勃興するか〝睡眠〟市場 コロナ禍で生まれた新需要(2021.6.24)
2021年度「G」シリーズの機能性表示食品の届出件数は6月21日時点で合計92件。その1割強に相当する12件が「睡眠(眠り)」領域のヘルスクレームを行う届出だ。一時的な「ストレス」を軽減させる機能も抱き合わせたダブルヘルスクレームを行う届出も目立つ。新型コロナウイルス感染拡大が引き起こした「不安」と「混乱」。それによって生じた心や精神の「揺れ」。その結果高まった新たな生活者ニーズを取り込もうとしている様子がうかがわれる。
睡眠領域の機能性表示食品の届出件数の推移を振り返る。
消費者庁が運用する届出データベースで「睡眠」をキーワードに検索すると、制度施行初年度の15年度は8件。以降、16年度「22件」▽17年度「14件」▽18年度「42件」▽19年度「63件」▽20年度「71件」──と17年度を除いて右肩上がりで増えている。
19年度と、新型コロナ禍によって社会と人々が大きく揺れた20年度の差は8件程度にとどまるものの、63件からさらに増加したことに注目すべきだろう。通常、届出件数の増加に伴い事業者の届出ニーズは停滞してくるが、逆に高まったといえる。
そして21年度は6月12日時点で12件。前年同時期における睡眠領域の機能性表示食品の届出公開件数は3件にとどまることから、あくまでも今のところはだが、前年度の届出件数を上回る趨勢を見せている。少なくとも、「睡眠」を巡る事業者の届出ニーズは一向に衰えていないと言えそうだ。
新型コロナ禍で睡眠の不調を感じる人が増えたといわれる。健康情報を発信する「ウーマンウェルネス研究会」が首都圏の20~59歳男女約880名を対象に昨年7月に行ったコロナ禍の睡眠に関する意識調査(インターネット調査)によると、63.2%の人が睡眠の質の低下を感じていることが分かった。
もっとも、「以前と変わらず悪い」と答えた人が40.9%と、新型コロナ禍で睡眠の質が低下したとは言い切れない面もある。
ただ、「とても悪くなった」が4.4%、「やや悪くなった」が17.9%とおよそ5人に1人が睡眠の質の低下を感染拡大以降に感じており、具体的な悩みとしては、「眠りが浅い」が49.2%で最多。次いで「夜中に何度も起きる」が43.3%。
また、睡眠不調の原因については、過半数の50.3%が「不安やストレスで考えごとが続く」と回答した。
このような調査結果を受けてか、「睡眠」と「ストレス」の双方に対するダブルヘルスクレームを行う機能性表示食品の届出も目立つ。20年度は28件、21年度については6月21日時点で7件が該当する。21年度は「睡眠」の届出件数は現時点で12件のため、過半数がダブルヘルスクレームを届け出ていることになる。
差別化が必要に 新成分にも期待
こうした新型コロナ禍で高まった新たな生活者ニーズに応える機能性表示食品の届出をけん引する機能性関与成分は「GABA(γ‐アミノ酪酸)」と「L‐テアニン」の2大成分だ。睡眠領域の機能性表示食品の届出総数は現時点で230件余もあるが、両成分がそれぞれ60件以上を占有している。
一方、ここにきて存在感が高まっているのが「ラフマ由来ヒペロシドおよび同由来イソクエルシトリン」である。届出が急速に増えており、6月21日時点で計49件。過半数が現時点で販売されていて、今月、キューサイとDHCが同成分を機能性関与成分にしたサプリメントを新発売した。
他方で、届出件数が増え続けることにも弊害がなくはない。市場競争に伴い、差別化が求められることになるからだ。睡眠の質を高める働きを訴求するだけでは市場に埋没してしまう可能性がある。
そのため、一時的なストレス軽減機能とのダブルヘルスクレームはもとより、睡眠およびストレスに加えて疲労感に対する機能性を訴求するなどといった、商品開発や届出上の工夫が今後はより必要になりそうだ。当然、新たな機能性関与成分の登場も求められるだろう。