DNS、ドームから独立 新会社として新たな船出 (2020.7.23)
有力スポーツサプリ専業企業が新たに
スポーツサプリメントの国内有力ブランド『DNS』に関する事業がドーム(東京都江東区)から独立する。これにより、有力スポーツサプリメント専業企業が日本に新たに生まれることになる。DNSは今後、新会社「株式会社DNS」(仮称)を通じてアスリートやスポーツ愛好者などに提供される。
ドームは7月8日、スポーツニュートリション事業(DNS事業)の分社化、承継に関する契約に合意したと発表。投資ファンドの日本産業推進機構(東京都港区)が設立する新会社にDNS事業を承継させる吸収分割契約に双方で合意した。
契約に関わる金額は非公開。同事業に関する業務は新会社「DNS」(現時点で仮称)が引き継ぎ、今年8月末から業務を開始。DNS事業に携わってきたドームの社員らは「原則、新会社に移籍する」(同社広報担当)。
新会社のスタートアップ時代表には、日本産業推進機構の津坂純代表が就任する。移行期間を経て、来年3月末までに本格稼働する予定だ。ドームによると、「移行期間中は、DNSとの販売卸契約に基づき、お客様への販売はこれまで通り当社が行う」。新会社のオフィスも当面はドーム社内に置き、「引き続き緊密な関係を継続しながら事業を進めていく」としている。
ドームは、DNS事業を手放すことで、主力のスポーツアパレル「アンダーアーマー」に経営資源を集中できる。会社設立時からの事業であったメディカル事業についても、先月1日、分社化の上で譲渡すると発表していた。
一方、DNSはドームから独立することで「専門性を高め、事業の価値を最大化することが期待できる」とドーム。DNS事業を担当する同社の青柳清治執行役員は「DNSの更なる成長加速のためには、DNS事業独自での機動的かつ柔軟な意思決定を行える体制を構築することが必要」だとしている。
市場けん引ブランド
ドームがDNS事業を立ち上げたのは2000年。1998年に日本総代理店となっていたスポーツ用品ブランド、アンダーアーマーがプロアスリートやスポーツ愛好者などに幅広く浸透したことも追い風に、DNSは「日本で最大手のスポーツニュートリションブランド」(スポーツ分野に詳しい業界関係者)に成長した。
最近では、アンチドーピング認証(インフォームドチョイス)の積極的な取得を通じて、国内スポーツニュートリション・サプリメント市場をけん引している。
そうした中でのドームからの突然の独立。背景としてドームの業績を指摘する声もある。
アンダーアーマーはプロからアマ、一般生活者まで浸透しているものの、同社の業績はここ数年低迷。東京商工リサーチによると17年12月期には459億円の売上があったが、決算公告によると19年12月期の売上高は376億円にとどまり、当期純利益はおよそ23億円の損失。その上、今期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたアンダーアーマーの直営店、取扱い店舗の営業自粛の他、プロ・アマスポーツの試合、大会の開催中止が業績に追い打ちを掛けていそうだ。
「新たな展開」期待
一方で、ドームからの独立を大きく歓迎する声も上がる。
「どこまでいってもアパレルの会社」。同社を巡っては業界内からそうした見方もあった。同社から独立することで、アンダーアーマー事業の影響を受けないDNS独自のスポーツニュートリション・サプリメント事業の展開が可能になる。
ただ、新型コロナ禍が業績に与えた影響はDNSも避けられなかったはず。DNSはオンライン販売も行われているが、主要販売チャネルはスポーツ用品量販店などのリアル店舗。アンダーアーマーと同様に取り扱い店舗の営業自粛による打撃、試合、練習の機会が失われたプロアスリートら主要ユーザーのサプリメント需要減退の影響を真正面から受けたとみられる。
新型コロナ問題の収束が見通せないなかでは、DNSの新たな船出は厳しいものになると言わざるを得ない。しかし、オンライン販売の強化、ドラッグストアなど新たな販売チャネルの開拓、スポーツ愛好家以外の層からのサプリメント需要の掘り起こし──など新たな取り組みを進めることで事業は一層の成長を果たせそうだ。「これまでにない新たな展開を期待したい」とDNSに近い業界関係者は話す。
【写真=最新のスポーツニュートリションをいち早く採用するなどしてきたDNSの公式サイト】