食薬区分、やはり岩盤 タウリン等 専ら非医ならず(2021.3.11)


 食薬区分を巡る識者の審議結果が公開された。厚生労働省監視指導・麻薬対策課は、昨年6月から12月にかけ、食薬区分を審議する識者のワーキンググループを計4回にわたり開催。各回の議事概要を3月1日までに一斉公開した。審議の結果、食薬区分を一部改正し、「非医薬」として複数の新規成分を加える方向性を固めた。また、タウリンやグルタチオンなど複数の成分に関し、「医薬」から「非医薬」への区分変更を認めないことにした。一方、審議されなかったため、区分が依然、「宙ぶらりん」の状態に留め置かれるものも複数出た。

6成分一斉審議 全て「留めおく」
 厚労省監麻課は、令和2年度では初のワーキンググループ(WG)を昨年6月16日に開催。その後、7月14日、9月25日、12月15日と立て続けに計4回開いた。年明けの開催の有無については「答えられない」(監麻課)。

 令和元年度の開催数は通算4回だった。新型コロナ下においても精力的に食薬区分の審議に努めたことになる。企業からの申請件数が大幅に増えている事情もあるようだ。平成29年度までの開催数は、多くて2回、たいてい1回にとどまっていた。

 WGが昨年、食薬区分の「専ら医」(専ら医薬品として使用される成分本質)リストから「専ら非医」(医薬品的効能効果を標ぼうしない限り専ら医薬品と判断しない成分本質)リストへの区分変更の是非を審議したのは、6月と7月に開催したWGだった。

 企業からの申請を受けて、区分変更候補とされたのは、グルタチオン▽1‐デオキノジリマイシン(DNJ)▽タウリン▽γ‐オリザノール▽S‐アデノシル‐L‐メチオニン(SAMe)▽ブクリョウ──の6成分本質。キノコの菌核であるブクリョウ(生薬)を除く5成分は、いずれも専ら医リストの化学物質等の項目に収載されている。

 専ら医から専ら非医への区分変更が一斉的に審議されるのは珍しい。ブクリョウを除く5成分には、国内サプリメント・健康食品業界が、専ら非医への区分変更を以前から求めていた成分が複数含まれる。タウリンやグルタチオンがその代表だ。

 ただ、WGの判断は、6成分すべてについて、専ら医リストに「留めおくことが妥当」。専ら非医への区分変更をことごとく認めなかった。

判断なぜ?見えぬ詳細
 なぜか。公開された議事概要によると、タウリン、グルタチオン、γ‐オリザノールは共通して「日本において医療用医薬品成分として使用されており、今回新たな知見が生じたわけではない」。DNJは、「日本においては食経験がなく、血糖降下作用が報告されており、保健衛生上の観点から医薬品として規制する必要がある」。一方、国内で医薬品として使用されているわけではないSAMeは、「海外では医療用医薬品成分として用いる国もあり、今回新たな知見が生じたわけではない」とされた。

 WGは非公開。議事概要の書きぶりも詳細とは言えない。また、区分変更を申請した企業に対しても、それ以上の理由を明かしていない。そのため区分変更を認めない理由の詳細は藪の中だが、医療用医薬品としての流通実態がポイントになった可能性は推測できる。

 しかし、医療用医薬品として利用されているとしても、専ら医から専ら非医に区分変更された成分はある。例えばコエンザイムQ10がそうだ。同成分が専ら非医リストに入ったのは2001年。すでに20年の月日が経過したものの、審議概要を見た業界関係者は、「整合性が取れていない」とWGらの判断に疑問を示す。

 SAMeやDNJなどは植物等の天然物にも含まれており、そうした天然物を原料にしたサプリメント等を販売することはできる。また、そうしたサプリメントの医薬品該当性は、「当該成分を含有することのみを理由として医薬品に該当するとは判断せず、食経験、製品の表示・広告、その製品の販売の際の演術等を踏まえ総合的に判断する」(監麻課)こととされており、γ‐オリザノール、DNJについては、これまでに機能性表示食品の機能性関与成分としての届出が実現している。
 とはいえ、当該成分の含有を消費者に訴求することは困難と理解されている。

「医のままは適切なのか」
 今回のWGと監麻課の判断は、食薬区分の岩盤規制に風穴を開けることは、決して容易くないことを改めて証明したことになる。ただ、グルタチオンのように医療用医薬品としての使命を既に終えたような成分は専ら非医に直ちに変更し、サプリメント等として生活者の健康維持増進に寄与できるようにするべき──医薬品業界に近い業界関係者からもそう指摘する声が聞こえる。

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