米GNC、コロナ致命傷に 民事再生 チャプター11申請(2020.7.9)
米国のサプリメント販売大手・GNCホールディングス(ピッツバーグ)が6月24日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第11条(チャプター11)を申請したとの現地報道に、日本の業界関係者も驚きの声を上げた。85年以上の歴史があり、北米だけで5000店舗以上、海外50拠点合わせて約8000店舗を通じて、消費者にサプリメントを届ける世界的な大手。収益の減少が続いていたなかで、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた全米規模の店舗閉鎖が致命傷になった。
中国企業に事業売却の見通し
米業界専門メディアのニューホープの報道によれば、GNC社は事業売却による再編を計画。筆頭株主でもある中国企業のハルビン製薬ホールディングスに7億6000万ドルで売却する方向で調整が進んでいる。ただ、裁判所の監督下で今後行われる入札で、より高額を提示する先が現われる可能性もある。
チャプター11は、米国とカナダのGNC店舗に適用される。そのため国内外のフランチャイズ店などは影響を受けず、営業は今後も続く。しかし、米CNNによると、GNC社は全米5900店舗のうち最大20%(1200店舗)を閉鎖する計画。店舗規模は大幅に縮小されることになる。
GNC社が現在抱える負債は、およそ10億ドルに上る。新型コロナ禍以前から収益の減少に苦しんでいた。そのなかで新型コロナの感染拡大を受け、北米の店舗全体の25%に相当する約900店が一時閉鎖に追い込まれた。ショッピングモールに入店している場合が多かったのが影響した。CNNによると、店舗閉鎖による損失は2億ドルに上るという。
GNC社は1935年に創業。運営する店舗ではGNCブランドのサプリメントを中心に販売を展開。1980年代後半に初めて米国を訪れた際にGNCの存在を知ったという業界関係者は、「薬局だと思ったが、サプリメントショップだと聞いて度肝を抜かれた。当時の日本では、健康食品にカプセル形状の使用が許されていなかった。(プロテインの)バケツのような容器にも驚いた。以来、米国出張のたびに通っていた」と話す。
日本市場への参入も狙っていた。少なくとも3度にわたり日本への参入を検討していたとみられる。しかし、思うように進まなかった。「店舗販売にこだわっていたし、米国で販売している製品をそのまま日本でも売ろうとした。他の国ではそれでも上手くいったのかもしれないが、日本では難しい」と事情を知る業界関係者は指摘する。
【写真=世界的なサプリメント販売大手の深刻な業績不振に日本の業界関係者も驚きの声を上げた。事業写真は米ポートランドのGNC店舗。2019年8月撮影】