免疫表示実現の可能性 注目の第2期健康・医療戦略(2020.6.25)
2020年初頭時点では誰も想像すらつかなかった新型コロナウイルスの感染拡大。それを防止する様ざまな自粛によって、我々を取り巻く社会環境は一変してしまった。今月19日に都道府県をまたいだ移動自粛要請も全国的に解除されたが、「ウィズコロナ」「ポストコロナ」の時代は、今までとは違う日常を模索していく必要が求められるのだろう。健康食品業界も同じ。今のところ目立った影響はあまり感じられないが、実際はそうでもない。「免疫」を巡る状況が一変しつつある。
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今年3月27日に閣議決定された「第2期健康・医療戦略」。健康・医療戦略とは機能性表示食品制度誕生の原点となった「規制改革会議第1次答申」「日本再興戦略」と同じ13年6月14日に閣議決定された。現在は政府の「健康・医療戦略推進本部」が健康・医療戦略推進法に基づく法定本部として司令塔機能を担っている。
ちなみに、前回第1期健康・医療戦略の成果は、14年5月23日に創設された日本版NIH、すなわち「国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)」であろう。
また、2018年に施行された「臨床研究法」や2019年5月成立の「健康保険法等の一部改正」、さらにデータヘルス推進本部の設置など、主に医療分野での改革が目立つ。
一方、実はヘルスケアの分野でも、「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」などの誕生に大きく貢献しており、今回の第2期健康・医療戦略もそうなる可能性がある。「健康の維持・増進や健康リスクの低減に係る食品の機能性等を表示できる制度の適切な運用」、「機能性表示食品等について科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善等を通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」──などと閣議決定文書に明記されたためだ。
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機能性表示食品制度の誕生までのプロセスや制度施行後のフォローにおいて、主導的な役割を担ってきたのは、いうまでもなく規制改革推進会議(~16年9月までは規制改革会議)だ。そして、同会議の委員としてその能力と腕力をいかんなく発揮したのが、森下竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学寄付講座教授)である。
制度誕生に向けた検討会には、健康食品産業協議会と日本通信販売協会が業界代表として参加。制度施行後の検討会には日本チェーンドラッグストア協会も加わり、健康食品業界側は同3団体を中心に森下氏との関係を深めていった。特に大きかったのは、森下氏が橋渡し役だったとみられる消費者庁と業界関連団体との定例意見交換会の開催だろう。これによって、それまででは考えられないほど業界と消費者庁との距離感は変わった。
その森下氏は昨年、規制改革推進会議の委員を任期満了で離れた。在任中の5回にわたる答申すべてに健康食品に係わる課題が提起されていたが、残念ながら第6次答申にそれが記載されるという話は今のところ聞こえてこない。今後、機能性表示食品制度のさらなる改正、改良に向けた議論、提案が、規制改革推進会議案件として立ち上がってくる可能性は低い。
しかし、議論はまだ終わらないだろう。議論の舞台が規制改革推進会議から、第2期健康・医療戦略の検討に携わった「健康・医療戦略推進会議」に移ると考えられるためだ。同会議には現在、健康・医療戦略参与として森下氏が参画している。
先ごろ閣議決定された第2期健康・医療戦略にはそのような背景もある。そのなかで同戦略に「機能性表示食品における免疫機能の改善等を通じた保健用途における新たな表示を実現」の文言が盛り込まれた意義は極めて大きい。しかも、健康・医療戦略の効力は5年。それが長いか、短いかは業界の取り組みに掛かっているといえる。
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欧米では、「イミューン(Immune)」(免疫)に関する機能性表示がサプリメントに認められている。
一方で日本。コロナウイルス感染拡大を受けて消費者庁は3月10日、27日、そして6月10日と都合3度にわたり「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品等の表示に関する改善要請等及び一般消費者等への注意喚起」を行うとともに、関連する業者に表示改善指導を行った。
さらに、国立健康・栄養研究所(栄研)も、「新型コロナウイルス感染予防によいと話題になっている食品・素材について」として、ビタミンDをはじめ、32にも上る食品成分・素材に関し、新型コロナウイルスに対しての明確な科学的根拠はないとした(6月18日時点)。
こうした消費者庁や国立栄研のアナウンスは、至極当然の話だろう。景品表示法や健康増進法だけでなく医薬品医療機器等法に抵触する可能性のある問題だからだ。
しかし、一方で、国立栄研が「明確な科学的根拠はない」などとして具体名を挙げた32の成分・素材の中には、ビタミンDをはじめプロバイオティクス、プレバイオティクス、ラクトフェリン、フコイダン──など、健康食品業界では免疫対応素材として代表的なものが複数含まれている。しかも、そもそも栄研自らが「インフルエンザや風邪、上気道感染症に対して予防効果があるとする報告がある」と紹介しているものも複数含まれている。
確かに、新型コロナウイルス感染を予防するような効果があるとはいえない。そもそも今はまだ、その効果があるかどうかを検証することさえできない。だが、インフルエンザや風邪などに対する予防効果とはまさに免疫機能を介した効果である。(続く)