埼玉県 不当表示、学生と調査 (2020.7.23)
埼玉県が県内の高校生、大学生と連携した不当表示広告調査を進めている。消費者教育の一環として取り組んでいるものだが、これを端緒にした行政処分の事例も出ている。若者が調査に当たるだけに、スマートフォン、パソコンに監視の目が集中する。
県によると、2019年度の学校と連携した不当表示広告調査には、県内の高校生1359名、大学生105名の計1464名が参加し県に調査報告書を提出。これを県で精査した結果、25事業者に対する行政指導(文書による)が行われた。
さらに、1事業者に対しては行政処分が行われ、社名などが公表された。県は遅くとも16年度から学校と連携した不当表示広告調査を行っているが、行政処分にまで至ったケースは初とみられる。
景表法、特商法 同時処分に至る
19年度の学校連携不当表示広告調査を端緒に埼玉県から行政処分を受けたのは東京都内の健康食品通販会社。県は、同社で販売するダイエットサプリメントの公式ウェブサイト及びアフィリエイトサイトの表示を景品表示法違反(優良誤認・有利誤認)と認定。今年3月31日に措置命令を行った。都道府県には課徴金納付命令の権限までは与えられていない。そのため、同社は今後、消費者庁から景表法に基づく課徴金納付命令を受ける可能性が高い。
さらに県は4月1日、同社に対し、特定商取引法に基づく3カ月の一部業務停止命令も執行。同じサプリメントを巡る誇大広告、顧客の意に反して売買契約の申し込みをさせる行為を認定した。学生や生徒らが参加する不当表示広告調査が、消費者庁でも過去にほとんど例がみられない「景表法と特商法の同時執行」の端緒になったことになる。
学校と連携した不当表示広告調査の目的について県は、「次代を担う大学生、高校生が不当表示等に関する正しい知識を得ることにより、消費者被害の未然防止を図る」としている。19年度調査には、市立浦和高校、所沢北高校など県内高校6校、城西大学薬学部医療栄養学科の県内1大学が調査に参加。生徒、学生は、景表法や不当表示などに関するガイダンスを受けた上で、授業、学習の一環として調査に当たった。
県は今年度も同調査事業を実施する計画。今月末から各高校、大学で順次調査を実施する予定だ。
監視の目が集中 スマフォ、PC
19年度の調査では、高校は調査対象商品を限定せずに実施。一方、大学は食品表示に限定した。調査媒体は雑誌から店頭広告まで幅広に設定。配布した調査票に問題があると思われる広告表示などを記入してもらう。
提出された報告書1464件のうち、生徒、学生が違法性などを報告した広告表示の媒体として最も多かったのは「スマートフォン」で548件。次いで「インターネット」が507件となり、この2つで全体の7割超を占めた。商品・サービス別で見ると、最多は「ダイエット関係」で635件。次いで「美容関係」255件、「健康関係」224件──などが続いた。
生徒らから報告が上がった事業者数は407事業者だった。このうち実際に不当のおそれがあると思わるものは計208事業者に上ったという。