ビルベリーエキス オムニカ、特許出願(2021.3.25)
「解重合型アントシアニン」と名付けた吸収率向上型ビルベリー由来アントシアニンの製造技術を、機能性食品素材メーカーのオムニカ(静岡県裾野市)が確立、今月までに特許出願したことが分かった。解重合とは、重合体が単量体になること。同社によると、「低分子型」とほぼ同意義という。出願中特許技術を適用することで、アントシアニンの吸収率が最大で6倍以上に高まることを実証したとしている。同社は、ビルベリーエキスの製造・販売で世界的大手。アジア市場での販売量も多い。
オムニカによると、解重合アントシアニンそのものは同社がこれまでに製造・販売してきたビルベリーエキス『ミルトアルゴス』(登録商標)に含まれる。
ミルトアルゴスは、「次世代型ビルベリーエキス」を旗印に、有効成分のアントシアニンについて、一般的なビルベリーエキスと比べて平均2倍以上の吸収性能を担保したもの。特許に基づく製法で製造している。
今回新たに特許出願した解重合型アントシアニンは、ミルトアルゴスに元々含まれている解重合型アントシアニンをより高精度化し、有効性に関する性能向上を図ったもの。既存特許では開示していなかった製法技術と、これまでに進歩・向上させてきた製法技術を組み合わせる形で特許出願した。
特許出願中の解重合型アントシアニンを含むミルトアルゴスでは、アントシアニンの吸収性能が従来の平均2倍以上から最大6倍以上に高まることが確認されているという。そのため、「よりよい条件下でアントシアニンの体内動態を確保できるようになった。学術論文を通じてこれまでに発表してきたミルトアルゴスの摂取による視機能に及ぼす機能性について、有効率の更なる上昇が期待できる」(高尾久貴社長)としている。
体内動態を研究 製造技術の背景
オムニカは、ビルベリー由来アントシアニンの機能性研究と並行し、その体内動態も研究してきた。
摂取後の体内動態は、有効性の発現と密接に関わる。これまでの研究では、ヒトが経口摂取したビルベリー由来アントシアニンは代謝を受けない配糖体の形で血液中に検出される。また、腸管上皮細胞のタイトジャンクションを経由される取り込みでは、分子量が小さなアントシアニンが吸収されやすいことが分かっているという。
アントシアニンの基原原料としては、ビルベリー以外にも複数ある。一方、基原原料の違いを除けば、どれも同じアントシアニンと捉えられがちだ。
ただ、同社では、「アシル化や二糖配糖体など、大きな分子のアントシアニンは体内動態の詳しい報告がみかけられない」(同)と指摘。アントシアニン類の種類は700以上にも上るとされるが、ビルベリー由来アントシアニンは決まった15種類の低分子アントシアニン類で構成されるのが明確であること、50年以上にわたり不特定多数の国や研究機関が横断的、継続的に有効性を研究してきた歴史があること、そして、人における体内動態も緻密検証されていることを踏まえ、「ビルベリー由来アントシアニンは、その他のアントシアニンとは立場が異なる」(同)と強調する。
裾野工場で製造 バラつき制御
現在出願している特許に基づく解重合型アントシアニンの製造は、同社が2019年に竣工した抽出物プラント(裾野工場)で行う。
製造条件を精密工業品並みに制御したり、管理したりできる最新鋭設備の導入と、その適切な運用を背景に初めて製造が実現できたという。植物など天然物由来の抽出物(エキス)は、生産ロット毎に生じるバラつきが課題となる。
同社の裾野工場は、100ロット連続して同等性が確保できる物質収支の厳密な管理などを通じて、天然抽出物に特有のバラつきの排除を目的に設計されたもの。微妙なバラつきも制御できるようになったことで、ビルベリー由来アントシアニンの吸収性能が平均2倍以上から最大6倍以上に高まる解重合型アントシアニンの実現を後押しした。
一方で、「エキスの性能を高めることと、その性能が保証されることは別の話。高めた性能を保証できなければ意味がない」と高尾社長は話す。「Consort声明2010適合の臨床試験も含む複数のヒト試験で眼疲労改善機能が評価されたビルベリー由来アントシアニンに関し、さらに高めた性能と、その性能の保証を、我われの品質保証部・性能保証チームが徹底して行う」という。
また、「解重合型アントシアニンは、吸収率が最大で6倍以上に高まるという強みはあるが、そのことよりも、バラつきが起こる天然物エキスの弱点を排除し、より積極的に食品の三次機能を利用できるものとして、消費者からの賛同を得たい」とも話している。
解重合型で抽出 溶解性にも特徴
オムニカによると、解重合型アントシアニンの抽出法は、一般的なビルベリー由来アントシアニンと異なるという。
一般的には、キノイド塩基構造、あるいは高分子凝集物としてアントシアニンを溶液中に回収するが、塩基性のフラビリウムカチオンのアントシアニン分子として溶解した上で、分子内のコピグメントを解重合させる。
そして、アントシアニンの純度を高める工程で起こる相互作用では、アントシアニンを自己会合させることで安定性を高く保ち、摂取後は、これまでの細胞・動物・ヒト試験で検証されてきた消化プロセスを、解重合型アントシアンの形で辿ることになるという。加えて、解重合型アントシアニンを含むビルベリーエキスは、水や消化液に対する溶解性が極めて高い特長もあるとしている。
【写真=上:解重合型アントシアニンを製造するオムニカ裾野工場の抽出棟、下:工場併設の分析室の様子】