても効果はないという報告がある」(ビタミンD)、「摂取する菌株や体調により効果は異なるので注意が必要」(プロバイオティクス)などと併記しており、あくまでも現時点では効果は認められないとする姿勢が鮮明に見て取れる。

 一方、ラクトフェリンについては、インフルエンザに対する予防効果に関する報告は見当たらないとしつつ、「風邪と乳児の呼吸器感染症に対して予防効果があるとする報告がある」と前向きに紹介した。ただし、論文内容を踏まえ、「その効果は限定的と言えそうです」などと否定的な情報を付け加えることも忘れていない。

 「栄研が効果を否定する情報を上げることで、優良誤認の景表法(景品表示法)違反で行政処分しやすくする狙いがあるのだろう」──連日のように追加されていく情報を見て、業界関係者からはこう憶測する声が上がる。

 実際、消費者庁も新型コロナへの効果標ぼうを強く問題視しているとみられ、今月1日、都合3度目となる消費者への注意喚起を行った。「新型コロナウイルス予防に根拠のあるサプリメントや特定の食品はありません」と断言した上で、健康維持の基本として、「栄養のバランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養」を呼び掛けている。

消費者への影響は
 しかし、栄研がいくら声高に注意喚起しても、一般消費者にはほとんど響かないであろう現実がある。消費者庁の委託で民間会社が2017年に行った調査では、栄研のウェブサイト(データベース)を「見たことがある」と答えた消費者は47人中3名にとどまった。薬剤師など専門家を通じて消費者に情報が伝わることも期待されるが、専門家を対象にした関連の調査でも、その認知は半数(10人中6人)に過ぎなかった。

 また、新型コロナ予防効果を標ぼうする宣伝が、消費者にどれほど影響を及ぼしているのかもはっきりしない。健康食品に関する情報にも精通する薬剤師は、「(漢方薬など)医薬品に関しては色いろと相談があるが、『コロナによいサプリはありますか?』のような相談は1件も(受けたことが)ない」と話す。

 効果に関する否定的情報を上げられた乳酸菌や納豆だが、今でも売れ続けているといわれる。栄研や消費者の注意喚起はどうあれ、消費者は「からだに良さそう」と思えるものを自らすすんで買っているとも考えられる。

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