特商法改正案 悪質定期商法に直罰規定 (2021.3.11)


消費者庁、相談急増に対処 
 通信販売の悪質な定期購入商法に対する厳罰化などを柱とする特定商取引法改正案を消費者庁が取りまとめ、政府は3月5日に閣議決定、法案を国会へ提出した。改正案には、定期購入ではないと誤認させる表示を行った法人に1億円以下の罰金を科す直罰規定も盛り込まれた。消費者庁は今国会中の改正法案成立をめざす。

 健康食品や化粧品などのインターネット通販の定期購入を巡る消費者相談がここ数年で急増している。消費者庁の調べで2020年は、相談件数が5万6000件を突破。前年度比で約26%、15年比では約15倍にそれぞれ増加した。初回の無料や大幅な値引きをアピールしつつ、2回目以降は高額を支払う必要のある定期購入であることが容易に認識できない形で表示を行う手口などが見られ、同庁では「詐欺的な定期購入商法」だとして警戒。規制強化を検討していた。

 消費者庁は特商法改正案に、悪質な定期購入商法を抑止し消費者保護を図るため、定期購入ではないと誤認させる表示を禁じる規定を新たに設け、違反に対する直罰規定を導入した。行政処分を経ずに懲役刑や罰金刑を科すことができるようにした。定期購入であることが分かる明確な表示も義務付ける。

 また、定期購入でないと誤認させる表示によって消費者が申込みをした場合の申込み取消権を認める規定も新たに盛り込んだ他、悪質な定期購入商法で問題になることが多い契約の解約・解除の妨害に当たる行為も禁じる。さらに、そうした妨害行為を適格消費者団体の差止請求権の対象に追加する。

 意図せずに定期購入契約を結ばされ、契約を解除できないと訴える消費者の声は全国的に広がっており、社会問題にもなっている。

 しかし、そのような悪質な定期購入商法を行っているのは特定の業者だとする強い指摘もある。社名を変えながら同様の手口を繰り返しているともみられている。

 健康食品、化粧品などリピート商材の定期購入そのものは、消費者の利便性や経済性などが高く、多くの通販事業者が販売スタイルの一つに取り入れている。そのなかで、一部の悪質事業者をターゲットにした今回の法改正が、通販事業者全体に対する足かせとなっていく可能性を強く懸念する声も上がっている。

 悪質な定期購入商法を行う事業者に対して消費者庁などの行政機関は、現行法に基づき一部業務停止命令などの行政処分で対処してきた。悪質な事業者に対する規制は現行法で十分に機能するとの指摘もある。

オーナー商法 原則禁止へ
 特定商取引法の改正案では他にも、送り付け商法対策や消費者利益を擁護増進するための施策が新たに盛り込まれていた。

 送り付け商法対策では、売買契約に基づかずに送付された商品について、送付した事業者が返還請求できない規定を設けた。現行法では、消費者が14日間保管後に処分できる規定となっているが、すぐ処分できるようにする。

 消費者利益の援護増進については、消費者からのクーリングオフ通知について、電子メールなど電磁的方法でも可能にする他、事業者が交付しなければならない書面について、消費者の承諾を得ることを前提に、同様に電磁的方法で行うことを可能にする。
 今回の特商法改正は、預託法および消費者裁判手続特例法の改正も束ねる形で実施される方向だ。

 預託法の改正では、第三者へのレンタルなどをうたいながら販売した高額な商品を預けさせ、配当金を定期的に渡すなどする販売預託取引を原則として禁止する。

 例外的に認めることもあるが、その際は、「厳格な手続きの元、消費者庁が個別に確認する」としており、実質的には禁止される。販売預託取引は、「オーナー商法」とも呼ばれ、近年では、健康器具等を販売していたジャパンライフを巡る消費者の財産被害が大きな問題になった。



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