SDGs、サプリ業界に拡がるか (2021.1.14)

TOPSDGs_サプリ業界にも広がるか 図1①

 2015年9月の国連総会で日本を含む国連加盟193カ国全てが賛同したSDGs(Sustainable Development Goals)。日本では「持続可能な開発目標」と訳される、経済・社会・環境の持続的な成長を目指すための国際目標だ。先進国から途上国まで、世界が進むべき方向性(未来)を示したともいえるSDGsに対応する動きは、国や自治体に限らず企業にも広がりつつある。2021年、その動きは日本のサプリメント・健康食品業界にも伝播していくのか──。ある企業の取り組みを見てみる。

SDGs対応素材に引き合い
 現状、SDGsに対するサプリ・健康食品業界の関心は決して高くない。だが、おとなりの化粧品業界では、「2020年に入って、関心が急速に高まってきたように思います。異常気象や地球温暖化などを身近に感じることも多く、また、美容雑誌がSDGsを特集した影響も要因のひとつかもしれません」

 こう話すのは、天然由来抽出物を中心に、化粧品・サプリメント原材料の製造・販売を手掛ける一丸ファルコス(岐阜県本巣市)。「サプリメントに関しては今のところほとんどありませんが、化粧品関連ではSDGsに対応する原材料に関する問い合わせや引き合いが20年夏ごろから増えています」。

 SDGsに対応する原材料とは何か。同社の製品ラインナップのうち、サプリメントにも関連する素材を挙げると、例えば「ニームリーフ」が該当するという。生物多様性条約を踏まえ、原料調達先(資源国地域)のインドとベネフィットシェアリング契約を締結し、同社で上げた利益の一部をインドに還元しているからだ。また、インドの地元企業と共同で、植樹活動はじめ雇用創出・教育・医療支援なども行っている。

 そのため、同社で製造・販売するニームリームを原料にしたパウダー等は、SDGsが掲げる17目標のうち、貧困をなくそう(目標1)▽すべての人に健康と福祉を(同3)▽質の高い教育をみんなに(同4)▽働きがいも経済成長も(同8)▽陸の豊かさも守ろう(同15)──に該当するという。

 また、機能性表示食品などとして需要が伸びているプロテオグリカンもSDGs対応素材だ。
 というのも、販売開始から現在まで10年間にわたり、大量に廃棄される鮭の頭(鼻軟骨)を原料として活用することで、鮭の産地・青森などにおいて廃棄物の発生抑制のほか経済活動に貢献。また、その開発や市場普及に当たっては、青森県をはじめ地元の弘前大学の他、地元以外の企業も含めた産官学が連携し、産業としての基盤を構築した。こうした背景を持つことから、前述のSDGsの目標3と8の他、産業と技術革新の基盤をつくろう(9)▽つくる責任、つかう責任(12)▽パートナーシップで目標を達成しよう(17)に該当するという。

一丸、社内にSDGs委員会
 サプリ・健康食品業界ではおそらく初めてとみられるが、一丸ファルコスは今年、社内に「SDGs委員会」を立ち上げる。SDGsを経営基盤に明確に位置づけ、その取り組みを一層推進するのが目的だという。

 社内に委員会を立ち上げて取り組むほどSDGsを重要視しているのはなぜか。
 第一に、もともと同社が掲げる経営理念にSDGs的な考え方が盛り込まれていたことがあるという。

 まず、天然資源との共生を通じて世界の人々の美と健康への貢献、次いで、人間尊重と自然保護環境保全を基盤にした研究開発・技術革新・高品質の探求、そして、健全経営を継続することによる取引先・社員の幸福実現──。「当社は、19年に創立60周年を迎えることができました。60年にもわたり事業継続できたのは、経営基盤に持続可能な考え方があったからだと思います」。

 また、「持続可能性」をより深く、かつ、多く考えさせられることになる場面が訪れたこともあるという。世界的な混乱を招いた新型コロナウイルスの感染拡大だ。

 一丸ファルコスの製品ラインナップは現在およそ1000品目。いずれも安定的・持続的に供給していく必要がある中で、「結果的にスピーディに対応することが出来ましたが、エタノールの確保、世界中から輸入している原料の安定的な調達などをどうしていくのか。会社全体で懸命に考え、対応していく必要に迫られました」。

 また、人と人の接触が制限されたことで、従来型の営業活動が難しくなった。そこで同社が取り入れ、積極的に展開したのが、現在も週に1回の頻度で開催しているウェビナーだ。「お客様との接点を途切れさせないため」に始めた同社のウェビナーには、100名以上が参加することもある。こうしたデジタルの活用では他にも、2年以上前に導入したウェブ版プロダクトガイドにコンテンツ機能を追加。情報の量とスピードを高めるように努めた。

「今後も選ばれ続けるために」
 企業としての持続可能性を追求していくとSDGsに必ず結びつく──一丸ファルコスはそう話す。原材料メーカーとしての品質に対する責任、天然物を取り扱う企業としての自然と環境を守る覚悟をはじめ社内の人材教育、女性の働きやすさ、グローバル企業としての多様性への対応──などを実践していくためにもSDGsを推進していく必要があるという。

 また、次のようにも語る。この先50年、100年後も社会から選ばれる企業であり続けるために、また、社会から継続的に求め続けられる天然資源を原料にした製品を安定的に供給し続けるために、SDGsの推進を旗印にした企業成長を成し遂げたい──。

【写真=2030年までの達成を目指すSDGsの17目標のアイコン。17の目標と169のターゲットで構成される。様々な社会課題がコロナ禍で改めて顕在化したなか、持続可能性を念頭においたSDGsに対する注目が今後さらに高まる可能性がある。国連加盟国である日本も参加している。(画像は外務省のホームページより)】


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