シルク食品、中国が関心 (2021.2.25)


 シルク(絹)由来の健康食品素材に対する関心が中国でじわりと高まりつつあるようだ。昨年来、日本の取り扱い事業者への引き合いが増加傾向。現時点では一部企業からの引き合いにとどまるものの、同事業者は、今年から輸出を本格化したい考えだ。

シルクたんぱく 数十万包受注
 中国からの関心を高めつつある健康食品素材は、「シルクフィブロイン」というシルクのたんぱく質の一種。健康食品・化粧品OEMを手掛けるドクターセラム㈱(東京都渋谷区)が15年以上前から取り扱っている独自素材だ。開発には、シルクの研究で知られる、長島孝行・現東京農業大学農学部農学部教授(昆虫機能開発研究室)が深く関わった。

 同社は、以前から中国などアジア市場開拓を少しずつ進めていた。その中で、現地とのビジネスが本格化しそうな兆しが見え始めたのは昨年だ。同社がOEMを手掛ける国産シルクフィブロイン含有ゼリーに対して現地企業から発注があり、数十万包を受注。今年に入ってからはさらに多くの注文を受けた。「(発注元から)販路を広げると聞いている」と同社では話す。

 特殊な製法で得られる同社のシルクフィブロインは、カイコの絹糸に含まれるたんぱく質のうち、絹糸の主要成分であるフィブロインのみを分離精製したもの。多孔性の3次元構造を持つため、摂取すると体内で中性脂肪などを吸着し、排泄すると考えられている。

ドクターセラム 輸出本格化へ
 機能性に関するエビデンスもある。国内で実施したヒト試験で、脂質代謝改善機能のあることが確認された。論文も国内査読付き誌に掲載。シルクフィブロインを一定期間摂取することで、中性脂肪値の低下機能や、HDL(善玉)コレステロール上昇機能などが期待できるという。

 中国からの引き合いの背景は、はっきりしない。日本と同様に、ここにきて中国の消費者も健康維持・増進に対する意識を大きく高めていると指摘される中、食品としての機能性に関する科学的根拠があることに興味・関心が抱かれた可能性も考えられるが、同社では、「実際にシルクフィブロインを飲んでみて、実際に効き目があったからかもしれない」と見る。

 同社はシルクフィブロインについて、これまで国内市場を主要マーケットとして事業展開してきた。今後もその点は変らないが、新たなマーケットとして、中国などアジアをより強く意識するようになっている。近い将来、日本よりも大きな需要がアジアで創出される可能性もなくはなさそうだ。


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