ラビリンチュラとナンノクロロプシス 微細藻類、沖縄からお届け (2021.3.25)

金秀バイオ A ①② 金秀合体②

 健康食品および健康食品原材料製造・販売の金秀バイオ(沖縄県糸満市)が微細藻類を自社工場内で培養できる技術を確立した。培養した微細藻類の粉末化も自社工場内で手掛け、まずは自社製品の販売に乗り出し、体制が整い次第、原材料販売も展開していく計画だ。主力のモズク由来フコイダンに次ぐ柱を育てようと6年の歳月を費やした開発テーマを事業化する。培養技術の確立にあたっては官学から協力を得た。

藻体丸ごとパウダー化
 同社では、沖縄県糸満市を拠点にする健康食品および健康食品原材料の生産工場内で、微細藻類のナンノクロロプシスとラビリンチュラ(オーランチオキトリウム)を培養する。今後、培養量の最大化を検討しながら、各微細藻類を自社工場内でパウダー化した健康食品原材料の製造・販売体制を構築する。「沖縄発の新規健康食品素材」として国内外に供給していきたい考えだ。

 両微細藻類ともオメガ3脂肪酸(DHA/EPA)を含む。海産微生物のラビリンチュラにはDHAが、海水域に生息する植物プランクトンのナンノクロロプシスにはEPAが含まれる。

 ただ、魚油に比べると、ベジタリアンやビーガンなどに向けた商品開発につなげられる強みがある一方で、オメガ3の供給源としては非効率的だ。そのため同社は、各微細藻類に含まれる成分全体に着目した。

 特に、DHAが多く含まれるラビリンチュラについては、培養液から藻体の全てをパウダー化する。その製法について特許取得に向けた準備も進めている。様々な栄養・機能性成分を一度に摂取できるマルチ機能性食品素材としてサプリメント・健康食品市場に打って出る。

 一方のナンノクロロプシスのパウダーについても、ビタミン▽ミネラル▽アミノ酸▽不飽和脂肪酸──など「約60種の成分を豊富に含むホールフーズ」として提案していく方針だ。

 今後の販売展開にあたっては、ラビリンチュラのパウダーを先行させる。タンク培養を行うため、現時点で一定量の生産が可能。まずは自社製品の販売を進め、国内外の市場ニーズを掘り起こし、早期に本格販売を開始したい考え。

 一方、光合成で成長するナンノクロロプシスについては、衛生管理に優れるものの、培養量が限られる屋内培養法を採用している。そのため、現時点の生産量は限定的で、原材料供給できる段階には至っていない。ただ、培養および粉末化の技術は確立済み。今後、少量生産を行いながらマーケティングを進める。市場ニーズを探りながら、屋内培養設備を増設するタイミングを見極めたい考えだ。

 同社が微細藻類の培養を手掛けるのは初めて。ラビリンチュラは、沖縄県内でラビリンチュラを採取・分類し、数千株のライブラリーを保有する宮崎大学農学部の林雅弘教授(マリンバイオサイエンス研究室)の協力を得て、培養技術を確立。林教授と共同研究を行い、健康食品に適したラビリンチュラ株の選定、培養の最適化などを進めた。最終的に選定された株は、沖縄の石垣島で採取されたものだとしている。

 一方、ナンノクロロプシスは、同微細藻類を与えた稚魚の生残率向上を報告していた沖縄県栽培漁業センターの協力の下、培養に関する基礎技術を習得。その上で、健康食品に応用するのに衛生管理の面で最適な屋内培養を行うため、東京工業大学と共同で屋内培養条件などの検討を進め、植物工場等で採用されているLED光源を活用する培養技術を確立した。

【写真=左:金秀バイオは3月9日、沖縄産業支援センター内で記者会見を開催。今回培養技術を確立した微細藻類および健康食品原材料について「沖縄県産素材と組み合わせることで新たな価値を提供できる」と述べた。写真左から金秀バイオの宮城幹夫社長、宮崎大学農学部の林雅弘教授、沖縄県農林水産部栽培漁業センターの玉城英信所長(写真提供=金秀バイオ)】

【写真=右上:自社工場内で培養した微細藻類を粉末化し、健康食品用原材料として供給する】

【写真=右下:金秀バイオが3月9日に新発売した、ラビリンチュラおよびナンノクロロプシスのパウダーと、モズク由来フコイダンを配合したサプリメント『藻の極み』。自社商品として主に通販などで展開する】






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