健康産業界の専門紙・健康産業流通新聞

　日本コカ・コーラ（東京都渋谷区）が食物繊維を多く含むオーツ麦を原料にしたプラントベースミルク（植物性ミルク）を3月29日に新発売した。オーツ麦やアーモンドを原料にした植物性ミルクは、牛乳、豆乳に次ぐ「第3のミルク」とも呼ばれ、健康志向や環境保護意識の高まり、ベジタリアンやビーガンといった食生活スタイルの多様化などを受け、欧米で需要が伸びている。日本は市場形成が始まったばかりだが、アーモンドミルクの市場は堅調に拡大。オーツミルクも需要拡大の余地が大きいと判断したとみられる。

　日本コカは3月29日、国内製造のオーツ麦濃縮液などを原材料にしたオーツ麦飲料『ＧＯ：ＧＯＯＤ おいしいオーツ麦ミルク』を関東中部エリア限定で発売した。風味違いの3商品を用意し、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店舗で展開する。希望小売価格は1本1㍑で415円（税別）と、牛乳の2倍ほど。発売と同時にウェブ動画を公開し、販促活動をはじめた。今後、販路を全国に広げることが予想される。

　日本コカが牛乳代替飲料の植物性ミルクを商品化するのは今回が初めて。市場形成が先行している欧米に比べれば日本の市場は発展途上であり、まだまだ需要を掘り起こせる余地がある。

　牛乳の国内市場規模は横ばい傾向と見られる一方で、植物性ミルク市場は、豆乳を筆頭に需要が伸びている。日本豆乳協会によると、国内の豆乳類全体の生産量は2020年に過去最高の約43万㌔㍑を記録。前年と比べて約5％増加した。特に、大豆由来の栄養素が多く含まれる無調整豆乳の生産量は、この10年で約6倍に伸びたという。

　「第3のミルク」と呼ばれるアーモンドミルクの需要も伸びている。アーモンドミルク研究会によると、2020年のアーモンドミルク市場は販売金額が100億円を突破。販売量は2.2万㌔㍑と2万㌔㍑を超えた。前年比は販売金額が19％増、販売量では34％増と大きな伸びを見せている。

　一方、国内のアーモンドミルク市場のシェアは、グリコの『アーモンド効果』が全体の9割以上を占めているとされ、1社独占に近い状態だ。他方で、アーモンドミルクと同じく「第3のミルク」と呼ばれ、植物性ミルクの中でも特に欧州でポピュラーなオーツミルクは、ブルーオーシャン市場。日本コカが同社初の植物性ミルク商品としてオーツ麦に白刃の矢を立てた背景には、そうした市場性もあったに違いない。

　オーツミルクを巡り日本では、大手では昨年4月にダノンジャパン（東京都目黒区）が同社初の植物性ミルク商品として『ＡＬＰＲＯ（アルプロ）』を発売したばかり。「健康や美容に対する意識が高く、運動も含めた対策やケアに積極的な消費者層」を取り込む狙いで、豆乳の他にオーツミルクをラインナップに加えた。当初は首都圏限定での販売だったが、同10月以降は全国展開している。

　また、豆乳大手のマルサンアイ（愛知県岡崎市）も今年1月、北欧産のオーツ麦を原料にしたオーツミルクを新発売することを発表。先月から販売を開始した。

　そのようにオーツミルクの市場投入が続くなかで、大手の日本コカが植物性ミルク市場に初参入した格好だ。日本でも、オーツミルク、オーツ麦の消費者認知度、需要が加速度的に高まっていく可能性があり、その影響が健康食品市場に波及していくこともあり得る。

　実際、オーツミルクやオーツ麦の国内需要が高まることを見越し、先んじて取り組みを進めている健康食品業界関係企業もある。受託製造国内最大手のアピ（岐阜県岐阜市）だ。

　同社は今年、植物性原料を活用したプラントベースフード市場に、原材料メーカーの立場で新規参入（第1032号既報）。第1弾製品として、オーツ麦のパウダーの他、飲料に展開できる糖化液といった原材料の製造・販売を開始した。

　販売は、用途や数量などに応じて個別に対応する。パウダー、糖化液ともにサンプルワークも進めており、同社では現在の引き合い状況について「日々、増えている状況です。具体的なお話も複数いただいています」と話す。製造には、自社工場に新規導入した加水分解装置による独自技術を活用し、最終製品への加工適正の高さを強みとして打ち出している。

　オーツ麦は、アーモンドと比べて健康食品との親和性が高い。機能性食品成分としてお馴染みの食物繊維の一種、β‐グルカンを多く含むためだ。欧米では、大麦とともにオーツ麦について、冠状動脈心疾患リスク低減や食後血糖値の上昇抑制などといった疾病リスク低減表示や機能性表示を認めている。

　このため同社では、オーツ麦由来β‐グルカン機能性に関するシステマティックレビューを実施し、機能性表示食品向けの原材料としても提案していく計画を立てている。