サプリ・健康食品OEM企業アンケート コロナ下 堅調な健康需要 (2021.1.28)


 国内サプリメント・健康食品受託製造企業を対象にしたアンケートを、健康産業流通新聞が行い、合計50社から回答を得た。昨年から続く新型コロナウイルスの流行が社会全体に少なからず影響を与えている中、サプリメント・健康食品に対する需要は堅調であることが見えてくる。アンケートは主にeメールで今月6日以降に実施した。

20年下期に上向く
 コロナ禍がサプリメント・健康食品の需要に及ぼした影響をとらえる目的で、2020年通年の受注件数・数量の前年同期比を尋ねたところ、「大きく増えた」と「やや増えた」を選んだ企業は合わせて18社に上った一方で、「やや減った」と「減った」はそれぞれ計15社と大差なかった。「変わらない」も計15社だった(無回答2社)。

 昨年8月下旬から9月上旬にかけて行った前回の調査(回答47社)では、前回の緊急事態宣言発令期間を含む20年4~8月の受注状況を尋ねている。今回のアンケート結果と比較すると、「減った」はほぼ横ばいで、「変わらない」が大幅に減少。「やや増えた」と「やや減った」が増加した。増加率としては、「やや増」の方が大きい。

 「変わらない」の大幅な減少は、コロナ禍が長引くのに合わせてその影響が顕在化してきたことを示唆する。他方で、「やや増えた」の回答が増加したことからは、20年下期から受注状況が上向いてきた傾向が窺われる。

 減少した理由は何か。「減った」「やや減った」を選んだ企業の自由記述では、コロナ禍の影響をその要因として述べる向きが目立つ。「コロナの影響」「インバウンド関連の受注が大きく減ったため」「インバウンド需要減/店頭販売商品の需要減」「特に上半期に減少が見られた」──などの声が上がった。

 また、緊急事態宣言発令の影響も受けた顧客企業の事業活動の停滞や、デパートなど商業施設の営業時間短縮を減少要因として挙げる声も上がった。他に、スポーツ関連など特定分野の商品の受注が落ち込んだとする声や、「一般消費者の購入品目の移り変わり」を減少要因として挙げる声もあった。
 総じて、コロナの影響といえる。「下半期は持ち直した」という企業でも、前年並みを維持するのは難しかった。「混乱の中で企業活動は、自社、顧客ともに萎縮した部分があり、特に外国人を相手にした商流の顧客からの受注で大きな影響を受けたことなどから、前年同期比をキープするまでに至らなかった」。

販路・商品毎に「まだら模様」
 一方、「変わらない」を選んだ企業も、受注状況はまだら模様だったようだ。「新規案件が減ったものの既存顧客が健闘している」「主力商品は特需で伸びたが、中国観光客の激減で売上が低下した(商品も)。トータルとしては現状維持」「コロナの影響かどうかは分からないが、プラスに転じた顧客もあれば、マイナスに転じた顧客もあり、平均すると大きく増減しなかった」などといった声が上がった。

 増加したとする企業でも、まだら模様の状況はさほど変わらない。「やや増えた」を選んだ企業からは、「コロナで大きく打撃を受けた部分もあれば、好調だった部分もあり、トータルすると微増だった」「販路によって厳しかった顧客がいる一方で伸びた顧客も」「海外向けの製品は落ち込んだものの国内向け顧客の受注増により、一昨年と比較して生産数量は増えている」──などといった声が寄せられ、平均すると「やや増えた」結果であったことが窺われる。

 他方で、「増えた」と回答した企業の自由記述を見ると、その要因として、「通販」を挙げる声が複数あった。「店舗販売の商品は大きく落ち込んだが、ネット通販がそれ以上に伸びた」「国内の通販や青汁販売が好調だった」といった声が上がった。

 また、コロナ禍を受けた健康意識の高まりや、最終製品販売会社の新商品開発に向けた意欲の高まりを指摘する声もあった。「新規の問い合わせが増えている。各社これまでとは違う商品開発を検討されているように思う」「コロナにより健康食品に対する認識が高くなっていると思われ、新規商品に対する取り組み意欲が高まっているように思う」といった意見が上がった。

 2020年の売上高と昨対比を尋ねたところ、回答22社のうち増加は計11社、減少は計7社、横ばいは計5社だった。増加したと回答した企業のうち最も大きな伸び率は35%。同社では増加した背景について、「新しい顧客を開拓できた。積極的に動いたことで反応があった」としている。

「増」要因に機能性表示も
 2020年の受注件数・数量が前年比で「増えた」と回答した企業の中には、その理由として、「機能性表示食品の受注量が増えた」を挙げた先もあった。アンケートでは、今年4月に施行7年目を迎える機能性表示食品制度の評価を聞いたところ、「商品によっては機能性表示にすることで売上げが大幅に伸張するケースもある」「(機能性を表示できることが)販売につながっている」などの声が上がり、制度が業績に寄与をしている様子が窺えた。

 アンケートでは、機能性表示食品制度を「評価する」を選んだ企業は計22社だった「評価しない」の計4社を大きく上回った。

 「評価する」と回答した自由記述では、「ガイドライン周りが改正等で整備されてきており、求められる届出資料が理解しやすくなり、利用する事業者(顧客)も増え続けている」と、制度が改善されてきたことを評価する声が上がった。この企業は、「表示見本に対する指摘事項も分かりやすくなってきており、当社の届出でも、一発受理や軽微な指摘事項のみの2回目受理が増えた」とも述べる。

 評価する理由としては他に、「市場の活性化に寄与する」「受理件数が増えてきている。業界のスタンダードの一つになっていくと思う」「(機能性を)訴求するのに必要不可欠な制度」「消費者に分かりやすく(商品を)提供できる」「品目増加による市場拡大とともに消費者の認知も浸透してきている──などといった声が上がった。

制度を評価しない企業もまだ多く
 一方、「どちともいえない」を選んだ企業も計21社と少なくなかった。昨夏に行った前回アンケート時とほぼ変わらぬ結果で、「(届出公開までの)ハードルが高いイメージがある。制度そのものはある程度評価できるが、もう少し手続きを簡素化できないのか疑問がある」「消費者に具体的なアプローチができる一方で、届出内容以外のアプローチができなくなる」などの声が上がった。

 また、「業界内に制度が定着してきたが、基準が定まらないのが困る」など、届出が差し戻された際の指摘事項のバラつきや、一貫性のなさを指摘する声が引き続き複数寄せられた。

 届出にかかわる費用対効果の観点から「どちらともいえない」や「評価しない」を選択する企業も目立った。「(届出までの)コストと売れ行きの効果が疑問」「先発企業やCM(コマーシャル)力のある企業の製品しか大きく売れていない」「機能性表示食品という理由で注文数量が増加するわけではない」「小さな会社で届出のフォローで繁忙になり時間がかかる」といった声が上がった。

 ただ、「免疫機能の維持」に代表される、それまで困難だったと考えられてきた新規の機能性表示がここにきて登場していることに対する評価を尋ねたところ、「どちらともいえない」を選んだ企業は計14社だった。機能性表示食品制度そのものに対する評価を「どちらともいえない」とした企業でも、複数社が「評価する」を選んだ。「評価する」は計29社だった。

 評価する理由を自由記述で尋ねたところ、「新市場が創造され、業界の活性化につながる」「制度の特長ともいえるチャレンジングな表示、領域が増えるのは市場の活性化につながる」「事業の活性化につながる。経済的な効果も期待できる」など、業界や市場の活性化につながることに期待を寄せる声が目立った。ある企業では次のように述べる。

 「新たな市場の創出、消費者の商品選択のひろがり。中長期的には、このような健康食品の機能訴求と用途拡大が、健康維持や疾病予防に対する消費者リテラシーの底上げにつながり、健康寿命延伸の社会課題解決につながると考える」。

 一方で、表示できる機能の領域拡大を歓迎しつつ、次のように悩みを述べる企業もある。
 「新規性の高いものは発明企業に独占・管理されることが多く、OEM企業としては自社で新規ヘルスクレームを創出できるわけではない。それ(新規ヘルスクレーム)に対応するSR(システマティックレビュー)付き原材料の登場が望まれる」。





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