連載対談 私たちはこう見る 第1回 サプリ・健康食品市場の足元(2021.1.14)
コロナ、コロナで明け暮れた2020年。サプリメント・健康食品市場、業界に対し、新型コロナウイルスの感染拡大が与えた変化とは何か。それは2021年以降にどのような影響を及ぼしていくのか──。海外も含めたサプリメント市場の動向に精通するグローバルニュートリショングループの武田猛代表取締役と、受託開発・製造企業大手の立場から市場を見渡す東洋新薬の髙垣欣也副社長取締役に語り合ってもらった。全4回に分けて掲載する。
新型コロナが与えた変化
武田「まず、販売チャネル毎の業績が大きく変わりました。インバウンドが消滅したことで、郊外のドラッグストアは健闘しているようですが、特に都市型のドラッグストアが苦戦している。一方で、ここ数年苦戦しているように見えた通販が伸びています。また、健康に対する消費者の意識がこれまで以上に高まったことも変化の一つでしょう。サプリメントに限らず、発酵製品の需要が大きく高まった。納豆やヨーグルトなどが非常に売れました。
サプリメントの動きを見ると、米国の市場では、免疫関係が前年比5割アップ、睡眠サポートが3割アップ、メンタルヘルスも3割アップと、コロナの影響を受けて特定のヘルスベネフィットが急激に伸びています。また、市場全体としては約12%増と予測されていて、2ケタ増の成長率は実に10数年ぶりのことです。こうした海外の伸びを見て、インバウンドが激減したことも影響しているのでしょう、海外進出に対して日本の企業がすごく積極的になっていると感じる。当社でも、米国やアセアンの市場について問い合わせや相談が増えています」
髙垣「我われの直近業績も踏まえ、やはり販路によって明暗がはっきり分かれたように思います。武田さんがおっしゃったようにインバウンドはほぼ無くなってしまったわけですが、通信販売のお客様は好調。その中でも、我われの主力製品の一つである青汁が、おそらくコロナが影響していると思うのですが、右肩上がりで伸びています。青汁市場は『峠を越した』のような見方もありましたが、いま非常に好調です。また、私自身もそうなのですが、外出自粛で太ってしまった人が多い。そのためだと思いますがダイエットを中心とした生活習慣関連の機能性表示食品も非常に好調です。対消費者の需要がすごく伸びてきていると感じます」
インバウンド激減にどう対応
髙垣「インバウンドはそう簡単には回復しない。では今後どうしていくべきなのかを各社が考えていらっしゃる。ただ、今のところは、コロナなどの影響が今後どうなるのかを読んだ上で、商品戦略や販売戦略を模索していこうという段階だと思います。
我われとしても、インバウンドに限らず、輸出も含めて、海外に関しては大きな方向転換を余儀なくされました。約1年前に海外事業部を新設していたのですが、さあこれからという矢先にコロナ。現地に渡航することもできなくなった。仕方ないですが、期待してくれていたお客様も多かったので残念です」
武田「海外進出に関しては、機能性表示食品制度のスタート後に機運が高まったように感じています。エビデンスに投資する企業が増え、そのエビデンスをもって海外に進出しようという機運。エビデンスの取得が、海外進出のためのモチベーションになってもいるようです。以前だと投資したところでマーケティングに利用できないということもあり、エビデンスの取得にあまり積極的ではなかった。しかし、機能性表示食品制度がはじまったことで、エビデンスと機能性に対する意識がかなり高まりました。
日本の企業はいま、以前と比べて、米国など海外市場への進出が相当楽になっているはずです。実際、機能性表示食品として届け出るにはまだ時間がかかるけれども、手持ちのエビデンスを生かして米国で先に販売実績をつくるという企業もある。いま話題の免疫機能も、機能性表示食品のガイドラインに準拠させるにはエビデンスがあっても一定の工夫が必要ですが、米国ならばエビデンスがあればそのままいける。機能性表示食品制度の誕生によって最終製品、原材料ともに、日本企業の実力が全体的に底上げされたはずです」
(次号に続く。対談は2020年12月14日に行いました)