食成分機能に医療者期待 (2020.9.24)
食や食成分による認知機能改善効果を期待している一般生活者は約5割、医師など医療従事者は約8割に上る──そんなアンケート調査結果を日本認知症予防学会(浦上克哉理事長=鳥取大学医学部教授)らが2020年9月16日までに公表した。医療従事者のほうが食や食成分の効果を期待している結果は意外といえそうだ。
発表によると、この調査は、認知症予防に関する理解レベルの確認と認知症予防への関心の喚起を目的に実施したもの。調査対象は30~70代の一般生活者1030名(各年代男女各103名ずつ)のほか、同学会に所属する医師102名、メディカルスタッフ278名を合わせた医療従事者380名。インターネットを使い調査した。
「食や食成分が認知機能改善に効果があると思う」を尋ねる設問では、一般54.6%、医療従事者77.1%が「思う」と回答。「思わない」と答えた人は、一般6.1%、医療従事者1.3%にとどまる結果だった。
また、「機能性表示食品の認知機能改善効果を期待するか」を尋ねる設問では、「大いに期待している」または「やや期待している」の回答を合わせると、一般は49.7%、医療従事者は58.1%と、やはり医療従事者のほうが期待している結果だった。
ただ、これまでに届け出されている機能性表示食品のなかに、「認知機能改善効果」を直接的に訴求しているものはなく、「認知機能の一部である記憶力の維持」など限定的な認知機能のサポート機能にとどまる。
日本認知症予防学会は、2011年4月に発足、19年4月に一般社団法人化。理事には理事長の浦上教授をはじめ18名、代議員として109名の医療従事者らが参画。また、賛助会員として30社近い法人が加盟している。
また今回のアンケート調査は、「食から認知機能について考える会」と共同で実施したという。同会のホームページによると、同会は今年5月ごろに発足されたとみられる団体で、代表を務めるのは虎の門病院顧問の大内尉義氏。同氏のほか、順天堂大学医学部の堀江重郎教授、東京都健康長寿医療センターの鳥羽研二理事長ら計4名のアカデミアが設立時メンバーとして名を連ねている。
今回のアンケート結果をもう少し見ると、「機能性表示食品等の食成分のエビデンスは信頼できるか」を尋ねる設問では、一般、医療従事者とも「どちらともいえない」が約7割に達し、「信頼できる」は約2割にとどまった。
また、信頼できない理由として最も多かったのは、一般が「企業に有利なことしか開示していない」(41.4%)、医療従事者が「データが不十分」(40.0%)。食成分を選択する際に重視するポイントについては、一般、医療従事者ともに「科学的根拠」が最も多く、一般では34.2%、医療従事者では67.4%になったという。
アンケート結果について同学会の浦上理事長は、食や食成分による認知機能改善効果への期待の高さが分かったことは「収穫」だとし、「認知機能改善効果のエビデンスがある食や食成分について、学会として正しい情報提供に努めたい」とコメントしている。