進む「いわゆる」離れ(2021.4.22)
機能性表示食品の年間届出公開件数が1000件を超えたことで、業界の「いわゆる健康食品離れ」がより鮮明になってきたといえそうだ。
販売大手から中小まで、新商品に機能性表示食品を選択するケースが増加。また、既存商品を機能性表示食品にシフトする動きもより深まってきたことで、制度施行以来初の年間1000件の大台に乗った形だ。この流れは今後も止まりそうにない。
機能性関与成分の研究レビューなど届出に必要な資料を付加価値として備える、いわゆる「機能性表示食品対応素材」に対するニーズは高まり続けているとみられる。届出を見越したヒト試験に研究・開発予算を振り向ける原材料事業者の姿が目立つ。最終商品会社も、機能性表示食品制度に対応できる素材の探索に余念がない様子だ。
新型コロナ下の20年度はサプリメント・健康食品に対する需要が高まった。ニーズを取り込むには、機能性表示食品でないと対応が難しかったといえる。そのことが届出件数を増大させると同時に、いわゆる健康食品離れを加速させた側面もありそうだ。
特に、いわゆる健康食品では広告宣伝が極めて難しくなっているダイエットの分野だ。いわゆる「コロナ太り」の増加が指摘される中で、20年度の届出のうちヘルスクレームに「脂肪」の文言を含む届出は318件(4月20日時点)と、届出全体のおよそ3割超を占める。
もともと届出件数の多いヘルスクレームだが、19年度は232件、18年度は174件、17年度は108件。20年度は例年より顕著に増加した。
広告宣伝が困難 自然な流れ
また、新型コロナ禍のストレスで支障をきたす人が増えたといるといわれる「睡眠」は66件。現時点では前年度から数件増えた程度にとどまるものの、18年度比では50%以上増加した。
広告宣伝で消費者に機能性を直接訴求できる機能性表示食品に対し、機能性を暗示するしかできないいわゆる健康食品。近年では暗示さえ難しくなっている。いわゆる健康食品離れが進むのは自然な成り行きだったと言えるが、ここにきてサプリメントでそれが加速してきた可能性がある。
2020年度の届出公開総数1028件(4月20日時点)のうち、過半数の563件を占めるのがサプリメント形状だ。その他加工食品は426件、生鮮食品は39件。
制度施行以来の届出全体に占めるサプリメント形状の割合を見ても、過半数の2030件超に達しており、その他加工食品をおよそ200件上回っている。
制度施行初年度の15年度から19年度までの届出件数の累計を見ると、サプリメント形状とその他加工食品の間に大差はない。20年度に差が広がった格好で、サプリメント形状の届出が例年よりも増加したことになる。
一方で、それに反比例するかのように広告宣伝が影を潜めたサプリメントもみられる。
それが特に顕著と言えそうなのが、ノコギリヤシ果実エキスなどを配合した排尿サポート関連だ。以前に比べて広告出稿量が減少した背景には複合的要因があるとみられる。
ただ、届出がなかなか通らず、機能性表示食品として販売展開できないことが特に尾を引いているようだ。
いわゆる健康食品から離れたくても離れられない商品は少なくない。機能性に関して一定の科学的根拠のないものは別にして、いわゆる健康食品市場に取り残されたまままの商品を機能性表示食品のステージに引き上げる施策と取り組みが求められる。