新会社に移行 広がる好機 株式会社DNS青柳清治 執行役員(2020.10.22)

02事業戦略インタビュー_DNS_青柳執行役員 写真①

今後、スポーツ栄養を一般にも
 2020年9月1日、アスリート向けサプリメントを主要商材とする新会社が設立された。「株式会社DNS」。スポーツアパレルブランド『アンダーアーマー』を手掛けるドーム社の『DNS』事業が会社分割される形で生まれた新会社だ。同事業を担当していたドーム社員はほぼ全員が新会社に移籍。新たな親会社の下で、得意とするスポーツ栄養の概念を社会に普及させるとともに、事業をさらに成長させようとしている。新会社でもリーダーシップをとる青柳清治執行役員に、分社化の背景や新たな船出に対する意気込みなどを尋ねた。

──設立からまだ1カ月余りですが現状は?

 「今は、通常通り事業を行いながら、元々ドームが主体となっていた契約や各種機能を順次移管しています。並行して、独立企業としての組織体制づくりやインフラの整備などを進めています」

──青柳さんの肩書はドーム時代と同じ「サイエンティフィック・オフィサー」ですね。

 「そう、以前と変わらない(笑)。社員も、ドームでDNS事業を担当していたメンバーがほぼ全員こちらに移籍しています。DNSに思い入れのあるメンバーが、外部から新たに参画してくれるなどの動きもあります」

──ドームがDNS事業を譲渡する判断をした理由について。

 「一言でいえば、アンダーアーマー事業に特化する方向に舵を切ったということ。DNS事業の他にも、テーピングテープなどメディカル事業を分社化しています。そのように舵を切った理由としては、新型コロナウイルス感染拡大による社会環境の大きな変化も影響したと思います」

──むしろドームから独立したことがプラスの方向に働くのではないかと私は感じています。

 「DNSは、ドームのスポーツ量販店やフィットネスなどの商流に相乗る形で運営されてきました。そのシナジーを享受することでここまで成長してきましたが、突き詰めると、やはりサプリメントにはサプリメントの最適化されたマーケティング戦略やリソース配分の考え方があります。その意味で私たちはこれまで、アンダーアーマーに頼り切ったニュートリションビジネスを行っていたため、それを必ずしも実行できていなかった。今回の分社化は、その状態から独立し、自助でやっていくということ。今、これまでやりたくてもやれなかったことがやれるようになる感触を得ています」

──ドームからDNS事業を継承した日本産業推進機構(NSSK)は投資運営会社です。同社の津坂純代表がDNS社の代表に就任しました。

 「NSSKはこれまでに15社以上への投資実績がある。そのなかで、私たちが手掛けるスポーツニュートリションに対し、ビジネスとしてのオポチュニティ(好機)を感じ取ってくれたのだと理解しています。また、DNSのブランド、品質へのこだわり、それを活かした成長ポテンシャルに大きな魅力を見出したとも聞いています。今後は、NSSKのグループ企業にニュートリションビジネスを広げていくこともできるはず。私たちとしてもオポチュニティを広げてもらえたということです」

 「ちなみに、津坂代表もスポーツが大好き(笑)。そのようなパートナーを得られたことを心強く思います。NSSKの経営支援を得て、経営管理手法の導入や営業力強化、新たな戦略立案、人材育成やESGへの取組みなどを進めて、力強く成長できればと思います」

──新会社としての事業戦略を伺います。まず販売チャネルについて。これまで通りスポーツ用品量販店を軸に販売展開していくお考えですか?

 「量販店は売上高に占める割合が大きく、アスリートとのつながりも強いですから、これまで通り大切な販売チャネルです。ただ、新型コロナの影響もあって社会がデジタルに大きくシフトしている。DNSの主要な販売ターゲットは20~30代ですが、彼らも利用するのはもっぱらデジタル。ですから、情報発信などのマーケティングも含めて、私たちもデジタルにシフトする必要がある。今後はEコマースにも力を入れます」

──販売戦略について。

 「スポーツサプリメントの国内市場は伸びています。ただ、ここ数年の私たちはその伸びに追いつけていなかった。そこに追いつき、海外勢も参入し始めているこの市場で勝ち抜いていきたい。そのために、新型コロナ禍での消費行動の変化の流れを捕え、デジタルも駆使しながら新たなコンシューマーにアプローチしていくつもりです。DNSはアスリートにおける認知度は非常に高いですが、一般消費者はそうではない。新たなブランドイメージも付加しながら、新たなコンシューマーも含め、適切な商品を適切なサービスとともに提供しきたいと考えています」

 「私は臨床栄養にも携わってきたのですが、DNSの事業であるスポーツ栄養と臨床栄養はクロスオーバーするところが非常に大きい。ですから私たちの事業は、アスリートだけなく一般の中高齢者にも貢献できるはずで、そのためのマーケットがいま実際にある。私の経歴も生かしながら、DNSをさらに成長させたいと考えています」

──最後に、昨年12月にドーピング禁止物質が極微量なら検出されたDNSブランドのサプリメント「アイアンSP」について。主要素材として配合していた豚血管由来ヘム鉄に禁止物質が天然に極微量含まれていたのが原因であったことをDNS社として先ごろ発表しました。教訓は。

 「アスリートが摂取するサプリメントは、成分分析をして、ドーピングの安全性を確認してから市場にださなければならないということに尽きます。昨年12月以降、認証取得予定製品は、事前分析をしてからの販売へと完全に改めています」

【写真=株式会社DNS青柳清治 執行役員】

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