株式会社東洋新薬 ウィズコロナ下の成長戦略 (2020.11.12)

事業戦略インタビュー_東洋新薬・髙垣副社長 ⑤

デジタル活用、海外開拓等を強化
 サプリメント・健康食品の開発・生産を支える受託製造企業はウィズコロナ下でどのような成長戦略を描いているのか。OEM/ODM国内大手・東洋新薬(本部・佐賀県鳥栖市)の髙垣欣也副社長に足元の状況も含めて話を聞いた。

──まずは2020年9月期の業績を教えて下さい。

 「売上高は東洋新薬グループ全体として260億6000万円。前期比は増収増益となりました。売上高の伸び率は110%。要因は、機能性表示食品、青汁、化粧品で新製品が増えたこと、その上でリピートもしっかりあったこと。しかし、4月以降はコロナ禍の影響を受けたこともあり、目標には届きませんでした」

 「どこも同じだと思いますが、お客様と直接お会いできなくなったことで、営業活動が鈍化してしまった。現在も完全に回復したわけではありません」

──今期スタートと同時にオウンドメディア『通販ビジネスステーション』を開設しました。通信販売事業者向けにビジネス拡大・成長のヒントを提供する情報サイトとのことで、実際、コンテンツ(記事)が充実しています。立ち上げの狙いは。

 「お客様や業界とのコミュニケーションを取るための一つの手段。直接お会いしたりお話できたりする機会が大きく減ってしまったなかで、お客様や業界にどう情報発信していくか、また、新しいお客様を広げていくために何をすればいいのか──そうした新たに出てきた課題を解決する目的で立ち上げました」

 「記事をまとめているのは基本的に当社社員です。ただ、独りよがりな情報発信をしても意味がありませんから、外部のサポートも得ています。少しでもお客様や業界に役立つ情報をこまめに発信していきたいと思っています」

──コロナ禍で損なわれたリアルなコミュニケーションをデジタルで補う、そして新規顧客の開拓にもつなげる。そういうことですね。

 「デジタルをもっと活用していく必要があると以前から考えていました。ただ、あまり進んでいなかった。ですがコロナの状況で加速せざるを得なくなった。今後さらにデジタルの活用を深めていくつもりですが、まずは通販ビジネスステーションに対する反応や評価を探ってから。それに応じて新たな施策を検討していきます」

 「また、今秋は展示会への出展を見合わせました。ですから、今後、外部のサポートも得ながらウェビナーを積極的に開催するなど、デジタルを活用したアピールの場をもっとつくっていきたいと考えています」

──受注について足元の状況を聞かせて下さい。

 「通信販売のお客様が好調だと受け止めています。コロナ禍が当社の業績に与えた影響が少なかった理由もそこにありそうです。とりわけ青汁の動きがいい。青汁市場全体の成長鈍化が指摘されていましたが、増加に転じたと言ってもよいかもしれません。青汁が好調な理由をしっかり分析できているわけではありませんが、やはりコロナが影響しているように思います。コロナによって健康に向ける意識がさらに高まったということ。また、コロナの影響という意味では、機能性表示食品についてダイエット関連の動きもいい。乳酸菌など免疫関連も同様です」

──免疫といえば、キリングループによる機能性表示食品の届出をどのように捉えましたか?

 「すごいな、と。また、免疫機能に関して一つの指針が示されたということ。当社に限らず、水面下ではさまざまな取り組みが現在進行形で行われているのだろうと思っています」

──今後についてうかがいます。今、海外営業職の人材募集を進めていらっしゃるようですね。目的は。

 「海外顧客の開拓を本格化させるためです。まずは中国から。国内もまだ伸びる余地があると思っていますが、今後を考えれば海外が無視できない。海外の開拓は以前から少しずつ進めていて、成果も上がりつつあったなかで、コロナの影響で動きを止められてしまいました。そこを巻き返していきたい。専門部署も立ち上げます」

──国内について。通販ビジネスステーションからも窺われますが、新規顧客として通販事業者を重要視しているように見えます。

 「コロナが終息したとしても、以前と同じ状況に完全に戻ることはないと思う。そのなかで、健康・美容商材の販売チャネルとして通信販売の存在感は今後ますます大きくなっていくはず。新たなお客様も通販事業者の中に数多く存在すると考えています」

──では、国内で新規顧客を増やすための施策について。

 「まずはグループ会社の東洋フーズを通じたOEMの拡大。東洋フーズでも機能性表示食品のOEMが増えつつあります。また、今年4月から本格化させた原材料販売。当社の独自素材を外部に販売していくことで、これまでアプローチしづらかった飲料メーカー大手などにお客様を広げていきます。そして化粧品OEM/ODMの拡大。当社グループ全体の売上高に占める化粧品の割合はまだ小さいですが、前期は大きく伸びました。今期も伸ばして全体の底上げを図ります」

【写真=株式会社東洋新薬 高垣欣也 副社長】


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