CBD製品は関係ないけど やはり気になる「大麻検討会」(2021.3.11)
大麻等の薬物対策のあり方検討会──厚生労働省の監視指導・麻薬対策課が庶務を務める形で今年1月に初会合が開かれた有識者検討会だ。「大麻」と聞いて健康食品業界が思い浮かべるのはオイル等のCBD製品。しかし、それは直接の検討事項ではない。とはいえ一切関係ないとも言い切れない。実際、2月25日に開催された第2回検討会では、本筋のおまけ的な「その他」としての扱いではあるが、CBD製品も取り上げられた。
増え続ける輸入確認申請
同検討会の委員は、薬学や医学はじめ法学などの有識者12名で構成。大手紙論説委員の名も見られ、多彩な顔触れだ。
検討会の主旨は何か。開催要項によると、主な検討事項は、①大麻規制のあり方を含めた薬物関連規制のあり方②再乱用防止対策(依存症対策)を始めとした薬物関連対策のあり方──とされており、大麻に関してのみ検討するものではない。ただ、第1回検討会が開催される直前、現行の大麻取締法では規定のない大麻の「使用」に関する罰則導入に向けた議論が行われるなどとする報道がなされ、「大麻規制強化」が検討されるとして社会的に耳目を集めた。
しかし実際は、「薬物規制を今後どうするかを専門家に諮るのが(検討会の)主旨。結論ありきでない」(監麻課)としており、大麻の使用罪云々は今後の議論の行方次第。ただ、「大麻事犯が増加傾向にあり、特に、若年層における大麻乱用の急増や、再犯率が増加している」(開催要項)といった、大麻を巡る現状に対する厚労省の問題意識が、今回の検討会の背景に横たわっていることは間違いない。
一方、大麻を巡り増加しているのは、大麻取締法で規制されない大麻草の部位(成熟した茎・種子)を原料とする、CBD(カンナビジオール)オイルなどのCBD製品に対する若年層を主体にした興味・関心も同じだろう。国内流通量も急増しているとみられる。
そのことが検討会立ち上げの背景にあった可能性も推測できる。しかし、監麻課は否定。そもそも物質としてのCBDは規制されていない。また、規制対象外の大麻草部位を使用していることが前提だが、CBD製品を規制する法制度もない以上、大麻など薬物に対する規制のあり方を議論する検討会の主旨から外れる。
ただ、CBD製品を完全に無視しているわけではない。実際、先月開催された第2回検討会で配布された監麻課作成の資料では、「その他」としてCBD製品を取り上げている。
資料の当該部分では、CBD製品は「我が国にも輸入され、食品や化粧品として流通している」事実を伝えた上で、「CBD製品の輸入にかかる現状」を紹介。CBD製品の輸入に当たっては、関東信越厚生局麻薬取締部による「大麻該当性」に関する書類確認が行われており、「非該当」と確認されて初めて国内流通が可能になるが、確認申請件数が右肩上がりで増加しているという。
2020年の申請件数を四半期毎に見ると、165件→231件→505件→1133件と期を追うごとに増加。一方、確認件数は、104件→181件→128件→220件。増え続ける申請件数に対し、確認が追いついていない様子が窺われる。
資料の当該部分ではまた、「(大麻該当性に関する)検査・確認を受けずに輸入されるCBD製品も存在する」と指摘。その上で、検査・確認を受けたか受けなかったかは触れていないが、日本に輸入されたCBD製品から、大麻草に含まれる強い幻覚成分・THC(テトラヒドロカンナビノール)が検出された2社8製品の事例を伝えている。
大麻取締法は、THC自体を規制しているわけではない。しかしTHCが検出されれば、大麻取締法で規制される大麻に該当する疑いが生じることになる。THCが含まれないはずのCBD製品から微量とはいえそれが検出された事実を検討会委員はどう捉えたのか。
今回の検討会は、報道関係者を除き実質的に非公開。本紙は2回続けて抽選から漏れたため、当日の会議の様子は議事録(3月8日現在未公開)を通じて知るしかないが、今後、CBD製品が議論の俎上に上げられたとしても不思議はないといえよう。
日本においてTHCが検出されるCBD製品は今後もう出ない、とは言い切れないためだ。
監麻課によると「近年、大麻に含まれるTHCが品種改良などで高濃度化している」という。
大麻由来CBD医薬の今後
今回の検討会に関して注目したいのは、主要な検討課題の一つとして、海外で医薬品として承認されている大麻由来CBD製剤の国内での取り扱いがあると見られる点だ。
検討会の立ち上げ背景には、「諸外国においては、大麻を使用した医薬品が上市されているとともに、WHOやCND(国連麻薬委員会)においても、大麻の医療用途への活用に向けた議論が進められている」(開催要項)こともある。
海外では合成THCや合成カンナビノイドを有効成分にした医薬品も開発されているが、大麻由来CBDの医薬品も存在する。ドラベ症候群などの抗てんかん薬として、米FDAが2018年に承認した『エピディオレックス』(開発・英GWファーマシューティカルズ社)が有名だ。
同医薬品は、CBD製品と同様にCBDを主成分とするもの。しかし、日本では現在、原則として輸入が禁じられている。大麻草の規制部位から抽出されたものであるためだ。大麻取締法で規制される大麻製品ということになる。
ただ、現在でも国内で「治験」を行うことは可能。また、第1回検討会で委員から、「大麻についてはTHCが精神作用を示すということで、規制対象となるのは妥当。ただし、CBD製剤が医療用に使われる可能性があることを考えると、わが国でCBD製剤の利用というものがスムーズに進むような体制づくりの検討も必要ではないか」(議事録要約)といった意見が上げられており、今後、大麻草に含まれる「物質」に着目した規制のあり方が検討される可能性も考えられる。
仮に、この大麻由来CBD製剤が今後、日本でも医薬品として承認されるのだとすると、CBD製品の現在のステータスに何らか影響を及ぼす可能性も考えられないか。具体的にいえば、食薬区分におよぼす影響だ。その観点からも今回の検討会での議論の行方に注目したい。
なお、同検討会は今後、今夏まで定期的に開かれる予定。最終的に取りまとめられる報告書は、今後の大麻など薬物規制の参考にされることになる。