機能性表示食品の事後チェック指針 業界対応 評価委を設置(2020.6.11)


 健康食品産業協議会や日本通信販売協会など業界4団体が機能性表示食品に関する民間の第三者組織「エビデンスレビュー評価委員会」(以下、評価委)を立ち上げ、6月1日に運用を始めた。消費者庁が今年4月1日に運用を開始した機能性表示食品に対する事後チェック指針に関連するもので、表示する機能性のエビデンスに対する疑義が届出後に生じた場合、届出を行った事業者の依頼に基づき、同委員会でエビデンスの妥当性を評価、判定する。消費者庁は評価委の判定を適宜取り扱う。

 評価委の事務局は健康食品産業協議会内に置いた。評価委を構成する委員の氏名は非公表だが、消費者庁と業界団体がそれぞれ推薦した専門知識を持つ複数の有識者で構成される。

 エビデンスレビューに関わる委員は案件ごとに異なるため委員数も非公表。ただ、少なくとも全体で10名以上に上るとみられる。委員のうち1名は、意見集約を担う座長を務める。座長は消費者庁も確認の上で業界団体が指名する。レビューは、個別事案ごとに必要な専門性や利益相反に配慮しながら、座長の指名により招集された委員により実施される。

 業界4団体が評価委を立ち上げた背景には、機能性表示食品制度を所管する消費者庁が今年4月から運用している「食品表示等法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」(事後チェック指針)がある。

 指針には、機能性表示の裏付けとなる科学的根拠(エビデンス)に対する疑義が届出後に生じた場合について、「科学的知見と客観的立場を有すると認められる機関や組織等」に「妥当であるとの評価」を受けるなどして「表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いているものではないと判断されるもの」に関しては、「景品表示法上問題となるものとは取り扱わない」とする原則が明記されている。

 この「科学的知見と客観的立場を有すると認められる機関や組織等」に相当するのが業界団体が立ち上げた評価委。事務局によると、消費者庁は事後チェック指針の公表に合わせ、業界団体に向けて「事後チェック指針に基づく事業者の自主的管理推進に係る協力依頼」も出していたという。

 制度施行以来、届出後あるいは販売開始後にエビデンスに対する疑義が生じる問題は、明るみにならなかったものも合わせて少なからず発生していた。従来、この問題が起こるとエビデンスの妥当性は消費者庁側が判断。疑義を突き付けられ、届出撤回以外の選択肢が事実上閉ざされる事業者にとっては、判断の透明性や公平性が重大な問題となっていた。第三者の立場にある評価委の運用が始まることで、問題が解消されるとみられる。

 事務局によると、評価委によるエビデンスレビューの主な流れは、①疑義が生じた事業者からの依頼に基づきエビデンスレビューを実施②レビューを実施する委員は、事業者や消費者庁から提供を受けた情報に基づき事務局が作成した回答案を、届出ガイドラインや事後チェック指針などに照らしてレビューし、結果に応じて技術的助言。
 ③委員会による評価結果は、事業者と消費者庁の双方に伝えられ、同庁は事後チェック指針に基づき「機能性表示食品に関する科学的知見及び客観的立場を有すると認められる組織において評価を受けたもの」として評価結果を取り扱う──といった流れになる。評価委は、サイエンスと制度ルールの両面からエビデンスの妥当性を判定していくことになるようだ。

 事業者が評価委にエビデンスレビューの実施を依頼してから結果が出るまでの期間の目安については、今のところ1~2カ月となる見通し。また、評価委に対するレビュー依頼は、業界4団体(産業協議会、通販協、日本健康・栄養食品協会、日本抗加齢協会)への所属、未所属を問わず、全ての事業者で可能となる。費用については、全額がレビューを依頼する事業者側の負担。20~30万円が想定されており、大半が委員への謝礼に充てられる。



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