ファーマフーズ 機能性素材事業、5年後の姿(2021.3.25)
東証二部から東証一部指定銘柄に変更された今期(2021年7月期)、400億円を超える連結売上高を予想するファーマフーズ(京都市左京区)。予想伸び率は前期比約160%の増加で、今期売上高370億円を窺う通販事業が業績を強くけん引している。とはいえ、同社は元々、そして今も、研究開発型の機能性食品素材メーカーだ。通販事業の成長が著しい中で、GABAを軸とする機能性素材事業を今後どう成長させようとしているのか。機能性素材事業を担当する堀江典子・常務取締役に3月16日、オンラインで取材した。
──原材料メーカーが最終製品の販売まで行う。ひと昔前であれば考えられなかったことだと思いますし、現在においても珍しいと言えます。好調の通販事業が機能性素材事業に及ぼしているメリット、あるいはデメリットについて。
「デメリットは思いつきません。メリットは、我われの素材の消費者認知度が格段に高まること。通販事業を行っているため、『私たちとしても認知度を高められるよう努めるので一緒にやりませんか』という提案ができます。お客様に喜んでいただいていますし、機能性素材事業の成長にもつながっています」
「BtoBで素材を売った後は販売会社にお任せ、といった時代ではもうないと思います。私たちからも販売方法を提案し、マーケティングを共に手掛けていくというところで、お客様との一体感も生まれる。通販事業があるからこそ、他の素材メーカーとは異なる提案ができています」
機能性表示制度 急成長の転機に
──機能性素材事業の20年7月期売上高は前期比約45%増の25億円超でした。およそ10年前の13年7月期は約10億円ですから、2.5倍に成長したことになります。成長要因を聞かせて下さい。
「2つの要因があると思います。まず、我われが得意とする研究開発が充実してきたこと。10年前と比べると、エビデンスの質と量がぐっと高まった。研究開発は一朝一夕にできることではなく、日々の積み重ね。そこをしっかり取り組んできました」
「もう1つは、そのように取り組んでいる中で、日本で機能性表示食品制度が始まったことです。エビデンスのある素材と、そうではない素材の差がクリアになり、我われの素材が適切に評価されるようになったと思います。制度の誕生は、私たちにとってもターニングポイントになりました」
──海外売上高も伸びています。
「研究開発の充実は、海外での成長にもつながりました。我われは早くから米国での販売を始めていましたが、エビデンスに関する学術論文が無ければ検討さえしてもらえない国です。現在、当社の『ファーマGABA』は米国で100社程に採用されていますが、要求に応えるために積み上げてきた研究や論文が、機能性表示食品制度に素早く対応することにもつながりました」
「海外については今、主に米国と中国で販売を進めていて、いずれの市場も成長しています。最初に参入した米国では、主にGABAを販売していますが、実績を着実に積み重ねています。流行をつくったのではなく、素材のコンセプトやエビデンスが評価され、採用されてきました。機能性食品素材として理想的な伸び方だと思います。米国は、我われの強みが存分に生かせる市場です」
「一方の中国はまだまだ成長途上ですが、GABAの他にも『ボーンペップ』、『セレプロン』が大きく伸びています。中国市場は、いち早く新しいものを取り入れたいという意向が強い。また、メイド・イン・ジャパン製品に対する評価が高い。ただ、玉石混交なところがあります。ですから我われとしては戦略的に、中国に進出している外資企業、あるいはローカルの大手企業にターゲットを絞ってワークしています。エビデンスや品質を正しく評価してくれるからです」
「食品の機能性表示制度は今後、アジア諸国に広がっていくだろうと思います。そうなった時に求められるのは、やはりエビデンスと品質です。アジアでの新たな動きにすぐ対応できるよう努めています」
──機能性素材事業ではOEMも手掛けています。OEMの直近売上高は前期比約2倍の5.5億円。急速に成長しているようですね。
「OEMと言うよりもODM。製造は外部ですが、独自素材を多く保有している強みを生かし、他社の素材も活用しながら、コンセプトを含めた商品設計を丸ごと提案しています。最近は、特長のある製品を求められる傾向が顕著ですが、それに十分応えられる経験とアイディアを私たちは持っています。メイド・イン・ジャパン製品に対する信頼性が高いこともあり、海外顧客へのODMも増えてきました」
国内外で拡販〝柱〟素材増やす
──主力素材のファーマGABAについて伺います。機能性表示食品の機能性関与成分としてGABAの届出総数は380件を超えていて、機能性関与成分全体で件数トップです。そのうち9割超がファーマGABAを届け出たものと見られます。さすがに数が増え過ぎたと感じませんか?
「むしろ、まだまだ増えると考えています。ファーマGABAは新たに認知機能に関する表示が可能になりました。その部分でさらに伸ばしていきたい。サプリメントからドリンクなど一般食品まで広げることで、市場はさらに大きく広がると考えています。米国の認知機能市場の成長率は10%を超えると報告されていますから、国内外で一層の成長を図ることができるはずです」
──ファーマGABAの届出件数がここまで増えた理由をどう考えますか?
「我われのGABAは多機能性素材のように見えているかも知れませんが、筋が通っています。高めの血圧を下げるのは副交感神経を優位にさせるためですが、それはリラックス機能にもつながる。また、リラックスさせることは睡眠の質などの向上につながり、一連の流れの中に認知機能もある。そのように全てのヘルスクレームが1つにつながり、1つのストーリーを完成させられるところが、我われのGABAの強みです」
「また、直近1年の話で言えば、新型コロナ下で高まった新たな消費者ニーズに則した機能性を表示できることも、届出件数が増え続けている要因だと考えています。生活リズムが崩れたり、ストレスが高まったりした方が少なくありません。そうした社会的背景もあって、国内外でニーズが高まっているのだと思います」
200億円めざす一般食品展開が鍵
──ファーマGABA以外の素材で機能性表示食品制度に対応できるようにする考えは?
「準備を進めているところです。具体的には、ヒアルロン酸産生促進機能のある『HAS‐Ⅱ(ハスツー)』等で、ひざ関節に対応する機能性表示を行えるようにしたい。関節市場はとても大きいですし、既存の関節素材との違いを明確に打ち出せる強みがあることから選定しました。他に、免疫の機能性表示にも対応できるよう準備を進めています。まだ新しい素材なのですが、自然免疫に関するエビデンスをコツコツと積み重ねてきた植物由来素材があります」
──ハスツーと言えば、先日、食品原材料の製造・販売で世界大手のケリー社と業務提携すると発表しましたね。ハスツーについて、ケリー社と連携してグローバル展開を進めるという内容です。
「提携しただけで世界に広がるなどとは決して考えていませんが、グローバルにネットワークを持つ巨大企業と一緒に取り組むことで、一気に海外市場へ広げるチャンスを得たと言えます。相手は世界的な大手企業ですが、機能性食品素材の販売に関しては我われも決して負けていません。お互いに対等な立場でコラボレーションし、お互いの強みを生かしていきたいですね」
「5年後までに、機能性素材事業の売上高を200億円くらいまでに引き上げたいと考えています。そのための施策の一つがケリー社との提携であり、他にも良いパートナーを探しながら、我われの機能性素材を世界に広げていきたい。また、200億円を実現するために、海外市場におけるGABAの用途を、日本のように一般食品まで広げていきたいと考えています」
「一般食品にはとても大きな市場があります、まずは米国で、自己認証ではないGRAS認証を取得し、一般食品にも配合できるようにする予定です。特に、米国は、日本とは異なり、一般食品に機能性素材を加える文化がほとんどないのですが、GABAを通じ、美味しさと機能性は共存できることを伝えていきます。今後5年以内に実現したいと考えています」──国内についてはどう取り組みますか?
「機能性素材事業の将来的な売上高比率は国内よりも海外の方が大きくなります。ですが、足もとの国内を伸ばせなければ海外で伸ばせるはずがない。今はGABAだけで走っているところがありますから、GABAに次ぐ新たな柱をもう3素材くらい育て、国内での販売実績と共に、海外に打って出たいと考えています。新たな柱となりそうなのは、ボーンペップ、セレプロン、そしてハスツー。機能性表示食品制度にも対応しながら、しっかりと育てていきます」
【写真=ファーマフーズ 堀江典子 常務取締役】